11月・12月の落語



11月は前回書いた三三談洲楼三夜、そして家元がきっちり『へっつい幽霊』をやった談志一門会が印象に残る会だった。
そして12月もやっぱり家元。声の出ない家元が『芝浜』を通してやったのは奇跡のような出来事だった。あの場にいたこと、あの芝浜を聴けたことは、この先ずっと忘れないと思う。


さて。2010年は明日のしもきたのすけえんで落語納め。今年の落語については明日振り返ろうと思います。明日はブログもちゃんと書きますよ(そのつもりだ!…いまは)。
(※以下はホントに備忘録なので読まないように。時間のムダですから)


11/1(月)
桃月庵白酒独演会
19:38〜21:30@シアター711
席亭挨拶 
朝呂久『大安売り』
以下白酒
『徳ちゃん』
『突き落とし』
仲入り
明烏


11/7(日)
古今亭志ん朝トリビュート 三遊亭白鳥独演会
14:00〜16:12@劇小劇場  
紙芝居「大サンショウウオの恩返し」&東洋館はこんなところだ!〜『品川心中』
仲入り
『夢金』 


11/10(水)
志らくのピン
19:00〜21:05@内幸町ホール 
志ら乃『猫と金魚』 
以下志らく
『たぬき(狸三部作)』
『紙入れ』 
仲入り 
『道具屋(与太郎二部作)』
金明竹  


11/16(火)・17(水)18(木) 
三三談洲楼三夜
前回ブログに詳述につき略


11/23(火)
柳家喬太郎みたか勉強会 昼&夜@みたか星のホール
昼の部14:05〜16:16
辰じん『金明竹
喬太郎『野ざらし
仲入り 
小んぶ『短命』
喬太郎『錦木検校』
夜の部18:04〜20:28 
辰じん『道具屋』
喬太郎時そば
仲入り 
林家竹平『星野屋』
喬太郎按摩の炬燵


11/24(水)
立川談志一門会
18:30〜20:42@よみうりホール  
平林『浮世根問 名古屋弁ver』
志遊『笑い茸』
志らく金明竹
仲入り 
談笑『時そば
談志 落語チャンチャカチャン〜『へっつい幽霊』


11/30(火)
朝日カルチャーセンター 立川談春先独演会
19:00〜20:58@横浜にぎわい座 
こはる『金明竹
談春『慶安太平記 善達の旅立ち』
仲入り 
談春『慶安太平記 吉田の焼討ち』


12/2(木)
柳家小三治独演会 
19:00〜21:10@銀座ブロッサム 
柳亭燕路悋気の独楽 
小三治 マクラ「今年を振り返る」
仲入り
小三治『大工調べ』


12/3(金)
こしらの集い
@お江戸日本橋亭 
『らくだ(丁の目の半次一代記 序)』
仲入り 
『(文七&ちはやの)鰍沢


12/4(土)
講談の会 忠臣蔵名作揃え
17:45〜21:06@国立演芸場  
一龍斎貞鏡『山崎の合戦』
神田阿久鯉『天野屋利兵衛』
一龍斎貞友『安兵衛婿入り』
一龍斎貞山『赤垣源蔵 徳利の別れ』
仲入り
宝井琴調『徂来豆腐』
神田陽子『義士と俳人 大高源五
一龍斎貞水『忠臣義士 二度目の清書』


12/6(月)
立川談春六尺棒』公開収録落語会
19:30〜21:02@成城ホール 
こはる前説 
談春 トーク(この会開催の経緯)談春ハンディカメラで客席インタビュー/談春版落語チャンチャカチャン(夢金〜鼠穴〜棒鱈〜文七〜二人旅〜船徳〜お若伊之助〜小猿七之助〜たちきり)
仲入り
六尺棒


12/8(水)
19:00〜21:24@新宿明治安田生命ホール
春風亭昇太独演会 古典とわたし
春風亭柳太郎『大安売り』
昇太『二番煎じ』
昇太『宴会の花道』
仲入り
昇太『富久』


12/9(木)
柳家喬太郎独演会
19:00〜21:00
鈴々舎風車『やかんなめ』
柳家喬太郎『ぺたりこん』
仲入り
柳家喬太郎『三味線栗毛』


12/12(土)
一之輔の会
16:00〜17:20@神田餃子家
浮世床
『尻もち』
『短命』


12/19(日)
いちのすけえん国立
18:30〜21:15@国立演芸場
一力『子ほめ』
一之輔『鈴ヶ森』
明烏
一朝『抜け雀』
仲入り 
一之輔『富久』


12/21(火)
立川談春東京独演会
18:30〜20:43@よみうりホール
『棒鱈』
仲入り
文七元結


12/22(水)
ラクエン
19:00〜22時近くだった気がする
柳家喬太郎『抜け雀』
演劇『籠の中の若殿』
仲入り
喬太郎 新作落語
演劇『屏風をめぐる諍い』
喬太郎 新作落語


12/23(木)
リビング名人会 談志Talk&芝浜
18:00〜20:19@よみうりホール
第一部 鼎談 談志・山中秀樹志らく
仲入り
第二部 談志 落語チャンチャカチャン〜権兵衛狸〜芝浜


12/26(日)
年忘れ市馬落語集
17:00〜19:48@九段会館ホール
第一部
柳亭市江『寄合酒』
柳亭市馬『首提灯』
柳家三三『不孝者』
立川志らく『死神』
仲入り
第二部
昭和歌謡大全集
市馬・志らく スペシャルゲスト談志


12/28(火)
18:30〜20:30
25周年ファイナル立川志らく独演会 鉄拐総集編
『鉄拐』
仲入り
『鉄拐後日談』


12/30(木)
松尾貴史のオススメ落語会vol.1-1
13:00〜16:02@にぎわい座
桃月庵白酒『松曳き』
立川志の輔みどりの窓口
仲入り
柳家喬太郎『竹の水仙
瀧川鯉昇茶の湯

三三 談洲楼三夜



久々に時間をおかずに会の感想を書いてみた。これはちゃんと書いておきたいなと思ったので。個人的には、この三夜は記憶に残る会になりそうな気がする。


三三「談洲楼三夜」
日時:11/16(火)・17(水)・18(木)
会場:紀尾井ホール
上演時間&演目: ※時刻は、だいたいの上演時間を把握するためにアバウトに記録したものです。あくまでも参考ということでご覧下さい。この会にいらした方、もし間違ってたら指摘してね。
第一夜 19:00〜20:59
開口一番 桂三木男『新聞記事』〜19:24(約25分)
柳家三三 『嶋鵆沖白波(一)』マクラ〜19:34 本編(?という言葉が適当かどうかわかりませんが、とりあえず)〜20:05(本編約30分)
仲入り 〜20:17
三三『 〃 (二)』 〜20:59(約40分)


第二夜 19:00〜20:38 
開口一番 柳亭市楽『松山鏡』 〜19:15(15分)
柳家三三『嶋鵆沖白波(三)』 〜19:59(約45分)
仲入り 〜20:12
三三『 〃 (四)』 〜20:38(約35分)


最終夜 19:00〜21:09
開口一番 柳亭市楽『道灌』 〜19:18
柳家三三『嶋鵆沖白波(五)』 〜20:02(約40分)
仲入り 〜20:15
三三『 〃 (六)』 マクラ(この会のために噺の舞台・三宅島を訪れた話。エピソード「竹芝桟橋売店の猫と金魚式ガスマスク販売」が面白かったw)〜20:40 本編〜20:59(約20分)
三三 オマケのトーク(原作ではこの後どうなるか?)


圓朝と同時代を生きた柳派の落語家・初代談洲楼燕枝。この人も圓朝のような大作を書いていて、『嶋鵆沖白波』はその中のひとつだそう。
三三さんが3日間で上演したのは原作のあくまで一部のようだ。燕枝が読み物としてストーリーを文語体で書いたものと口演の速記本が残っているそうなので、全体のストーリーを知りたい方はそちらをあたってください(わたしは読んでません。文語体の原作を読んだという博識の落友から、実は大分前に粗筋を聞いたんだけど、すっかり忘れてこの会に臨みました、ハイ)。
あくまでざっくりだけど、三三さんが口演した部分のストーリーはこんな感じ↓。
第一夜
(一)下総・佐原の穀屋の長男・喜三郎。道楽がもとで勘当され土浦の皆次の子分になる。実は喜三郎は後妻である母親の連れ子で、弟に家督を譲るために母親と示し合わせ、わざと勘当されたのだ。喜三郎は男ぶりと気風の良さ、腕っ節の強さで頭角を現し、侠客「佐原の喜三郎」として名を馳せる。
その頃。成田の門前に美貌の芸者・おとらがいた。彼女は江戸・神田の三河屋三五郎の娘だったが、父の死で店が傾き、母を連れて成田に流れて来て芸者になった。おとらは土地のやくざ者・馬差の菊蔵から5両を借り、その金がもとで菊蔵と揉める。宿の一室でおとらの腕をつかみ乱暴に引き立てる菊蔵。そこに、宿に居合わせた喜三郎が割って入る。
(二)おとらを助けた喜三郎。母子を預けようと、二人を連れて兄弟分の倉田屋文吉のもとに駕籠をたてるが、途中で菊蔵とその親分の芝山の任三郎に囲まれる。母子は逃したが喜三郎は捕えられてしまう。喜三郎に惚れたおとらは、凄惨なリンチをうけて瀕死の喜三郎を救い出す。おとらの看病で回復した喜三郎は、菊蔵と任三郎に仕返しをするために夜中に任三郎宅に忍び込む。任三郎は仕留めたが、菊蔵を取り逃がす。人を殺して追われる身となった喜三郎は江戸へ逃れる。
第二夜
(三)母を亡くし借金を背負ったおとらは、身を売って吉原大坂屋の花魁・花鳥となる。ある時、喜三郎にそっくりな旗本・梅津長門に出会い相思相愛に。しかし、花鳥に入れあげて金が尽きた長戸は、花鳥逢いたさに辻斬りをしてしまう。長門は奪った金200両を懐に大坂屋に向かうが、途中で出会った御用聞きに犯行を勘付かれる。大坂屋はすぐに追っ手に取り囲まれ、それを知った花鳥は長門を逃がすため大坂屋に火を放つ。あっという間に火の手が広がり燃え上がる吉原。長門は炎をくぐって脱出したものの、花鳥の身を案じて再び吉原へ走る。
(四)
花鳥は火付けの罪で捕えられ三宅島へ遠島の刑に処される。強情に自白しない花鳥は牢名主のお熊・お鉄の二人の婆に可愛がられ、二人の入れ知恵で拷問に耐え抜いて牢名主を継ぐ。そこに江戸から罪人が送られてくる。その中の一人に元は旗本の娘というおかねがいた。おかねが長門の元恋人で、吉原から逃れた長門を匿っていたと知った花鳥は、嫉妬と長門に裏切られた怒りで、牢の中でおかねを殺す。婆達の入れ知恵で殺しは露見せず。
第三夜
(五)花鳥は島役人・壬生にとりいって妾宅に暮らすようになる。そこで勝五郎、庄吉(三日月小僧庄吉)、僧の玄若と知り合うが、彼らはそれぞれおとらと因縁があることが分かる。そこへ喜三郎が送られてきた。喜三郎は、捕えられて八丈島に送られる途中で病気になり、三宅島に降ろされたのだ。再会したおとらと喜三郎は夫婦のように暮らし始めるが、おとらは長門への、喜三郎は菊蔵への復讐心を抑えられない。二人と同様にそれぞれ江戸に未練がある勝五郎、庄吉、玄若も加わり、五人は島抜けの機会を窺う。
(六)船乗りたちが海に出るのを忌む日を狙って、五人は島を出ることにしたが、たまたまその晩、雨乞いの儀式を済ませた壬生がおとらの住まいを訪れる。おとらと喜三郎は壬生を殺し、彼が携えていた三宅島の宝剣と仏像を奪って逃げる。なんとか海に出たものの、五人が乗った船は嵐に襲われ、さらに船幽霊に遭う。宝剣と仏像のおかげで幽霊から逃れた船は、二日二晩海を彷徨い、銚子の浜に打ち上げられる。娑婆に戻った五人はそれぞれの復讐を果たすために、別れる。


三三さんの語ったストーリーはここまで。原作ではこの後五人がどうなるか?を、三三師は最終日の上演後に“オマケ”としてダイジェスト風に語ってくれた。
(なお三三さんは、三日通しで来られなかった人のために、希望すれば今回の“粗筋”を郵送してくれると約束。希望者はアンケート用紙に住所・氏名と「粗筋希望」って書いて提出しました。わたしもアンケート出してきた。三日コンプリートしたけど、やっぱり欲しいんだもん。三三さん「直筆で書くかも」って言ってので)。
第一夜は講談調の任侠物、第二夜は歌舞伎でいうところの世話物、最終夜は島抜けがクライマックスの活劇風(嵐や幽霊船に遭うあたりは、少しだけ『九州吹き戻し』を連想した)…という感じかな。三三さんは一晩だけ聴いても楽しめるように、また三日連続で聴く客が飽きないように、それぞれの晩で噺の趣を変えて今回のような構成・演出にしたのではないかと思う。三日通して振り返ると、それがよく分かった。


強いて難を言えば(あくまでも“強いて”です)、第一夜がやや物足りなかった。というのは、実に講談らしいストーリーにも関わらず、三三さんはかなりあっさりとやったからだ。このパートは分かりやすいアウトローヒーローが出てくるB級映画みたいなストーリーで、深みがない分、どこかにケレン味がないと面白くない(まぁ、これは聴き手としての気持ちで、演者にはああしたのにはちゃんと理由があると思う。三三さんは“落語らしく”を意識していたのかもしれない)。
たとえば、喜三郎が任三郎を殺す場面(喜三郎は吊ってあった蚊帳を切って落とし、蚊帳にまかれて逃れようともがく任三郎をメッタ刺しにする)などは、もう少し血なまぐさくやってくれたら、ドキドキしてよかったかも。
あるいは、落語らしくということだったら、喜三郎やおとらに、もう少し陰や人間の業みたいなものが感じられたら、聴き応えがあったかもしれない。
そういう物足りなさを感じるというのは、そもそも原作がそんなに良くないからかもしれないなぁ(柳派の皆様、ご先祖を貶すようなこと言ってすいません)。圓朝ものに比べて談洲楼燕枝の作品をやる人が少なかったのは、そういうところに理由があるんじゃないか?と思った。


しかし、第二夜―上述の粗筋(三)のパート―は素晴らしかった。ここは三夜を通しての見せ場だったと思う。三三さんの持ち味・良さが活かされ、今回はこれを聴けただけで充分モトをとった。
このパートは先代馬生も『大坂屋花鳥』としてやっていたそうだが、馬生の演出と三三さんのそれはかなり違うようだ。馬生は花鳥を幸薄い儚げな女性として描いているそうだが(そういう描き方にしたのは、馬生師匠はこのパートだけを上演していたためだろうと三三師は言っていた)、三三師は花鳥を“毒婦”の性質を秘めた女と捉えて、このパートではその本性が少しずつ顔を出し始める。
廓に火をつけて戻って来た花鳥、うつくしい顔を長門に向け「人殺しの相方の女郎ざます。火付けくらいはなんのこともありんせん」「でも・・・わたしのことを、けっして見捨てないでくださいましね」。この言葉に、さすがの長門もゾッとする・・・という場面。女をやる時、三三さんの細身は本当に有利で、首すじや肩の動き・傾け方で、ホンモノのうつくしい女に見えてくるから不思議。
梅津長門が夜の門前で人斬りをする場面も見事だった。三三さん、ああいうところホントに上手いんだよなぁ。長門がグワッと刀を振り下ろす、ザッとあがる血しぶき。すごくテンポがよくてワクワクした。肩に力が入り、思わず身を乗り出すように聞いていた。時々わらいを挟んでそんな緊張をふっと緩めてくれる、その緩急も見事だった。
三三『大坂屋花鳥』。是非もう一度観たい。どこかで再演してくれることを強く願う。


三三さんは、昔から“上手い”“上手い”と言われ続けていて、たしかに天賦の才があるのかもしれない。でも、フラのある人じゃないし、苦手やダメな部分もある落語家だと思う。だけど、そこをひとつひとつ潰していく努力を密かにしていて、そういった努力が少しずつ実を結んでいると感じた。
三夜の構成・演出といい、客へのサービスといい、この三夜は三三さんに感心することが多かった(ナマイキですね、感心だなんて)。
三夜通えたことは本当にラッキーだった。
三三師匠、どうも有難うございます。
ところで三三さんの『情熱大陸』はいつ放映されるのだろう。この会は絶対とりあげられるよね。楽しみだー!

10月の落語



10月。印象に残るのは一之輔さんの独演会「真一文字三夜」です。コンプリートできて良かった。


10/4(月)
立川談春独演会
19:00〜21:13@にぎわい座
『九州吹き戻し』
仲入り 
『宿屋の仇討ち』
ネタ出しされていた『九州吹き戻し』が聴きたくて行った会。久しぶりに聴いた。
談春師の“上手さ”を堪能。宿屋もそうだったが、バランスがとれていて抑制がきいていて、スマート。この日は、個人的には “高揚感”まではなく“感心”に留まったけど、これほどの『九州吹き戻し』を聴かせてくれるひとは、いま他にいない。


10/5(火)
こしらの集い
19:00〜20:52@お江戸日本橋亭
『看板のピン』
仲入り
『宿屋の仇討ち』
前夜の談春『宿屋の仇討ち』の余韻を拭い去る、世にも奇妙な『宿屋の仇討ち』であったw 
河岸の始終三人連れだけじゃなくて、なぜか九十九里のピーナツ農家の三人衆が登場して「おまえんとこ泊まっぺ」「なんだっぺ?」と、ぺっぺ・ぺっぺうるさくて万事世話九郎をイライラさせるのだが、この三人衆はストーリーに一切関係ない(笑)。「相撲取りがちゃんこを喰うやら、心中者がためらうやら…」ってなんなのそのセリフ?(笑)。「源ちゃんは色事師♪」って囃したてるところも、「ゲ・ゲ・ゲゲゲ、げーんべい♪」ってワケわかんないよ、その歌!
あーあ、またヘンな落語、いや“落語のようなもの”を聴いてしまった。でも、面白いんだよなぁ。


10/8(金)
鈴本演芸場夜の部
17:30〜21:10?
柳家こみち『元犬』 
鏡味仙三郎社中 太神楽曲芸 
柳家三ノ助『金明竹
入船亭扇辰『お血脈
大空遊平・かおり 漫才
柳家太夫『谷風情相撲 佐野山』
橘家文左衛門『のめる』
仲入り
伊藤夢葉 奇術 
柳家三三『妾馬(前半)』 
柳家小菊 粋曲 
柳家小三治『一眼国』
開演前から長蛇の列。お客を入れるのに時間がかかり、この日は前座の開口一番はナシ。
全体に、出演者全員がネタ・時間に気を配り、トリの小三治師まできれいにつないで出番を盛り上げた。寄席のチームプレイの模範のような芝居であった。個人的には、仲入り前の文左衛門師の『のめる』、三三師『妾馬(前半の赤井御門之守の家来がお鶴を探して長屋に訪ねてくるところだけ)』が非常に良かった。
で、会場いっぱいの期待と拍手に迎えられた主役の小三治師匠。高座にあがると…「あたしが毎日ここに出ますとね。“たっぷり!”っていう人がいるんですよ。・・・(湯飲みをひとくちすすり)・・・大きなお世話です」(笑)。
40代にテレビの仕事で訪れたエチオピアの首都・アディスアベバ。砂漠の中のオアシスのような美しい街には、紫に光る褐色の肌と整った顔立ちの人々が行き交い、その美しさに見とれた。飛行機の中でそんな人たちを撮ろうとこっそりカメラを構えたが、気がつくと黄色人種は自分ひとりだけ。コソコソとカメラをしまった…というマクラから『一眼国』へ。ちょっと素敵な流れ。
この日は9時を少々まわった。かつての秋の恒例、鈴本小三治独演会を思い出す、いい空気でした。


10/13(水)
六代目三遊亭圓生トリビュートの会 昼の部 
15:00〜17:10@紀伊國屋ホール
三遊亭兼好『八九升』
三遊亭圓生(DVD)×柳亭市馬 リレー『掛取漫才』
仲入り 
三遊亭圓生『淀五郎』(DVD)×三遊亭白鳥『聖橋』
兼好師がやった『八九升』は三遊亭の前座噺だそう。わたしはあまり三遊派の寄席に行かないし、落語協会の三遊亭の前座がこれをやるのも聴いたことがなくて、ここで初めて聴いた。“耳のとおい人の噺”です。
兼好師は久しぶりだったが、朗らかな高い声が気持ちよく相変わらず上手いと思った。ただ“陽性の三三”って印象がある。ええと、上手いんだけどちょっと面白みに欠ける…って感じなのです、わたしには。
圓生師のDVDを鑑賞し、途中から出演者がリレーで演じるという企画が面白かった。DVDでも、圓生師匠には思わず見入っちゃいますねぇ。圓生×市馬の掛取漫才は良かった!圓生義太夫節、見事だなぁ。で、市馬師匠も負けじと三橋美智也をw。とても楽しかった。
一方、『淀五郎』は、厳密にはリレーではない。白鳥師がやった『聖橋』は『淀五郎』と『中村仲蔵』をミックスしたような噺で、売れない噺家・金銀亭久蔵が池袋演芸場で談志師匠と二人会をやり、『文七元結』をリレーする・・・という改作。
ちなみに兼好師に圓生師匠の『淀五郎』について尋ねられた白鳥師、「昨夜YouTubeで初めて聴きました」。白鳥師らしいなぁ(笑)。


桃月庵白酒独演会「喝采
19:30〜21:21@道楽亭 
『夕立勘五郎』
『お見立て』
仲入り 
『火焔太鼓』
この日は三席とも古今亭の噺。白酒師の『夕立勘五郎』、久しぶりに聴いた。やっぱサイコーだな。「いどっこだってねぃー?」「えんすーもりのうすまづ!」(笑)。白酒師の“訛ってるヒト”ってどうしてこんなに可笑しいんでしょう?


10/18(月)
昇太十八番
19:00〜21:07@本多劇場 
オープニングトーク 
開口一番 昇々『初天神 
※以下昇太師
時そば
ナマ着替え
『花粉寿司』 
仲入り 
茶の湯
この会は昇太師の十八番を録る会で、“動き”が印象的なネタを選んだということなのですが、昇太さんはどのネタも動きますよねw ま、そんなことはどうでもよろしい。何度聴いたか分からない『時そば』がこの日は(も)素晴らしかった。さげを間違えたのは惜しいけど、笑いっぱなしだったものなぁ。
昇太さん「どんなにイヤなことがあってもこのネタをやると忘れられるんですねぇ」。わたしだって、いや、わたしこそそうです!昇太さんの『時そば』を聴くと、どんな悲しいことがあっても笑えそうだな。わたしは初めて落語をナマで聴いたのが昇太さんで、その時「この人、なんて楽しそうなんだろう!」と思った。楽しそうな人を見てると自分も楽しくなる、わたしは楽しそうな人が好きだ、そういう人を観たいんだ!ということに気づかせてくれたのが春風亭昇太であった。昇太さんの『時そば』は、いつもその時の気持ちを思い出させてくれます。


10/28(木)
春風亭一之輔独演会 真一文字三夜 第一夜
19:00〜20:54@お江戸日本橋亭  
ぽっぽ 作文『わたしと一之輔アニさん』
※以下、一之輔
『鈴ヶ森』
『不動坊』
仲入り
『青菜』 


10/29(金)
春風亭一之輔独演会 真一文字三夜 第二夜
19:00〜20:47@お江戸日本橋亭  
朝呂久 作文『一之輔とわたし』
※以下、一之輔 
『あくび指南』
『提灯屋』
仲入り
『五人廻し』


10/30(土)
春風亭一之輔独演会 真一文字三夜 最終夜
19:00〜20:50@お江戸日本橋亭 
一力 作文『わたしと一之輔』
※以下、一之輔
初天神
仲入り
『らくだ』


NHK新人演芸大賞を受賞した直後の三夜連続独演会とあって、悪天候にも関わらず(一之輔さんは雨おとこなのであったw)三夜とも盛況であった。一之輔さん、日を重ねるごとに寛いで、本来の持ち味が出てきたように感じた。
第一夜。
『鈴が森』。“くちうつし”で教えてやるといわれてまんざらでもなさそうに唇を突き出す子分、親分が何度も振り払った子分の手をついにとって、暗闇を行くふたり・・・一之輔さんに言わせると、この噺は“BL系”なんだって(笑)。
一之輔・部室落語の代表作『不動坊』。鉄瓶もってお湯屋に行っちゃった吉っつぁんが、うきうきと「そこつ(粗忽)、そこつ…」って独り言いうところがかわいくて好きだw
『青菜』。八五郎、“来客”と言えずに「らいららい!」w
第二夜。
『あくび指南』。「自分…不器用なもんで…」「でぇくです。・・・うち、建ててます」。いつものセリフ、タメがきいてたなぁw 可笑しかった。
『提灯屋』。滑稽な落語らしい噺。こういうのをさらっとやって笑わせるあたりがさすが。
『五人廻し』は華やかで元気で色っぽさもあった。
第三夜。
新人演芸大賞を受賞した『初天神』。この日はフルバージョン。「団子屋さんが出てるね?」「出てねぇよっ!」「だ…」「ダメっ!」w 金坊がなにか言いかけるたびに父親が間髪入れずに全否定するのですが、その“間”がたまらない!
金坊、ついに父親にタメ口「八五郎さんねぇ…」「友だちじゃねぇっ!」「うちぃ帰ったら、籍抜くぞ!」。このやりとり、ほんっとに可笑しい。つい先日、NHKで行われた本選の放送を観たが、この日のほうが面白かったんじゃないかな?もっとも落語の面白さはテレビじゃ伝わらないから、なんとも言えないけど。
『らくだ』も通し。前に聴いた時は文左衛門師匠に教わったのがまんま分かったが、今回は一之輔カラーを感じた。
三夜をコンプリートして、わたしは『初天神』が最も良かった。いま、『初天神』が最も面白いのは一之輔さんじゃないか?と思う。さん喬・喬太郎親子の『初天神』も素晴らしいが、一之輔さんの『初天神』を観ると、二人の『初天神』があざとく感じられてしまう、そのくらい一之輔さんのはいい。


10/31(日)
立川流鎖国論』刊行記念 立川志らく独演会
14:00〜15:50(その後サイン会)@紀伊國屋サザンシアター 
志らく『たちきり』
『長短』 
仲入り 
立川流目安箱(会場から募った質問に志らく師が答える。司会は志らら&志ら乃
志らく師の新著『立川流鎖国論』の出版記念の落語会。
今月はピンに行かなかったので、聴き逃していた『長短』が目当てだった。期待通り、ほんっとくだらなかったw(誉めてます)。長吉、つまんない冗談を言って短七に向かって吹き矢を放つのだが(おなじみのあの“吹き矢”ですよ)、吹き矢までゆーっくり飛んでくのw。短七は余裕をもってよけ、自分をかすめて飛んでいく吹き矢の軌道をゆっくりと目で追う。マトリックスか(笑)。
志らくさんは、最近は人情噺よりクレージー落語が断然いいな。
『たちきり』を観ていて、冒頭の小久と若旦那のやりとりのところ、小久の口のききようや佇まいが、ちょっと小津映画みたいと思った。「はい」「…ええ」なんていう返事の仕方や上目遣いが。そういえば志らくさんの落語に出てくる想いあっている男女の会話は、大抵ああいう感じだな…と思ったりした。
立川流目安箱に集まった質問は、さほど面白いものはなかった(談志が死んだら立川流はどうなるか?とか。自分は立川流に限らずどの一門でも、基本的には噺家個人にしか興味がないので、こういうことにはあんまり興味がないです。その他は、ピンに通っていたり師の本を数冊読んでいれば、あえて尋ねずとも志らく師の答えがわかるような質問ばかりだった)が、志らく師の回答にちらっと覗く落語観や噺家評は面白かった。
白鳥師について。落語をまったく知らない白鳥師は「中村仲蔵」というタイトル(なかむらなか“ぞう”)から、単純に象(ぞう)が登場する「サーカス小象」を思いつく、そんな白鳥師の発想・センスを、志らく師は“子どものような純粋さ”だと評した。ただ「日本人なら、落語を聴いたことがない人でも、あれ(=白鳥師の落語)は落語じゃない、伝統を含んだものではないと分かる」と。たぶん、こしらさんの落語も志らく師に言わせるとそうなんだろうなぁ。伝統、テクニック、面白さ。このバランスがとれてる落語が評価されるみたいなんだな。どういうバランスであれば「落語」なのか?このあたり、正直、自分には分からないなぁ。

9月の落語



10月ももうじき終わるという今頃になって9月の落語活動の報告です。遅くてホントにすいません。えーと、先月はわりとヒマだったので12回出かけておりますね。昇太さんの独演会だけかなり長いです。書くだけ書いてブログにアップするのを忘れていたからです(てへ)。


9/2(木)
こしらの集い
19:00〜21:01@お江戸日本橋亭
『手紙無筆』
仲入り
『千両みかん』
『手紙無筆』も『千両みかん』もなんとも不思議な落語(本人曰く“落語のようなモノ”w)であった。
どんな?と訊ねられると、とても説明に困る。「え?そんなのアリ?」っていうくらいのヘンな展開、ヘンなギャグが入ってるのだが、それを“工夫”と呼ぶのはためらわれるし、ここにかいても面白くないと思う。あの空気の中で観てるから伝わる面白さなのかなぁ。大笑いしてたら、こしらさんに「皆さん、おかしいですよ。(真っ当な落語ファンに)変わってるってバカにされますよ」と心配されてしまった。確かにちょっとヘンかもしれない(でも既に手遅れです)。
こしら『千両みかん』には、ちょっと『擬宝珠』が混じってます。番頭から若旦那の病の原因が“みかん”だと告げられた大旦那、「あいつもか…(遠い目)」。ここんち、大旦那も、その父親(祖父)も、みかん好きだったの(こういうところ、彼はホントに『千両みかん』と『擬宝珠』をごっちゃにしてるんじゃないか?と疑っています、わたしは。だから“工夫”というのはためらわれるのw)。相変わらずカミシモ逆だし、まともなみかんをよる手つきはフリック入力してるみたいだったし(笑)、ホントにヘタ。でも、面白いんだなぁ。


9/6(月)
桂吉坊独演会
19:00〜20:30@道楽亭
『辻八卦
仲入り
崇徳院
吉坊『崇徳院』。若旦那、お嬢さまを「うつやかな人もいるもんやな」とみそめる。“うつやかな人”というのが、江戸落語では聞かない、きれいな言葉だと思った。それにしても、こしらさんでも吉坊さんでも楽しめるわたしって、許容範囲が広くてお得ってことじゃない?(…と思うことにしました)。


9/10(金)
いちのすけえん秋の段
19:00〜21:20
柳亭市也『高砂や』
春風亭一之輔『不動坊』
仲入り
橘紅楽 寄席文字実演
一之輔『居残り佐平次
一之輔さんの『不動坊』は好きだ。彼に合ってる。徳さんとケンカしてベソかいてるマンさんを、お化け役の噺家が「あなた笑顔が似合うんですから」となだめるのが可笑しかった。
居残り佐平次』は、ネタおろしだったのでまだ一之輔さんの匂いがしなかったけど、悪い男が似合いそうな一之輔さんだから、いつかしびれるような居残りが聴けるんじゃないか?と期待しています。


9/13(月)
らくご×情熱大陸 第四夜
19:00〜21:25@シアターBRAVA!
春風亭昇太『人生が二度あれば』
西村由紀江 ピアノ演奏
立川志の輔『徂徠豆腐』
昇太&志の輔の共演とあって、わざわざ大坂まで聴きに行ってしまった。テレビ番組「情熱大陸」の企画で落語と音楽(ピアノ)のコラボ云々と銘打った公演だったが、率直に言って落語の途中にピアノが挟まりましたという印象しかない。どういう意図(あるいは、しがらみ?)でこの顔ぶれ、組み合わせになったのかな。少しでも昇太&志の輔トークが弾んだらいいなと期待していたが、お二人が落語をあまりご存じない様子の西村嬢を気遣い、そのせいか、あんまり弾まなかったな。またどこかで二人会やってくれるといいな。


9/14(火)
志らくのピン
19:00〜21:05
志らべ『看板のピン』
※以下、志らく
『たらちね』
厩火事
仲入り
『お化け長屋』
『お化け長屋』は上下。この公演の前の晩に思いついたという下は“誰も知らないお化け長屋後日談”。長屋を借りにきた乱暴な熊は、亡くなった愛妻を忍んで千羽鶴を作る心優しい男だった…というエピソード。おもしろくない下を新しくしたいと付け足してみたそうだが、志らく師ご自身まだ満足していないようだった。


9/15(水)
立川志らく独演会
19:00〜21:00@博品館劇場
志らら『うなぎ屋』
※以下、全て志らく
『代り目』
『疝気の虫』
仲入り
茶の湯
『反対俥』


四席ともぜーんぶ面白かった!
「ちゅーさせてくだしゃーい」が愛らしい『代り目』。一席目からかなり笑ったけど、志らく師に言わせると“クレイジー度初級”なのだそーです。


『疝気の虫』。6月のお芝居を経て、虫のキャラクターがより立ってきてますます面白くなった。ラーメン嫌いのくせにラーメンに妙に詳しく、自称「詩人」、チェーホフの芝居を語る…そんな虫。


茶の湯』は『反対俥』が控えていたせいか、若干短め&抑えめでしたが、上手く編集されてるから短かさを感じなかった。ご隠居、ピーター(茶筅)でお茶っ葉と青海苔と石鹸を執拗にかき混ぜて「えへへ、えへへ、えへへへ…」って不気味笑う。定吉「焼そば屋のオヤジが湯に入ったようなニオイがしますぅ」。ちなみに志らく茶の湯』のご隠居はフリーメイソンのメンバー。だから若旦那とはお茶の流儀が違うw


ビンの初演以来、また観たい!と切望していた『反対俥』。今日も凄かった!猛スピードで俥をひきながらハンガリー舞曲を唄う俥屋、「…ちゃんちゃんちゃ〜んちゃ…ちゃーんちゃかちゃかちかちゃっ!」“…”のところは、ちゃんと信号で左右を確認してるところなのだw
『反対俥』で“飛ぶ”は他にもいる。たとえば彦いち師の跳躍は見事だ。でも、志らく師匠はジャンプだけじゃなく、歌も入れば、うんちくも語る、大忙しなのだ。こんな落語ばっかやってたら、命縮めるよ。それだけが心配。


9/16(木)
月例三三独演
19:00〜21:05@国立演芸場
柳家わさび『道具屋』
柳家三三『弥次郎』〜『茄子娘』
仲入り
三三『三軒長屋』
この日の三三師匠、『三軒長屋』>『茄子娘』>『弥次郎』の順によかった、わたしは。『茄子娘』の和尚さんは全然ヤラシイ感じがしなかったのが残念。『弥次郎』はちょっと寝ちゃった。でも『三軒長屋』は可笑しかった。お隣のお妾さん宅を訪ねた与太郎、二枚目に豹変!思わず噴いた。


そう、この日は久しぶりにわさびさんを観た。相変わらず肩にハンガー入れてるみたいだなぁw わざとわざとヘタにやってるようなニオイがする『道具屋』。この日はそれが功を奏していなかった(わざとやってることを、多くの客が真にうけて笑ってた。そのせいもあると思う)。でも、あの感じ、上手くいけば面白いと思うな、ワリと好きだ。


9/17(金)
春風亭昇太28周年落語会
19:00〜21:21@赤坂レッドシアター
オープニングトーク
『不動坊』ナマ着替え
『替り目』
仲入り
『抜け雀』
早めに着いたので18時半の開場と同時に中に入った。最前列の下手・端のほうの席に腰掛けた途端、昇太さんがすたすたと舞台に出てきて「あ、いらっしゃい!」。高座のはしっこに腰掛けてお客さんをお出迎えし始めたではないか!
小さい会場だから、こんなことをしてみたそう。
開演までの30分、昇太さんは秘蔵のレコード(「思い出の渚」「22歳の別れ」「奥様は18歳」)をかけたり、お客さんとお喋りしたりしていました。早く行くと、たまにはいいことがあるなぁ。


一席目のまくらで、周りの「いいなぁ」と思う諸先輩―NHKの「生活笑百科」の収録で会った仁鶴師匠、小遊三師匠、鯉昇師匠等々―の話をしたのだが、鯉昇師匠の落語の話がちょっと面白かった。
例えば、普通の落語家は「○○いたしまして、それから〜」っていう時、“○○いたしまして”と“それから”の間で息を継ぐ。でも鯉昇師匠は「○○いたしましてそれから」ってそこで切る、ブレスが独特なのだ、と。あの独特のリズムでいつの間にか鯉昇ワールドに誘われてしまうんだと。言われて、あ、そうかもしれないなぁと思った。 柳昇師匠の落語のことも言ってたな。円丈師匠の『ろんだいえん』にふれて、あの本の中で円丈師匠は色々な落語家の落語を論じているけど、柳昇師匠については何も書いていない。それは「柳昇の面白さは“書けない”からだ」と。柳昇師匠の落語は、ある意味“評論家泣かせ”なのだと。それも一理あるかもしれないな。自分もそうだけど、人は、論じやすい・言葉にしやすいことだけを書きがちだから。(落語の可笑しさってほとんどそうかもしれませんが、言葉にしにくいことというのは確かにありますね。でも、なかなかできないけど、それを言葉にしようとすることは大切だと思う。苦闘してるうちに、ひょいっとなにかが分かることもあるから…とコレは余談でしたw)


落語のほうは、この日はちょっと疲れていたのかな?いつもに増して舌がまわっていなかったw 『替り目』では「俥屋(くるまや)さん」って言うところを「くるやまさん」って言って、客席から「“くるやまさん”て!」ってツッコミが入ったくらい。
でも、相変わらず、サービス精神に溢れた楽しい高座だった。いちばん良かったのは『替り目』。


この噺、わたしは初めて聴いた。ネタおろし?と思ったけど、かなり昔(10年くらい前)にやってそれ以来ということだった。
今までやらなかったのは、酔っ払いの旦那がどうしても「子供っぽく」なってしまうから。でも、ふと「“奥さんが旦那さんより年上”っていう夫婦だっていいんじゃないか?だったら旦那が子供っぽくてもいいんじゃないか?」と思って、今日は“奥さんが年上”という設定でやってみたのだそう。その設定は、あくまでも自分の心づもりだけで、はっきりと“奥さんが年上”と分かるようなセリフは入れなかったそうだが、この噺は、夫婦の実年齢がどうあろうと、そもそも奥さんが旦那より一枚上っていう夫婦関係、そういう関係の良さを描いた落語よね。昇太さんの『替り目』も、ちゃんとそういう感じがして、実に可愛らしく微笑ましかった。
てっきりおかみさんがおでんを買いにいっていないと思った旦那が、さんざん独り言でおかみさんに感謝して泣いて、それをおかみさんに聞かれていたと気づく場面。旦那「なにニヤニヤ笑ってんだよ!小さく手なんかふるんじゃねぇよ!」ww ニヤニヤしながら旦那さんに小さく手をふってるおかみさんの姿が見えるようで、胸がきゅんとしちゃったよ。あと可笑しかったのは、旦那がおでんの“焼豆腐”を略して「やき」って言う、すると奥さん「え?山羊(やぎ)?」。旦那「山羊がおでんの鍋にいたら面白いだろ?!評判になっちゃうだろ?!」。


『不動坊』は、熊がおキクさん(昇太さんは“おタキ”じゃなくて“おキク”って言ってた)との生活を妄想する場面で、熊が仕事から帰ってくると、おキクさんが駆け寄ってきて、「おまえさん!どこ行ってたんだい!さみしかったよ」って、両のこぶしで“ポコポコポコッ”って熊の胸を叩く…っていうところが可愛かったわ。“ポコポコポコッ”っていうのがね。


『抜け雀』も、わたしのだーーい好きな場面・セリフがあったからよかった。宿の主人がおかみさんに、雀がついたてから抜け出て戻ってきた様子を「ちゅん!ちゅん!ちゅん・ちゅん!!」って激しい身振りで報告するところ。おかみさん「お前さん、あたしに怒られると思ってそんなことやってるんだろ。かわいいねぇ〜、布団しきな」。散々バカにするくせに、「かわいいねぇ〜」って言う、で、その言い方がまたいいんですよ、昇太さんは。


帰りは、会場の出入り口のところで昇太さんが見送ってくれた。 「らくご×情熱大陸」は(予想はしてたけど)豪華だけれど“営業”のニオイがする会であった。この日はのんびり・ほっこりした、いい会だった。わたしはできるだけこういう会で好きなひとの落語を聴きたい。


9/20(月)
春風亭一之輔独演会
19:30〜21:14
雑把亭@さばの湯
『鈴ヶ森』
仲入り
天狗裁き
一之輔さんの『鈴ヶ森』は既に定評があってそもそも面白いのだけど、この日は今まで聴いた中でもベスト1!くらいの面白さだった。ドジな泥棒は読書好きで『断る力』(最近はコレ。夏目漱石の『こころ』だった時もありますw)を読んでるんだけど、著者を評して「人殺しの目をしている」ってのに、個人的におおいにウケてしまった。


9/21(火)
巣鴨四丁目落語会 夜の部
18:35〜20:50@スタジオFOUR
志の春『天災』
志の輔『忠臣ぐらっ』
三遊亭鬼丸 漫談『円歌劇団
仲入り
志の輔『小間物屋政談』
『忠臣ぐらっ』も『小間物屋政談』も久しぶりだった。
志の輔『小間物屋政談』。ひと違いで“死人”にされてしまったばかりに、女房は他の男のもとに行き、人別帳から名前は抜かれ(つまり戸籍がなくなる)、若狭屋の後家とていよく夫婦にされてしまう小間物屋。かわいそ。でも、彼はその運命に甘んじる。志の輔師はこの落語を“つじつまが合わないなんて言っていたら生きていけなかった時代の噺”と言ったけれど、奉行の考え方や小間物屋の態度って、現代でもいろんな局面でたいせつかもしれないなと思ったりする。すべて自分の意志で選ぶ、そうできるという考え方って、時にヒトを生きづらくしてるような気がする。そんなことを思う落語、これは。


9/22(水)
SWAクリエイティブツアー
19:00〜?(21時過ぎてたかしら?)@赤坂レッドシアター 
春風亭昇太『温かな食卓』(初登山で遭難してしまった老夫婦の話)
柳家喬太郎『故郷(ふるさと)のフィルム』(行政から立ち退きを迫られた御爺さん、立ち退く代わりに「この街でロケをした、昔の映画を探して欲しい」という条件を出す…)
仲入り
林家彦いち『知ったか重さん』(すぐに見破られる“イメージの乏しいウソ”ばっかりついてる重さん、八幡様のお祭に“スーザン・ボイルのそっくりさん”を連れてくると約束してしまい…)
三遊亭白鳥『新婚妄想曲』 (憧れのミナミちゃんと結婚が決まったタモツくん・42歳。学生時代のマドンナだったミナミちゃんが何故こんなにモテない自分と結婚してくれるのか?疑心暗鬼になったタモツは…)


今回は「温故知新」をテーマに全篇ネタおろし。
各噺のタイトルは、この四字熟語の一字をとってつけられている。この日は初日だったから、四人とも寝不足で気が立ってて妙なテンション、客席はハラハラ、スリリングであった。喬太郎師は既にこの後何度かこのネタを高座にかけてるみたいで、いまは噺の内容も少し変わってると思います。


9/28(火)
鈴本演芸場昼席
※仲入り後入場 
ロケット団 漫才 
柳家喜多八『鈴が森』 
古今亭菊志ん『悋気の独楽
三増紋之助 曲独楽 
桃月庵白酒『お見立て』 
ちょっとだけ時間があったので白酒師目当てで出かけた。「円蔵と正蔵しか知ってるヤツが出てこない。白酒って誰だ?」「(喜多八師に)なんだ、あのやる気のない態度は」と文句ばかり言っていた後ろの老夫婦のじいさんが、白酒『お見立て』に爆笑していた。許してやることにしたw

8月の落語



まずは先月行った会をアップ、続いて印象的な落語および会について書きますよ。


8/3(火)
志らくのピン
途中入場〜21:00?@内幸町ホール
『ろくろ首』
『反対俥』
仲入り
『一文惜しみ』


8/7(土)
こしらの集い
19:00〜21:08@お江戸日本橋亭
爆笑マクラ(調子にのってません〜粋事件〜「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」に関する考察〜電子書籍で全米デビュー〜)〜『短命』
仲入り
『三軒長屋』


8/12(木)
月例三三独演@国立演芸場
19:00〜21:16@国立演芸場
柳亭こみち『締め込み』
柳家三三大山詣り
仲入り
三三『看板のピン』
三三『井戸の茶碗


8/16(月)
第一回赤坂落語レッドシアター「2010夏・怪談噺」8/16夜の部
19:00〜21:38@赤坂レッドシアター
柳亭市也『高砂や』
林家彦いち『熱血怪談部』
桃月庵白酒『化物使い』
三遊亭遊雀『狐の毛』(新作 釜戸権助 作)
仲入り
柳家三三『牡丹灯籠 お露新三郎』


8/17(火)
下北のすけえん8/17
19:30〜22:00@下北沢シアター711
春風亭朝呂久『権助魚』
春風亭一之輔茶の湯
柳亭左龍『風呂敷』
仲入り
一之輔『唐茄子屋政談』


8/21(土)
文左衛門倉庫vol.6
14:00〜16:15@蔵前・ことぶ季亭
小太郎『権助提灯』
文左衛門『もう半分』
会場アンケート紹介
仲入り
文左衛門『天災』


8/22(日)
志の輔らくご in 下北沢『恒例 牡丹灯籠 2010』
14:30〜17:25@本多劇場


落語協会特撰会 落語協会大喜利王選手権
18:00〜20:30@池袋演芸場
出演者
文左衛門師匠仕切りの大喜利大会。司会は文左衛門師匠。19人の芸人が3ブロックに分かれ、各ブロックを勝ち抜いた2名が決勝に進出。各ブロックの面子は以下の通り。
Aブロック:菊六、喬之進、ロケット団三浦、左龍、白酒、萬窓
Bブロック:木久蔵、朝太、丈二、こみち、小太郎、ロケット団倉本、玉の輔
Cブロック:一之輔、わか馬、正太郎、ほたる、三三、Mr.X(某立〇〇真打ショーシw)


8/23(月)
Wホワイト落語会
19:30〜21:30@北沢タウンホール
挨拶 白鳥&白酒
白鳥『新ランゴランゴ』
白酒『メルヘンもう半分』
仲入り
白酒『宗論』
白鳥『地下鉄親子』


8/24(火)
浜松町かもめ亭 怪談噺の会
19:00〜20:50@浜松町メディアプラスホール
立川こはる『桃太郎』
柳家三三『年枝の怪談』
仲入り
立川志らく『妲妃のお百』


8/31(火)
池袋余一会 柳家喬太郎の会
15:00〜16:56@池袋演芸場
柳家小んぶ『金明竹
柳家喬太郎『紙入れ』〜『諜報員メアリー』
仲入り
春風亭正太郎『宗論』
柳家喬太郎『吉田御殿』


らくごカフェに火曜会
19:30〜21:29@らくごカフェ
鈴々舎わか馬『女給の文』
春風亭一之輔酢豆腐
仲入り
春風亭一之輔『麻のれん』
鈴々舎わか馬『妾馬』




8月、印象に残った落語はコレ↓
立川志らく『反対俥』(8/3志らくのピン)
志らく師匠「現代人に馴染みのない俥屋が、ただどんどん速くなってくだけじゃおもしろくない」と思って手を加えたそうなんですが、二番目の俥屋(韋駄天であわてん坊の俥屋ね)がハンガリー舞曲を唄いながら(!)、そのリズムとメロディに合わせて疾走するwww これがもう傑作!笑った、笑った!
たったひとつ、惜しかったのはサゲ。俥屋がぐるぐる廻って溶けて“ホットケーキ”になっちゃった…ってサゲなんだけど、廻って溶けて出来上がるのは「ホットケーキ」じゃなくて「バター」ですねw
この『反対俥』を含め、志らく師の代表的なクレージー落語(『疝気の虫』『火焔太鼓』等々)ばっかりやる会が今月15日に銀座・博品館劇場で開催されますよ。聞き逃した方は是非!


立川こしら『三軒長屋』(8/7こしらの集い)
涙流して笑い、同時に衝撃を受けた。おおげさでなく、後頭部を棍棒で殴られたかのようなショックであった。
三軒長屋ならココ!という聞かせどころ、見せ場は一切無い。二階の喧嘩の胸のすく言いたてなんかもちろんない。なにしろ与太郎の名前が「吉田」。
でも、堪らなく可笑しい。笑いながら「これで笑っていいのか?」と不安になる。あんなにブッ飛んだ、ヘンテコな三軒長屋は聴いたことない。
あの凄さ、可笑しさ、ショックをどう説明していいか分かりません。ただ間違いなく言えるのは、もしアレを談春師が聞いたらすっげー怒るだろう、ということw
パシリの吉田は呼ばれると「なんスか?」と返事し、“妾”という言葉の意味を知らず、「嘘っこ奥さん」と説明されようやく理解。“ハナ”と呼ばれる男はいい女の存在をニオイで認識するw どうやらこしらさんの中で江戸の鳶職は“まともに日本語も喋れないアッタマ悪いヤンキー”ってイメージらしい。


桃月庵白酒『メルヘンもう半分』(8/23 Wホワイト落語会)
古典落語の怪談噺『もう半分』、あれを白鳥師が登場人物を“ムーミン”のキャラクターに置き換えて改作したのが『メルヘンもう半分』。で、白酒師は、昨年白鳥師の会にゲスト出演した際に、登場人物たちを更に変えてこのネタをやったのです。わたしは残念なことにそれを聴いていなかった。聴いた落友たちはみな「すっげー面白かった!」と絶賛してるし、白酒師は「もう二度とやらない」と言ってるし、聴けなかったのはホントに残念であった。
それを、この日思いがけなく聴くことができたのですから、とーっても嬉しかった。ちなみに、二度とやらないと言っていたものをやることになったのは、噂によるとお席亭のリクエストだったらしい(あくまで噂)。また、前回やった時とは変わってるところもあるとのこと(わたしは前回観てないからわからない)。白酒版『メルヘンもう半分』。おじいさんが「ドラえもん」、酒屋の主が「のび太」、その女房が「しずかちゃん」ww ドラえもんワールドから逃れてきたのび太としずかは、古典落語の世界で貧しくひっそりと酒屋をやって暮らしてるのだ。そこへドラえもんが二人を連れ戻しにやってくるの。寒い晩、のび太とおしず(しずかちゃんのことをのびたは「おしず!」って呼びますw)が切り盛りする店に入ってきたのは、丸々とした二頭身の男、男は全身真っ青で…「のーびーたーくぅーーん!」。
想像してごらんなさい、白酒師が大山のぶよの声を真似て、あの体で、両手を握って(ドラえもんの手をマネてるんだよ)言うんですよwww それだけでじゅーぶん可笑しい!!


柳家喬太郎『紙入れ』(8/31池袋余一会 柳家喬太郎の会)
好色なおかみさんの描写がすばらしい(あまりに色気こってりで、ちょっと辟易するくらいだw 新さんでなくても、勘弁してくださいよぅ〜!って感じだ)。この『紙入れ』を、たとえば器用なだけの二つ目あたりが(…だれを想定して言ってるかはいわないW)やったとしたら、喬太郎師がやった通りにやったとしたら?…うーん、たぶん、ただ気持ち悪いだけだな。ドン引きするな、きっと。喬太郎師がやるから笑えるんだよなぁ。そして、ああいう風におんなの図太さを描くのが喬太郎師らしい。ついでにバレ噺『吉田御殿』も、昨日は相当濡れ場の描写がしつこかったぞ。喬太郎師匠、昨日はエロモードが止まらなかったみたいだw


ところで、『紙入れ』が終わると、始まったばかりだというのに追い出しの太鼓が鳴って「ありがとうございました、ありがとうございました」と喬太郎師が何度も頭を下げた。ありゃりゃ、もう仲入り?それにしてもなんで追い出し?と首をひねってたら…喬太郎師は居酒屋で飲んでる大学生の会話を始め、『紙入れ』をやったのは大学落研の上級生で、あれは落研の発表会、いまはその打ち上げ…という場面から『諜報員メアリー』が始まった。『紙入れ』を『諜報員メアリー』の劇中劇ならぬ落語中落語という設定にして、つなげたの。これ、面白かった。


春風亭一之輔酢豆腐』(8/31らくごカフェに火曜会)
(わか馬さん、もちろん良かった。本当だ。真打昇進&小せん襲名おめでとうございます。でも、やっぱり贔屓の一之輔さんのことを書いちゃう。ごめんなさい。)
最近は『ちりとてちん』流行りなのか、『酢豆腐』をやる方は少ないですね。久々に聴きました。一之輔さんの昨夜の『酢豆腐』は、力が抜けてて軽やかで、とても愉しかった。とっても良かったと思うのは、たぶんアレだ、この噺が一之輔さんお得意の典型的な“部室落語”だからだよ、きっと。 一之輔さん描く「バカ男子たちの青春」は、ホントに可笑しくていいです。


続いて、印象に残った会はコレ↓
志の輔らくご in 下北沢『恒例 牡丹灯籠 2010』(8/22千秋楽)
(この会のことは一言かいておかないと)
毎年、夏の恒例だった志の輔師匠の公演『牡丹灯篭』も今年をもって一旦終了。初演(2006年)から毎年観てきたけど、公演を重ねるたびにシンプルにすっきりしていった印象があります。
それが顕著なのは、例えば殺されたおみねが伴蔵の店の奉公人達に次々と憑依して、新三郎を殺したのは伴蔵だと口走る場面。自分の過去の記録を読んでみると、自分の慣れだけではなく、志の輔師の描き方自体が変わっていっているのが分かる。
フォロアーの方が圓朝作品らしい「人間の心の闇」、その凄みを感じられなかったとつぶやいてらしてて、わたしも昨年あたりから同じことを感じてはいた。たぶん、こういうことではないか?と思う。牡丹灯篭に限らず、志の輔師は一つの噺でやりたいこと・伝えたいことを最終的にはたったひとつに集約する傾向がある気がする。牡丹灯篭の場合は「3時間で牡丹灯篭という大長編を全部を客に分かってもらう」。テーマはこれに尽きるのではないか。
たぶん、志の輔師は「人の心の闇」を印象深く描くなら牡丹灯篭全篇をかけて語らなくても、もっと適切な長さで効果的に伝えられる落語があると思っているのではないか?と想像する。例えば『もう半分』。わたしの中では、志の輔版『もう半分』の酒屋の夫婦は、伴蔵・おみね夫婦にぴったり重なります。


落語協会 大喜利王選手権(8/22)これは落語の会じゃなくて大喜利なんですが、とにかく笑って笑って、デトックスしましたーー!って感じでとっても爽快だった。
各芸人のポジション取り、気転、センス、反射神経、持久力諸々が晒されて、それも面白かった。
三三さんが、包み隠さず小意地の悪さを発揮しててw、いろんなヒトにいぢわるく突っ込み、たいへん面白かった。
丈二くんが意外に面白かった。流れを読んでその場面にふさわしい回答をしていました。
そして、これも意外なことに白酒師、一之輔さんはいまいちでした。毒とシモネタで責めていたのですが、いまひとつ不発に終わっていたなぁ。お客さんがそういうのきらいな人が多かったのかもしれない。難しいものだなぁ。


全ブロックから決勝まで、ぜーんぶ面白くって、すべてのお題で傑作の回答があったんですが、全部紹介しきれないので、わたしが特に面白かったお題とその名回答をいくつか紹介します。


お題「“なんだソレ?でも、ちょっと聴いてみたい”と思う落語のタイトルを答えなさい」。


SM嬢の噺です『せめる』(一之輔)
『黄金の大黒埠頭』(わか馬)
相撲取りの人情噺です『文七元小結』(Mr.X)
柳家の噺です『さん喬一両損』(正太郎)
どうりでおっかさんがのど飴を舐めろと言った『子は春日井』(三三)
女郎がコツコツ働く噺です『つみたて』(Mr.X)


こーゆーの大好きだw
各ブロックともおもしろいひとが複数いて、しかも拮抗していた。各ブロックで決勝に進出したのは、Aブロック:三浦、萬窓/Bブロック:丈二、倉本/Cブロック:三三、わか馬。そして優勝はわか馬さんでした。


浜松町かもめ亭 怪談噺の会(8/24)
志らく師と三三師。まず、この二人の組み合わせがいいです。「異端vs正統」といえばいいのか、「クレイジーvs端正」といえばいいのかw、とにかく落語の面白さには幅があって奥が深いってことがよく分かる会でしたよ。そして二人が長講を一席ずつってのもピリッとしていい。出来も二人とも素晴らしかった。席亭の方々には、企画するならこういう会をお願いします!

7月の落語



7月は忙しくて1ヵ月ぶりの更新になってしまいました。すいません。
しかも、既にほとんど忘却の彼方です。
ま、とりあえず7月をさくっと振り返ってみよー。
忙しいといいながら、それでも11回出かけてました(恥)。 


7/1(木)
1日NO百栄落語会
19:00〜20:54@巣鴨スタジオFOUR
百栄『大山詣り
三遊亭ぬう生『選挙ホスト』
仲入り
百栄『鼻ほしい』〜女子アナインタビュー〜『マイクパフォーマンス』〜『寿司屋水滸伝
百栄師匠は、この会では「ほぼネタおろし」「しばらくやってない古典」「新作」の3本をかけるつもりと言っていましたが、『大山詣り』は「ほぼネタおろし」だったのかしら。冒頭にクマさんが出てきません、帰り道、宿で一騒動起こるあたりから普通の大山詣りになります。


『鼻ほしい』は「しばらくやってない古典」なのかな。この噺はやる人少ないですよね。オチは「口惜しい」「わしゃ鼻欲しい」というどーしようもない駄洒落。百栄師のはなかなか面白かったです。「山、ふぁふぁひぃが故に、ふぁっとからず」(山高きが故に尊からず)は可愛かった。


今日(8/1)はこの会の最終回だったのですが、わたしは伺えませんでした。ちと悔やまれる。


7/2(金)
こしらの集い
19:00〜20:55@お江戸日本橋亭
爆笑マクラ
船徳
仲入り
『抜け雀』
わたしの中には「毎月1回はひとり会に行きたい落語家」というのがいて、その数はそんなに多くはありません。その中にはもちろん、志らく師、喬太郎師、志の輔師、昇太師(喬太郎、昇太は毎月の定例会はないけど…)あたりが入っているのですが、最近のベスト3は「1.立川こしら」「2.春風亭一之輔」「3.桃月庵白酒」という感じになってます。この3位の中での順位は時々入れ替わるのですが、1〜3位の顔ぶれはずっと同じでこの3人です。
特に「こしらの集い」は楽しみでしょーがありません。


なんども言ってる気がしますが、今のところ、こしらさんの落語はけっして万人に理解されるものではないと思います。でも、わたしにとっては、こんなにユニークで面白い落語はちょっと他にないんだなぁ。いろんな落語を聴いてフツーの落語で素直に笑えなくなってる…くらいの人にお薦めしたいです。


この日も爆笑であった。
マクラの「皆さん、圓生なんて知らないでしょ?…え?知ってる?僕なんか“なに家”圓生かも知りませんよ」という発言に、また、『船徳』の「棹は三年、艪は…なんとか」に驚愕&爆笑する客席。『抜け雀』だって“駕籠かき”の仕込み一切なしだw 落語の一般常識を知らなさ過ぎる!が、落語の常識を軽やかに超えて、しかもちゃんと可笑しいってのが素敵だ、こしらさんの落語は。だけど、どこまでがホントの無知で、どこまでが計算なのか?そのあたり、なかなか読みきれないのも魅力のひとつではあるな。


7/4(日)
第137回志らく一門会
18:30〜20:42@上野広小路亭
らく太『浮世根問』
志ら乃ちりとてちん
志らべ『お化け長屋』
仲入り
こしら『だくだく』
志らく崇徳院
わたしは、基本、志らく一門会は滅多に行かなくて、行くのは志らく師匠がネタだししてる時とこしらさんが出演してる時くらいです。この回はこしらさんが出演してるから行ったのですが、この日は開場を待つ間に強い雨が降ったりしたにも関わらず、大盛況でした。ひょっとしてじわじわ来てるのか、こしらバブル?いや、バブルにしちゃいかん!


こしらさん、登場。
マクラは師匠・志らく師のお芝居でパンフレットづくりをしたという話から。「どうです?僕、なんでもできるんですよ。…言っちゃダメ!“落語以外は”とか!」ww
『だくだく』、この日も面白かったー。 でも、こしらさんの落語の面白さを伝えるのは、ホントに難しいんだよなぁ。


「ね?目が死ぬでしょ」
「クライアントの言うことを聞かないで、アーティストぶってるから客がこないんですよ!」
「めんどくさいな!」(ご隠居)
「近視で乱視で近目。…あれ、近視と近目は同じですか?」
「うーん、今日は魔日だなぁ。ちっとも釣れないよ」〜「お!キター!」〜「釣れましたー!」
「時計合わせてるよ!」
「猫がオレを助けたつもり!」「猫は猫舌!鉄瓶のお湯をかけたつもり!」
「うわー、オレ泳げないんだよ」「そこは泳げるつもりでいーんじゃねーの?!」
「びゅーんと腕が伸びたつもり!」「腕かよ?!」
・・・とりあえず、この日のメモの抜粋だけでお許し下さい。


今わたしは、落友から噂を聞いた、こしら『青菜』が聴きたくてたまりません。
旦那を真似た植木屋のセリフに「これは鯉のあらいというものだ、スミスでおあがり」ってのがあるって聞いて、それだけで大笑いしてしまったのであった。
「スミスでおあがり」、もう頭にこびりついて離れません。すげーー聴きたい!


7/5(月)
志の輔らくご ビギン・ザ・ビギン
15:00〜17:41@ル・テアトル銀座
『こぶとり爺さん』
鉄九郎&?(ごめんなさい、誰だっけ?)長唄三味線
『猫忠』
仲入り
『しかばねの行方』
『こぶとり爺さん』と『猫忠』は、どちらもこの会以前に今年巣鴨で聴いていました。
『こぶとり爺さん』は5年ぶりにやったそうで、中味はかなり作り直されていた。以前は、ある家族と日本の昔話『こぶとり爺さん』に疑問を持ったフランス人とのやりとりだったが(わたしも前にパルコで聴いた、たしか)、今回は八っつぁんとご隠居のやりとりに変えて作り直してみたそうです。


『猫忠』
普通の『猫忠』は、猫は兄貴に化けてお師匠さんを騙すんだけど、志の輔師はその設定には抵抗がある人が多いだろうと思ったのでしょう、猫のきょうだい(オスとメスかしらね?)がお師匠さんと兄貴に化けるという設定。


『しかばねの行方』は東野圭吾の短編小説を落語にしたもので、15年前の作品。これも何年か前のパルコで観たな。
今回は、高座に釈台を置き、場面転換で張扇を使ったりして落語に講談(っぽい語り)を取り入れた演出。
高座の後ろに布を吊ったセットがあって、この布の一枚が捲くれてセンターから志の輔師が登場した。終わった後は、やはりここから退場したのですが、立ち上がって背中を向けると、志の輔師の背中に庖丁がささっていたw(噺には、背中に庖丁が刺さった死体が登場する。殺人事件のせいで町内の地価が落ちるのを恐れた住人達はこの死体をこっそり始末しようとし、しかばねの始末をめぐって事件が起きる)。
この演出は、どうやら地方公演でやったことがあるらしい。
ロビーも舞台のセットも演出も、「お正月パルコをちょびっと小規模にしてみました」みたいな公演であった。


7/6(火)
志らくのピン
19:00〜21:20@内幸町ホール
らく次『湯屋番』
志らく粗忽の釘
 〃 『小言幸兵衛』
仲入り
志らく『品川心中』(通し)
芝居明けなのでいつもの志らく落語に比べたら本調子とはいえなかったけど、志らく師の気持ちはちゃんと落語にむいていて、落語復帰の第一歩という印象でした。


この日は『粗忽の釘』が面白かったかな。
「この噺は『堀の内』のエピソード1」なのだそーです。
『堀の内』は夫婦の間に子供がいる、『粗忽の釘』はその子が生まれる前の夫婦を描いている、と。
だから、夫・大工の熊さんだけじゃなく、おかみさんも十分ヘンです。くっだらない駄洒落で大笑いするおかみさん。
肩がこった熊さんは、自分で自分の肩をたたくのだけど、肩に手が届かなくて、「うっほ、うっほ」ってゴリラが胸を叩いてるみたくなっちゃう。それをおかみさんもマネする。バカ夫婦です。
サゲは、この間ピンでやった『堀の内』同様、アメリカンニューシネマみたいに映像的にバッサリ終わらせる。
「毎朝、ここにホウキをかけに来なくちゃならねぇ」…で下げずに、隣で女房が「ウッホ、ウッホ」と胸を叩いてて、それでお終いw
志らく師は、このやり方はどこでもウケるというオチじゃないから、多分ピンでしかやりませんと言っていた。


7/14(水)
白酒ひとり
19:00〜21:00@内幸町ホール
柳家花いち『元犬』
桃月庵白酒『宗論』
 〃   『松曳き』
仲入り
白酒『不動坊火焔』
もし落語をそんなに聞いたことがなくて、「落語でとにかく笑いたい」っていう人に「落語に連れてって」と頼まれたら、いまだったら白酒師に連れて行ってあげたいと思う。そのくらい、最近の白酒師は面白いな。
三席とも面白かったけど、この日は特に仲入り前の『宗論』『松曳き』がはじけてましたね。マクラも凄かったし。いつもに増して毒々しかった。なにかヤなことあったんだろうかね?w


鉄板の『宗論』『松曳き』は言うに及ばず、初めて聴いた白酒『不動坊火焔』も、おっかしかったなぁ。
まず、おたきさんとの会話を妄想する吉兵衛。これがとにかく可笑しい。
それから、鉄つぁんは“色が黒い”という設定ですが、屋根の上で皆がアルコール(あんころ)を買いに行った万さんを待ちながら待機してるところあるじゃないですか、あそこで徳さんがふと「鉄つぁん?」って姿を探すのです、すると鉄つぁん「いるよ」、徳さん「見えなかった、黒いから」w
この“色の黒い鉄つぁんが見えない”というのが何回も繰り返されるのだけど、やたらおかしかった。
それと噺家の幽霊。へっついの上に降ろされるところ、下に降ろされ過ぎてへっついに腰掛けるかたちになっちゃった噺家「もっと上です!へっついの妖精みたくなってます」。大きな白酒師が“へっついの妖精”みたくなってるっていうのがおかしくて、ここは妙にツボにはまってしまいました。


7/19(月)
巣鴨四丁目落語会 昼の部
13:00〜15:45@スタジオFOUR
志の春『かぼちゃ屋
キウイ『反対俥』
志の輔『千両みかん』
仲入り
あべあきら 歌とギター(「猫畑」「ちょこっと仮面」)
志の輔『もう半分』
『もう半分』が良かった。聴き入っちゃった。
普通の人がついふらっと誘惑に負ける状況や悪いことを正当化していく様は、可笑しく、またいかにもよくありそうな感じ。だから怖い。
「おじいさん、(この50両に)縁がないんじゃないかねぇ」
「おじいさん、(50両は)いらないんじゃないかい?」
「黙って借りよう。100両にして返そう」
「おじいさんのものじゃないかもしれない」
「落ちてたんじゃないのかい?」
…とめちゃめちゃな理屈で亭主を説得しようとする女房は、最後には50両があれば店が出せる、店を出そう!と激しく夫に詰め寄る。「一生ここかい?ここに住むのかい?」「あたしはイヤだよ!」「おじいさんには“なかった”と言っておくれ!」
で、亭主も女房の剣幕に負けてしまう。
この過程を丁寧にやっていた印象。このあたりはちょっと身を乗り出す感じになった。


最後も怖いんだよねぇ。
赤ちゃんがさ、寝ている父親(亭主)の口に小さな手をかざして、寝ているかどうか確かめるの。この絵、想像すると、すごーーく怖い!


7/20(火)
らくごカフェに火曜会
19:30〜21:31@らくごカフェ
春風亭一之輔 『のめる』
三遊亭天どん 『セミの声』
仲入り
三遊亭 天どん 『すいか泥棒』
春風亭一之輔 『青菜』
一之輔さんの二席、わたしは『のめる』が良かったな。
「つまらねぇ」が口癖の建具屋の半ちゃん、大根100本詰まろうかね?作戦を見破って、八つぁんから一円をせしめる。その後で半ちゃんが八公んちを訪れて何気なく言うセリフ、「悪かったね、さっきは」。ひじょーに些細なことですが、その言い方がホントにさりげなく、ぶっきらぼうでよかった。このセリフで、半ちゃん・八五郎・ご隠居の人間関係(みんな仲良し)が分かって、ほのぼのする。ほんの僅かなこと・細部から、噺の世界がイキイキと輝きだす…というのを感じた瞬間であった。


7/22(木)
柳家三三・ナオユキふたりぽっち
19:30〜21:33@北沢タウンホール
柳家三三 『のめる』
ナオユキ 酔っぱらいの話
仲入り
ナオユキ 酔っぱらいの話2
柳家三三 『三味線栗毛』
“(声を)張らない”ふたりの会w 三三さんは、この二人だったら自分がテンション高めの役割を引き受けるしかないって言ってたけど、どのくらいのテンションの高さでいけばいいのか迷ったのかしら?迷いが落語に出たって感じw いや、もちろん悪くはなかったけど。
オープニングトークで、珍しい三三さんの私服姿を観られたのがラッキーだったかなw


7/27(火)
落語協会特選会 二つ目勉強会
18:00〜@池袋演芸場 ※途中入場&仲入りで退出

春風亭一之輔 『短命』
柳家小権太 『百川』

一之輔さんの『短命』を聴きたくて、しかし遅刻してマクラの途中で入場。約束があったので仲入りで退出。ホントに一之輔さんを聴くためだけに行ったようなものであった。『短命』、八っつぁんが若旦那達の死の真相に気づくまでがやや長め。面白かったけど、「面白くしよう!」って感じがちょっとしないでもなかった…かな?すいません、えらそうに。でも、一席聴くためだけに行ったんだから許してちょ。


7/31(土)
橘家文左衛門独演会
18:00〜20:26@六本木ホールDOZ
『のめる』
ちりとてちん
仲入り
文七元結
西麻布にある小さな会場。これからここでいろんな落語会が開かれるそうですが、その杮落としが文左衛門師匠の独演会。
文左衛門師匠のひとり会ってたいてい2時間以内に終わるのに、今回は珍しく2時間半。最後はお得意の文七。楽しい会でした。




さて反省。このブログのことなんですけどね。
ライブに行ったら、終わった後メモ代わりにTwitterに演目とほんのひとことふたことの感想をつぶっておりまして、その後、時間がある時にTwitterとかメモを見ながらmixiに自分用の備忘録をつけて、更にその後半月ごとの落語活動をここでソーカツする…というのがここしばらくの流れでありました。ところが最近、Twitterだけで済ませちゃってるんですよねぇ…と言い訳です。人は易きに流れます、ほんとに。
ただ、落語ライブに通うようになって6年目、落語熱がちょっと落ち着いたのかもしれないなと思う。前よりも、あーでもない・こーでもないと考えることが減りました。いちばん言いたいことをTwitterで言っちゃうとそれでスッキリしてしまえる自分がおります。


もっとも、これからも落語とはずっと付き合っていくつもり。
落語にハマるまで、わたしはあんまり何かに夢中になるってことがなくて、よく言えばクールにw、平たく言えば退屈に生きてきたのですが、そういう自分を変えたのが落語であった。そして、その入り口が春風亭昇太であります。だから、落語と昇太師匠は、これからも自分の中でかなり大事なものであることには変わりはありません。
ともかく。落ち着いて、そしたらやっぱり何かが変わるんだろうな。変えたいという気持ちもちょっとある、自分に。落語とどう付き合うか、ブログをどう続けるか、ちょっと考えないとなぁと思っています。


ううむ、マジメなことを書いてしまった。すいません。次回またお会いしましょー(いちおー次回はあるつもりだ)。

6月後半の落語



6月後半は落語の他に、落語家の出演するお芝居を2本観ました。で、今回はそのお芝居について書こうと思います。たまには落語以外の話もいいかなと思いましてw その前に、いつものように行った落語会と聴いた演目をどーぞ。


6/15(火)
オリンパスモビー寄席 雲助・白酒親子会
18:45〜21:06@内幸町ホール
春風亭ぽっぽ『動物園』
桃月庵白酒『壺算』
五街道 雲助『つづら』
仲入り
五街道 雲助『幇間腹
桃月庵 白酒『抜け雀』


6/16(水)
巣鴨四丁目落語会 夜の部
18:30〜21:00@スタジオFOUR
志の彦『真田小僧
志の春『出来心』
志の輔『こぶとり爺さん』
 〃  『たけのこ』
仲入り
松永鉄六 三味線&長唄
志の輔『大名房五郎』


6/19(土)
リビング名人会 柳家小三治独演会
13:30〜15:45@日経ホール
燕路『粗忽の釘
小三治『小言念仏』
仲入り
小三治『青菜』


三遊亭天どん独演会 第10回僕のらくご道
18:35〜21:23@なかの芸能小劇場
天どん『かぼちゃ屋
〃 タイトル不明(新作。贔屓のB級アイドルの結婚にショックをうけて気絶した男、気づいたら一週間前にタイムスリップしていた。アイドルの結婚を阻止しようとアレコレ画策するが…というお話)
白鳥『最後のフライト』
仲入り
天どん『唐茄子屋政談』


6/21(月)
鈴本特撰会 鈴本さえずりの会
18:25〜21:25@鈴本演芸場
開口一番 春風亭朝呂久『一目あがり』
柳家喬の字『黄金の大黒』
林家たけ平明烏
ゲスト 柳家喬太郎『ハンバーグができるまで』
仲入り
三遊亭司『庖丁』


6/28(月)
鈴本特選会 第56回三三・左龍の会
18:30〜21:25@鈴本演芸場
春風亭朝呂久『出来心』
鈴々舎風車『代書屋』
柳亭左龍大山詣り
仲入り
三遊亭小円歌 三味線漫談 &踊り かっぽれ
柳家三三三枚起請


6/29(火)
第31回 読売GINZA落語会
18:30〜21:25@ル・テアトル銀座
春風亭一之輔『くしゃみ講釈』
橘家文左衛門『青菜』
笑福亭鶴光掛川の宿』
仲入り
桃月庵白酒臆病源兵衛
立川志の輔『江戸の夢』


6/30(水)
池袋演芸場 6月下席昼の部
14:00〜17:20@池袋演芸場
春風亭ぽっぽ『芋俵』
春風亭 一左『たらちね』
春風亭柳朝『荒茶』
柳亭燕路『トンビの夫婦』
松旭斎美智・美登 奇術 &踊り 奴さん
橘家蔵之助『ぜんざい公社』
柳家喜多八『舟徳』
仲入り
三遊亭白鳥『ナースコール』
橘家円太郎『鼓ケ滝』
昭和のいる・こいる 漫才
橘家文左衛門『青菜』


さて、ここからお芝居の話。
観たのは、昇太さんの出演した「熱海五郎一座 『男と女の浮ついた遺伝子』」と、志らくさん率いる下町ダニーローズの「演劇らくご 『疝気の虫』」です。


6/23(水)
熱海五郎一座「男と女の浮ついた遺伝子」
18:30開演 @サンシャイン劇場


お芝居好きの昇太さんは毎年この時期はお芝居に出演していて、今年は熱海五郎一座に出演。今回は昇太さんがほぼ主役だったので、なんとしても観なければ!ということで行ってきたのであります。


いわしの頭を信心する怪しいカルト教団が人類を滅ぼす病原菌を開発する。しかし、そのまま病原菌をばら撒くと教団の人間まで死んでしまう。菌に対抗するには“世界一浮いた男”の遺伝子が必要。遺伝子採取のターゲットとして白羽の矢を立てられたのが、昇太さん演ずるダメ会社員・春風昇太郎。冴えない・モテない・空気読めない、周りから浮きまくった春風クンの遺伝子を採取するために、教団は美人の教団員(水野真紀)を彼に近づける。彼女は春風クンを篭絡しようとするが…というお話。


昇太さんの出番が多くて嬉しい限りであった。昇太さん演じる会社員・春風クンは、まるで昇太さんの落語の登場人物のよう。高座を観ているような気持ちだったよ。昇太さんの魅力が全開であった。最後に昇太さんがラブソングを熱唱する場面もあって、ここが見どころだ!w あんなに唄う昇太を見たのは「オレまつり」以来でしたよ。昇太さんが好きなヒトなら間違いなく楽しめるお芝居だと思います。
ただし、昇太ファンでもなくSETファンでもなく東京の軽演劇にも興味ないという落語ファンには…う〜ん微妙、力強くはお薦めできませんw


6/25(金)
下町ダニーローズ第12回公演 「演劇らくご『疝気の虫』」
15:00開演 @シアターグリーン BIG TREE THEATER


今回のお芝居は落語「疝気の虫」の後日談。
近江屋の奥さんのお腹の中に入って爆ぜちゃった虫達(その事件は後に虫達の間で「近江屋の惨劇」として語り継がれるw)。ごく一部の虫は銀杏のお腹に逃げ込んで生き残る。やがて銀杏は医師としてアフリカに渡り、お腹の中の虫達は蕎麦のないアフリカで銀杏と共存することを余儀なくされる。
銀杏の体内の虫(志らく)は、蕎麦を得るために、銀杏に疝気を病むアフリカ人を密告するとゆースパイ活動(これはアフリカ生まれの疝気の虫を死に至らしめる裏切り行為なのだw)を行って、妻(岩間沙織)と妹(森口博子)と使用人(ミッキー・カーチス)の生活を支えている。そこへ日本から近江屋さんの体に入って、かつての仲間の虫達(モロ師岡北原佐和子)がやってくる。更に癌(竹本孝之)やらアフリカこおろぎ(柳亭市馬)も登場して、いろんな出来事が起きます。


志らくさんたちは虫の衣装を着てて、それは子供番組の着ぐるみみたい。また、虫の夫婦(志らく岩間沙織)の夫婦愛の描き方はやや直球。だから児童劇みたいな観もあった。


お芝居の前に志らく師が落語『疝気の虫』をやるのだけど、これも微妙であった。
もちろん、このお芝居での『疝気の虫』は、その後のお芝居のための仕込み的役割の落語なので(だから、普段の『疝気の虫』にはないエピソードが入っていたり、虫のキャラクターを前面に出していたりする)、普通の落語と違うのは当然で、志らく師もそのつもりでやっていると思います。でも、なんか“落語”としてはあんまり魅力的じゃないのだ。志らくさんの『疝気の虫』はすごーくいいから、それと比べると「アレ?…」ってくらい。
不思議だなぁと思いました。
落語って、噺家のほんの少しの気の持ちようとか構えの違いで、こんなにも印象が変わるものなのだなぁと。


役者の中でいいなと思ったのはモロ師岡さんです。
それから、アフリカ人の酋長を演じていた松尾貴史さんが面白かった。iPadをつかってモノマネのレパートリーを披露(iPadをイスに置いて、モノマネする人の名前を次々にめくっていくの)。久しぶりに藤本義一とか広川太一郎とか小池朝雄を見ましたよw 懐かしかった。
あと、市馬師はただひたすら唄うだけだ。でも、市馬師の唄のほうがずっとホンモノであった、お芝居よりも。


自分はお芝居を落語ほどは観ていないから自分の見方に自信がないけど、観客として自分の気持ちを正直に言うと、このお芝居は志らくさんの落語ほどは面白くなかった。


でも、こんなに文句いいながら、わたしは去年もその前も志らくさんのお芝居に行っています。これからも行くと思う。
黙って観とけ、ファンなら応援しろ、誉めろ!と怒られそうだ、志らく師に。でも、こんな風にいわずにおれないのは、志らくさんのお芝居を観るときのわたしは、落語『権助提灯』の奥さんのような気持ちだからです。“芝居”というお妾さんのところに通う夫をやさしく送り出す、“できた妻”を装う正妻…とでも申しましょうかw
志らくさんはたぶんあの女優陣と一緒にお芝居したいだけなんだと思うな。だから楽しいし満足してるんだろうな、志らくさん的には。
でも、落語ファンのことも忘れないでください。早くあたしんとこ(落語)に戻ってきてくれるのを心待ちにしているんだよ、おまいさんw