8月の落語



まずは先月行った会をアップ、続いて印象的な落語および会について書きますよ。


8/3(火)
志らくのピン
途中入場〜21:00?@内幸町ホール
『ろくろ首』
『反対俥』
仲入り
『一文惜しみ』


8/7(土)
こしらの集い
19:00〜21:08@お江戸日本橋亭
爆笑マクラ(調子にのってません〜粋事件〜「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」に関する考察〜電子書籍で全米デビュー〜)〜『短命』
仲入り
『三軒長屋』


8/12(木)
月例三三独演@国立演芸場
19:00〜21:16@国立演芸場
柳亭こみち『締め込み』
柳家三三大山詣り
仲入り
三三『看板のピン』
三三『井戸の茶碗


8/16(月)
第一回赤坂落語レッドシアター「2010夏・怪談噺」8/16夜の部
19:00〜21:38@赤坂レッドシアター
柳亭市也『高砂や』
林家彦いち『熱血怪談部』
桃月庵白酒『化物使い』
三遊亭遊雀『狐の毛』(新作 釜戸権助 作)
仲入り
柳家三三『牡丹灯籠 お露新三郎』


8/17(火)
下北のすけえん8/17
19:30〜22:00@下北沢シアター711
春風亭朝呂久『権助魚』
春風亭一之輔茶の湯
柳亭左龍『風呂敷』
仲入り
一之輔『唐茄子屋政談』


8/21(土)
文左衛門倉庫vol.6
14:00〜16:15@蔵前・ことぶ季亭
小太郎『権助提灯』
文左衛門『もう半分』
会場アンケート紹介
仲入り
文左衛門『天災』


8/22(日)
志の輔らくご in 下北沢『恒例 牡丹灯籠 2010』
14:30〜17:25@本多劇場


落語協会特撰会 落語協会大喜利王選手権
18:00〜20:30@池袋演芸場
出演者
文左衛門師匠仕切りの大喜利大会。司会は文左衛門師匠。19人の芸人が3ブロックに分かれ、各ブロックを勝ち抜いた2名が決勝に進出。各ブロックの面子は以下の通り。
Aブロック:菊六、喬之進、ロケット団三浦、左龍、白酒、萬窓
Bブロック:木久蔵、朝太、丈二、こみち、小太郎、ロケット団倉本、玉の輔
Cブロック:一之輔、わか馬、正太郎、ほたる、三三、Mr.X(某立〇〇真打ショーシw)


8/23(月)
Wホワイト落語会
19:30〜21:30@北沢タウンホール
挨拶 白鳥&白酒
白鳥『新ランゴランゴ』
白酒『メルヘンもう半分』
仲入り
白酒『宗論』
白鳥『地下鉄親子』


8/24(火)
浜松町かもめ亭 怪談噺の会
19:00〜20:50@浜松町メディアプラスホール
立川こはる『桃太郎』
柳家三三『年枝の怪談』
仲入り
立川志らく『妲妃のお百』


8/31(火)
池袋余一会 柳家喬太郎の会
15:00〜16:56@池袋演芸場
柳家小んぶ『金明竹
柳家喬太郎『紙入れ』〜『諜報員メアリー』
仲入り
春風亭正太郎『宗論』
柳家喬太郎『吉田御殿』


らくごカフェに火曜会
19:30〜21:29@らくごカフェ
鈴々舎わか馬『女給の文』
春風亭一之輔酢豆腐
仲入り
春風亭一之輔『麻のれん』
鈴々舎わか馬『妾馬』




8月、印象に残った落語はコレ↓
立川志らく『反対俥』(8/3志らくのピン)
志らく師匠「現代人に馴染みのない俥屋が、ただどんどん速くなってくだけじゃおもしろくない」と思って手を加えたそうなんですが、二番目の俥屋(韋駄天であわてん坊の俥屋ね)がハンガリー舞曲を唄いながら(!)、そのリズムとメロディに合わせて疾走するwww これがもう傑作!笑った、笑った!
たったひとつ、惜しかったのはサゲ。俥屋がぐるぐる廻って溶けて“ホットケーキ”になっちゃった…ってサゲなんだけど、廻って溶けて出来上がるのは「ホットケーキ」じゃなくて「バター」ですねw
この『反対俥』を含め、志らく師の代表的なクレージー落語(『疝気の虫』『火焔太鼓』等々)ばっかりやる会が今月15日に銀座・博品館劇場で開催されますよ。聞き逃した方は是非!


立川こしら『三軒長屋』(8/7こしらの集い)
涙流して笑い、同時に衝撃を受けた。おおげさでなく、後頭部を棍棒で殴られたかのようなショックであった。
三軒長屋ならココ!という聞かせどころ、見せ場は一切無い。二階の喧嘩の胸のすく言いたてなんかもちろんない。なにしろ与太郎の名前が「吉田」。
でも、堪らなく可笑しい。笑いながら「これで笑っていいのか?」と不安になる。あんなにブッ飛んだ、ヘンテコな三軒長屋は聴いたことない。
あの凄さ、可笑しさ、ショックをどう説明していいか分かりません。ただ間違いなく言えるのは、もしアレを談春師が聞いたらすっげー怒るだろう、ということw
パシリの吉田は呼ばれると「なんスか?」と返事し、“妾”という言葉の意味を知らず、「嘘っこ奥さん」と説明されようやく理解。“ハナ”と呼ばれる男はいい女の存在をニオイで認識するw どうやらこしらさんの中で江戸の鳶職は“まともに日本語も喋れないアッタマ悪いヤンキー”ってイメージらしい。


桃月庵白酒『メルヘンもう半分』(8/23 Wホワイト落語会)
古典落語の怪談噺『もう半分』、あれを白鳥師が登場人物を“ムーミン”のキャラクターに置き換えて改作したのが『メルヘンもう半分』。で、白酒師は、昨年白鳥師の会にゲスト出演した際に、登場人物たちを更に変えてこのネタをやったのです。わたしは残念なことにそれを聴いていなかった。聴いた落友たちはみな「すっげー面白かった!」と絶賛してるし、白酒師は「もう二度とやらない」と言ってるし、聴けなかったのはホントに残念であった。
それを、この日思いがけなく聴くことができたのですから、とーっても嬉しかった。ちなみに、二度とやらないと言っていたものをやることになったのは、噂によるとお席亭のリクエストだったらしい(あくまで噂)。また、前回やった時とは変わってるところもあるとのこと(わたしは前回観てないからわからない)。白酒版『メルヘンもう半分』。おじいさんが「ドラえもん」、酒屋の主が「のび太」、その女房が「しずかちゃん」ww ドラえもんワールドから逃れてきたのび太としずかは、古典落語の世界で貧しくひっそりと酒屋をやって暮らしてるのだ。そこへドラえもんが二人を連れ戻しにやってくるの。寒い晩、のび太とおしず(しずかちゃんのことをのびたは「おしず!」って呼びますw)が切り盛りする店に入ってきたのは、丸々とした二頭身の男、男は全身真っ青で…「のーびーたーくぅーーん!」。
想像してごらんなさい、白酒師が大山のぶよの声を真似て、あの体で、両手を握って(ドラえもんの手をマネてるんだよ)言うんですよwww それだけでじゅーぶん可笑しい!!


柳家喬太郎『紙入れ』(8/31池袋余一会 柳家喬太郎の会)
好色なおかみさんの描写がすばらしい(あまりに色気こってりで、ちょっと辟易するくらいだw 新さんでなくても、勘弁してくださいよぅ〜!って感じだ)。この『紙入れ』を、たとえば器用なだけの二つ目あたりが(…だれを想定して言ってるかはいわないW)やったとしたら、喬太郎師がやった通りにやったとしたら?…うーん、たぶん、ただ気持ち悪いだけだな。ドン引きするな、きっと。喬太郎師がやるから笑えるんだよなぁ。そして、ああいう風におんなの図太さを描くのが喬太郎師らしい。ついでにバレ噺『吉田御殿』も、昨日は相当濡れ場の描写がしつこかったぞ。喬太郎師匠、昨日はエロモードが止まらなかったみたいだw


ところで、『紙入れ』が終わると、始まったばかりだというのに追い出しの太鼓が鳴って「ありがとうございました、ありがとうございました」と喬太郎師が何度も頭を下げた。ありゃりゃ、もう仲入り?それにしてもなんで追い出し?と首をひねってたら…喬太郎師は居酒屋で飲んでる大学生の会話を始め、『紙入れ』をやったのは大学落研の上級生で、あれは落研の発表会、いまはその打ち上げ…という場面から『諜報員メアリー』が始まった。『紙入れ』を『諜報員メアリー』の劇中劇ならぬ落語中落語という設定にして、つなげたの。これ、面白かった。


春風亭一之輔酢豆腐』(8/31らくごカフェに火曜会)
(わか馬さん、もちろん良かった。本当だ。真打昇進&小せん襲名おめでとうございます。でも、やっぱり贔屓の一之輔さんのことを書いちゃう。ごめんなさい。)
最近は『ちりとてちん』流行りなのか、『酢豆腐』をやる方は少ないですね。久々に聴きました。一之輔さんの昨夜の『酢豆腐』は、力が抜けてて軽やかで、とても愉しかった。とっても良かったと思うのは、たぶんアレだ、この噺が一之輔さんお得意の典型的な“部室落語”だからだよ、きっと。 一之輔さん描く「バカ男子たちの青春」は、ホントに可笑しくていいです。


続いて、印象に残った会はコレ↓
志の輔らくご in 下北沢『恒例 牡丹灯籠 2010』(8/22千秋楽)
(この会のことは一言かいておかないと)
毎年、夏の恒例だった志の輔師匠の公演『牡丹灯篭』も今年をもって一旦終了。初演(2006年)から毎年観てきたけど、公演を重ねるたびにシンプルにすっきりしていった印象があります。
それが顕著なのは、例えば殺されたおみねが伴蔵の店の奉公人達に次々と憑依して、新三郎を殺したのは伴蔵だと口走る場面。自分の過去の記録を読んでみると、自分の慣れだけではなく、志の輔師の描き方自体が変わっていっているのが分かる。
フォロアーの方が圓朝作品らしい「人間の心の闇」、その凄みを感じられなかったとつぶやいてらしてて、わたしも昨年あたりから同じことを感じてはいた。たぶん、こういうことではないか?と思う。牡丹灯篭に限らず、志の輔師は一つの噺でやりたいこと・伝えたいことを最終的にはたったひとつに集約する傾向がある気がする。牡丹灯篭の場合は「3時間で牡丹灯篭という大長編を全部を客に分かってもらう」。テーマはこれに尽きるのではないか。
たぶん、志の輔師は「人の心の闇」を印象深く描くなら牡丹灯篭全篇をかけて語らなくても、もっと適切な長さで効果的に伝えられる落語があると思っているのではないか?と想像する。例えば『もう半分』。わたしの中では、志の輔版『もう半分』の酒屋の夫婦は、伴蔵・おみね夫婦にぴったり重なります。


落語協会 大喜利王選手権(8/22)これは落語の会じゃなくて大喜利なんですが、とにかく笑って笑って、デトックスしましたーー!って感じでとっても爽快だった。
各芸人のポジション取り、気転、センス、反射神経、持久力諸々が晒されて、それも面白かった。
三三さんが、包み隠さず小意地の悪さを発揮しててw、いろんなヒトにいぢわるく突っ込み、たいへん面白かった。
丈二くんが意外に面白かった。流れを読んでその場面にふさわしい回答をしていました。
そして、これも意外なことに白酒師、一之輔さんはいまいちでした。毒とシモネタで責めていたのですが、いまひとつ不発に終わっていたなぁ。お客さんがそういうのきらいな人が多かったのかもしれない。難しいものだなぁ。


全ブロックから決勝まで、ぜーんぶ面白くって、すべてのお題で傑作の回答があったんですが、全部紹介しきれないので、わたしが特に面白かったお題とその名回答をいくつか紹介します。


お題「“なんだソレ?でも、ちょっと聴いてみたい”と思う落語のタイトルを答えなさい」。


SM嬢の噺です『せめる』(一之輔)
『黄金の大黒埠頭』(わか馬)
相撲取りの人情噺です『文七元小結』(Mr.X)
柳家の噺です『さん喬一両損』(正太郎)
どうりでおっかさんがのど飴を舐めろと言った『子は春日井』(三三)
女郎がコツコツ働く噺です『つみたて』(Mr.X)


こーゆーの大好きだw
各ブロックともおもしろいひとが複数いて、しかも拮抗していた。各ブロックで決勝に進出したのは、Aブロック:三浦、萬窓/Bブロック:丈二、倉本/Cブロック:三三、わか馬。そして優勝はわか馬さんでした。


浜松町かもめ亭 怪談噺の会(8/24)
志らく師と三三師。まず、この二人の組み合わせがいいです。「異端vs正統」といえばいいのか、「クレイジーvs端正」といえばいいのかw、とにかく落語の面白さには幅があって奥が深いってことがよく分かる会でしたよ。そして二人が長講を一席ずつってのもピリッとしていい。出来も二人とも素晴らしかった。席亭の方々には、企画するならこういう会をお願いします!