7月後半の落語



7/18(土)
黒門亭 15:00〜16:55
開口一番 林家しん歩 『初天神
むかし家今松 『大山詣り
橘家圓十郎 『禁酒番屋
仲入り
柳家小団治 『ねずみ』


7/19(日)
志らく一門会
18:30〜20:50@上野広小路亭
らく八 『青菜』
らく里 『小言幸兵衛』
らく次 『百川』
仲入り
志ら乃 『壷算』
志らく 『笠碁』


7/21(火)
志の輔らくご21世紀は21日
19:00〜21:00@新宿明治安田生命ホール
志の春 『牛ほめ』
志の輔 『生まれ変わり』
松元ヒロ 本日のニュース
志の輔 『唐茄子屋政談』


7/27(月)
らくだ亭 白夜の競演 白鳥・白酒二人会
19:00〜21:00@内幸町ホール
開口一番 三遊亭玉々丈 『金明竹 名古屋弁Ver.』
三遊亭白鳥 『山奥寿司 好きやねん三郎』
桃月庵白酒 『青菜』
仲入り
桃月庵白酒 『替り目』
三遊亭白鳥 『黄金餅


7/28(火)
らくごカフェに火曜会
19:30〜21:20@らくごカフェ
鈴々舎わか馬 『黄金の大黒』
春風亭一之輔 『化け物つかい』
仲入り
春風亭一之輔 『蛇含草』
鈴々舎わか馬 『たがや』


7/30(木)
30日WA百栄落語会
19:00〜21:00@studio FOUR
『引越しの夢』
『愛を喩えて』
『加賀の千代』
仲入り
『校区外騎馬戦』
『尼寺の怪』


◆面白かった!落語
志らく師匠の『笠碁』と一之輔さんの『蛇含草』。どちらも、この落語でこんなに笑ったのは初めて!という面白さでした。


立川志らく 『笠碁』(7/19 志らく一門会)
志らく師の『笠碁』を聞くのは、一昨年11月のピン以来。あの時も面白い!と思ったけど、今回はもーっと面白かった。実は、この日志らく師匠は『抜け雀』をやるつもりで高座にあがったそうですが、マクラが長くなったので突然『笠碁』をやることにしたのだとか。だからこの時の『笠碁』は全篇ほとんどアドリブだったそう。勢いがあって、それでいて二人の爺さんの会話はごく自然、ちょっとした言い方や表情のせいなのでしょうか、「あそこに置いとくと煙草入れがヘボになっちまう」なんて聞きなれたフレーズに笑っている自分がおりました。


また、面白いという以上に、こと“碁”となると子供のようになってしまう二人の爺さんが実に可愛らしくほのぼのと描かれていて、そこが素敵。


“待った”をめぐって、二人の言い合いがエスカレートしていくところ。
「あんたなんかヘボ男(へぼお)だっ!」「あんたはザル男(ざるお)だ!」「ザル男とヘボ男だったら、ヘボ男のほうが情けないよーだ!」って、まるで小学生だよw


ケンカ別れした二人が、雨の日、それぞれの自宅で無聊を託つ場面。
「よく降るねぇ〜」と空を見上げるその顔が、実にうらめしそうで笑っちゃう(あとで馬生師匠の『笠碁』を聞いたのですが、この“降るね”ってセリフはホントに馬生師匠とニュアンスが似ていて、あー志らくさんはホントに馬生が好きなんだなぁと思った)。
“待った”をかけた爺さんは「“待ったなし”と言った男が“待ってください”と言ったら、なんてコイツは可愛いんだろう!と抱きしめてやりたい、人間的!と思うのがフツウだよ」とぼやく。こういうセリフは志らくさんっぽいなぁ。自分勝手でカワイイ。
奥さんや番頭に碁会所に行けば?とすすめられたふたりの爺さん。ヘボ同士だから碁の相手ができるのはお互いしかいない…と「アイツの相手は、オレだけ」とニヤリと笑う。その“ニヤリ”のカオがなんともいえない。


志らく師の『笠碁』でいちばん好きなのは、「どっちがヘボか」「一番、決めようじゃないか!」って仲直りするところ。二人は思わずしっかりとハグするのだ。しばしハグハグして、ふと我に返ると…「おまえたち、なに涙ぐんで拍手してんだよ?!」、店の者たちがふたりを囲んで泣いてるんだった(笑)。
初めて見た時も、ここで大笑いしてしまったが、この日もたまらずに笑っちゃいました。そして、笑いながら、なんとも温かい気持ちになるのです。


志らく師の『笠碁』は、『笠碁』という落語の魅力を改めて気づかせてくれます。そして、この落語では、登場人物がちゃんと年寄りらしくみえるとか、そんなことよりも(…あ、志らく師匠の爺さんたちが、爺さんらしく見えないってことではないですよ、念のため)、好きなコトとなると子供みたいにムキになっちゃう爺さんたちをどれだけかわいいと思わせられるかっていうのが大事なんだなぁと思いました。


春風亭一之輔 『蛇含草』(7/28 らくごカフェに火曜会)
『蛇含草』は25日の「真一文字の会」でネタおろしだったのだそうで、これを聞いた落友たちが絶賛していた。聞き逃したことがとても悔やまれ、またやってくれないかなぁ…と願っていたのですが、こんなにすぐに聞けるとは!噂にたがわず、とても面白かった〜!


八っつぁんがお餅を曲芸みたいに食べるところがありますね?あそこがとてつもなく面白いのです!もーわたしは倒れそうに笑ってしまいました。
お餅を伸ばすところ、それを口にくわえるところ、振り回したお餅を“ぱくっ”と口でキャッチするところ、その仕草と表情がすごーく可笑しいのだ。あの面白さは、わたしの拙い文章ではとても説明することはできないです、すいません、是非是非見てください。
“鯉の滝登り”はもちろん、“アメリカンクラッカー”“愛宕山のかわらけ投げ”“ボリショイサーカス・空中ブランコ(「この間、ホントに観にいったんだ」って言いながらやってたw)”とか色々あるネタが全て可笑しい!“アメリカンクラッカー”の二個のお餅を口にくわえる様子、上下でカチカチぶつけるところ、見事です!
“餅に食われる”という芸もあって、それは、お餅をふくらませてその中に頭を入れちゃうという芸です(風船とかしゃぼん玉の中に体を入れちゃう曲芸がありますよね、あれをお餅でやってると思ってください)。餅の中から聞こえてくる声が、ちゃんとぼわんぼわんしてるところが芸が細かい!八っつぁんは、その餅の中で餅を食うのです、「ご隠居さん、見て見て!餅の中で餅を食ってるんですよ!食ってるオレは誰だろう?」って『粗忽長屋』か!(笑)。


ご隠居さんのキャラがまたいい。『蛇含草』では、暑さに耐えかねた八っつぁんが手拭を適当に縫いあわせたものを着てご隠居さんちにやってきます。八っつぁんはこれを“甚平”と称しているんだけど、ご隠居は八っつぁんが「この甚平」「甚平だから懐がない」だの言うたびに「それは甚平じゃない!」って間髪入れずに言うのであった、その“言い方”と、まさに“間髪入れず”というタイミングがなんともいえずに可笑しい。


サゲで、一之輔さんは「“餅”が甚平を着ておりました」というセリフを、“八っつぁん”と言ってしまった。「八っつぁんが甚平を…じゃないや!」だって(笑)。残念!でも、とーっても面白かったです。


◆惜しい!落語
噛むとか言い損なうとかっていうのは仕方のないことです(にんげんだもの)。でも、さすがにカミまくられると、噺にのれなくなってしまうんですよね。これも仕方のないことではあります。で、今回は、一之輔さんの『蛇含草』のサゲの件を書いてて思い出した、“オオカミたちの「惜しい!」落語”をあげてみますw 


鈴々舎わか馬 『たがや』(7/28 らくごカフェに火曜会)
わか馬さんの落語はいつも滑らかで聞いてて気持ちがいいのに、この日は珍しくオオカミでした。一緒に聞いていた落友は「『たがや』の供侍の錆びついた刀みたいにガタガタ」だって(笑)。上手なわか馬さんでも、こんな日もあるんだね。ちなみにわたしは5月にもわか馬さんの『たがや』を聴きましたが、この時はわか馬さん本来の口舌の良さが活きた素敵な『たがや』でした。


桃月庵白酒 『青菜』(7/27 らくだ亭 白夜の競演 白鳥・白酒二人会)
白酒師は、この会の前日の「白酒・甚語楼の会」でも『青菜』をやったそうです。それを聞いた落友が「面白かった!」と言っていたので、楽しみでした。
期待の『青菜』、なかなか面白かったのですが、聴きながら「もしかしたら昨日のほうがもっと面白かったのかもしれないな」と思った。というのは、白酒師は、“噛む”というのとは違うのだけど、時々言葉がはっきり聞こえないことがあって、この時も所々ちょっと言葉が聴き取りづらくて「?」というところが何箇所かあったからです。
八っつぁんのおかみさんが畳に三つ指をつく様子を「前まわり受け身」って言うのですが(前日に聞いた落友から教えてもらった)、わたしは“受け身”がよく聞き取れなかった。
また、客の笑いで白酒師のセリフが聞き取れなかったというところもあった。八っつぁんのセリフに、奥様の「鞍馬から牛若丸が出でまして、その名を九郎判官」を聞き間違えて「蔵前から漆とワカメまみれのハルク・ホーガンが来た?」っていうのがあったんですが、“ワカメ”のあたりで笑いがどーっと大きくなって“ハルク・ホーガン”が聞こえませんでした。これは白酒さん一流のおかしな聞き間違いフレーズに違いないとは分かったので、“ハルク・ホーガン”が聞こえなかったのは残念であった。
ワカメのあたりで笑い出したお客さんは、前日も聞いていた人達だったのかなぁ。
落語家自身のコンディションとか、その日の客層とか、客席との呼吸とか、落語の出来を左右する要因はホントにいろいろですね。また、こういうことがあるから「今日はどうなるかな?」っていう楽しみもあります。


春風亭百栄 『愛を喩えて』&『校区外騎馬戦』(7/30 30日WA百栄落語会)
百栄師匠はもともとオオカミになりがちな人です。この日は全体を通してカミカミでした(笑)。次はカマないで聞かせてねーと思ったのは、新作『愛を喩えて』と『校区外騎馬戦』。
『愛を喩えて』は最近せめ達磨でネタおろししたばかりの噺。恋人同士の“わたし(僕)のほうが、あなた(君)よりもっとあなた(君)を愛してる!”って痴話げんかがエスカレートしていくサマを嗤った噺で、自分の愛の強さを競走馬だの力士だの料理だの、いろんなものに喩えた会話が可笑しい。「あなたの愛は何歳馬なの?」「わたしの愛は横綱在位18場所よ!」とか、百栄師匠らしいフレーズに充ちた、なかなか面白い新作です。
『校区外騎馬戦』はもともとコントとして作ったネタだそう。一度も実戦をしたことがなくて、部室に集まっちゃお菓子くって妄想してる「騎馬戦研究会」の男子高校生4名。ついに体育祭で騎馬戦デビューするが、敵の来襲を避けて、騎馬のカタチのまんま校門を出て外に逃れて…というお話。高座でかけるのは5〜6年ぶりだそうで、たどたどしくて聞いててハラハラしたぞ−い(笑)。