4月前半の落語



その前に先月31日のメモ。
3/31(水)
末廣亭余一会 第十九回三派連合落語サミット
11:56〜16:25
笑福亭羽光『時うどん』
瀧川鯉朝『夏泥』
立川雲水『ん廻し』
マグナム小林 バイオリン漫談
林家染雀『音曲風呂』&踊り
立川談幸『片棒』
ナイツ 漫才
桂竹丸『石田光成』
立川志らく『疝気の虫』
仲入り
青年団 コント
林家彦いち『かけ声指南』
立川談笑『イラサリマケ』
ボンボンブラザーズ 曲芸
春風亭昇太『人生が二度あれば』
末廣亭で落語をやる志らくさんが観たくて、この日は一日休みにして早くから並んだのであります。志らくさん、今月のピンのパンフレットに、この高座を務めた後、一気に白髪が増えたくらい疲労困憊したと書いてらしたが、この日の『疝気の虫』は今まで聞いた中で一番良かった。


志らくさんの他は、もちろん昇太さん(すいません、わたし昇太ファンです。って、謝らなくてもいいか別に)、雲水さんと染雀さんが良かったな。
雲水さんと染雀さんは初めて聴いた。雲水さんはいい塩梅に毒があって面白かった。染雀さんは「こんなに落語が上手な人だったのか」と思った。上方の落語家は踊りや音曲も達者な人が多いと聞きますが、染雀さんも実力派なのですね。お見逸れしました、姉キンのあの姿しか知らなかったものでw


みなと毎月落語会 赤坂名人会 柳家小三治独演会
19:00〜20:57@赤坂区民センター
柳亭燕路『たらちね』
柳家小三治『猫の皿』
仲入り
柳家小三治『品川心中(上)』
小三治師匠の『品川心中』を初めて聴けたのが良かった。


ここから4月前半の落語活動。
4/4(日)
きぼーる寄席
15:00〜17:13@きぼーる(千葉市)13F
開口一番 立川らく兵『道具屋』
春風亭一之輔『鈴が森』
  〃     『あくび指南』
仲入り
立川志らく中村仲蔵
良い会でした。二人とも自分の十八番をきっちりやってくれたし、仲入り前に一之輔さんが滑稽噺を二席、仲入り後に志らくさんが長講を一席という流れも良かった。


一之輔さん、『鈴が森』も『あくび指南』もとても面白かった。
『鈴が森』、久しぶりに聞いたけど、やっぱりいいなぁ。
マヌケな泥棒の弟子が「あっしだってまんざらバカじゃない」っていう度に、親分が間髪をいれずに「バカなんだよっ!」って言うんだけど、その間がどんどん短くなってく。「あっしだってまんざら…」「バカなんだよっ!」、「あっし…」「バカっ!」という具合に。こういうやりとりの“間”が一之輔さんはとても上手くて可笑しい。


『鈴が森』で好きなところは、バカなんだか利口なんだかわかんない弟子が「パードン?」っていうのと、「うちで本読んでるのが好き」ってところ。読んでる本はその都度違うみたいで、前聴いた時は漱石の『こころ』だったけど、今回はカツマーの『断る力』だった。弟子、何に目覚めたんだろ?w


志らくさんの『中村仲蔵』は、またちょこっと変わってるところがあった。
舞台上の仲蔵は、定九郎の斬新な演出に声もない客席に「あぁ、しくじった!」とガックリしますが、今回は「ひょっとしたら、みんな感心してるんじゃないか?」と調子づいたりします。
北海道公演でスタッフの人に「稀代の役者である仲蔵がどうして客の反応も分からないんでしょうか」と質問されて、こんな工夫をしてみたそうです。


4/5(月)
志らくのピン
19:00〜21:15@内幸町ホール
開口一番 らく次『引越しの夢』
志らく長屋の花見
志らく『付き馬』
仲入り
志らく『松山鏡』
今月のピンはとっても楽しかった。一席目のマクラ(「近頃、微妙に狂った人たちが多くて怖い」って話で、餃子の王将で居合わせたヘンな客のことを面白おかしく話してくれました)から爆笑、落語も三席とも良くて、特に『松山鏡』がサイコーでした。


『松山鏡』は、むかーし確か寄席で聞いた覚えがあるのですが、たいして面白い噺じゃなかったという記憶でした。でも、志らく師の『松山鏡』はすっごく面白かった。『疝気の虫』以来の衝撃(笑撃)。これがあるからピンはやめられません。


今回『松山鏡』をやったのは、先日、北海道公演に行く飛行機の中で若手の落語家の『松山鏡』を聞いたことがきっかけだったそうです。悪くはないけどごくフツーの『松山鏡』で、「フツウにやるなら文楽師匠がやったほうがいいな」とイライラしてきて「オレだったらこうするな」と考え始めちゃったんだって。志らくさんらしいですねw 気がついたら北海道の街を歩きながら『松山鏡』をさらってて、「ブツブツ喋ってたら、できてしまいました」。
トリにやるような噺じゃないけど「今、自分がやってワクワクするから」、この日最後にやることにしたそうです。


親孝行の庄助さんにお奉行さまがご褒美をくださるということになって、何が欲しいか?と訊かれた庄助さんは死んだ父親に会わせてほしいと願う。奉行が一計を案じて鏡を与え、その鏡でちょっとした騒動が起きるとゆーのがフツウの『松山鏡』のようですが、志らく師の『松山鏡』では、奉行はすんなり鏡をやりませんw

 
奉行は最初、家来の与太夫に、庄助の父親に化けて庄助と共にしばらく暮らせと命じる。与太夫は嫌々百姓の格好になって庄助の前に現れるが、もちろん庄助は易々とは騙されない。で、今度は顔にお面のように鏡をつけて庄助の前に出ると、庄助さんは「おとっつぁまー!」と抱きついて大喜び。奉行は、父親は死んだので今は他人の体に父親を降ろしている、これから桐の箱に父親を入れるから、それを持ち帰るようにと言って、鏡を箱に収めて庄助に渡す。


奉行が大マジメに祈祷師のフリをしてヘンなまじないの文句をとなえたり、「父親になれ!」と言われた与太夫が「それじゃわたしはこの先一生、あの男のうちで暮らすのですか?」と嘆きながらも一生懸命父親のフリをしたり、“死んだ父親に会いたい”と願う親孝行の庄助のために、周りの人間が次第に必死になってオカシくなってくっていうのが面白かった。


それと、志らく師は、庄助がなぜそれほどまでに死んだ父親に会いたいのか?というのを、エピソードを加えて説明していた。なので、庄助はただ愚かで滑稽な田舎者ではなく、愛しさを覚えるほどの純朴な男って感じもして、この落語をほのぼのとした滑稽噺にしていました。


女房からは、葛篭の中に女を隠している、父親がいるだなんてウソをついていると怒られ、尼さんには「謝っちまえ」と勧められ、庄助は「ウソでねぇ!」「おとっつぁまに会いてぇんだ!」と“びえーん、びえーん”と泣きながら駆け去ってしまう。“びえーん、びえーん”、可愛かったなぁw


4/6(火)
桂文珍国立劇場10日連続独演会 初日
15:00〜18:00@国立劇場大劇場
開口一番 桂楽珍『手水廻し』
桂文珍『蔵丁稚』
柳家花緑権助提灯』
仲入り
内海英華 女道楽※俗曲。小菊姐さんみたいな女芸人を、関西では「女道楽」って言うそうです。へぇ〜
桂文珍『らくだ』(上)
ネットで3階席のチケットが2,000円で放出されてて、衝動的に引き取ってしまった。文珍師はちゃんと聴いたことがなかったので、お試し価格としてちょうどいいかなと思って。
文珍師匠の落語はフツーに上手かった。花緑師も聴けたし、英華師匠の三味線も見事だったし、とってもお得に楽しめたよ。チケット譲ってくれた方、ありがとう。


昇太ムードデラックス
19:00〜21:04@本多劇場
昇太 オープニングトーク
遊雀粗忽長屋
昇太『天狗裁き
昇太『花粉寿司』
仲入り
昇太『花見の仇討ち』
オープニングトーク
昇太さん、友だちに「一緒に病院行かない?」って誘われてw、いろいろ検査したんだそーです。そしたら「血管年齢90歳」「動脈硬化でいつ死んでもおかしくない」って言われてしまった(!)。若く見えるけど、体はまっとうにオッサンだったんだね。「だから、僕はいつ死ぬか分かりません」「皆さんだっていつ死ぬか分かりませんよ!」
そうですね。いつ死んでもいいように、これからも好きなことして、時間とオサイフのゆるす限り落語に行こうと思いました。


天狗裁き』はネタおろし。昇太さんは「寄席やこういうところでやるのは危険なネタ」って言ってたけど、ホントにその通りで、つまんないヒトがやると途中で飽きます、この噺は。でも、昇太さんはさすがに面白かった。男の夢を知りたがる嫁さん、長屋の隣の男(アニキ)、大家さん、お奉行様、天狗の“ムキになる”様子がそれぞれ可愛くて可笑しい。
大家さんなんか、教えてくれないって泣いちゃうんだが、泣きかたが『人生が二度あれば』のお爺さんみたいで可笑しかったわ。


『花粉寿司』『花見の仇討ち』は久しぶりに聴きました。『花粉寿司』の激しい動きは血管に危険なので、これもだんだん見られなくなるかもしれませんw
『花見の仇討ち』は「ちゃりん・ちゃりん、やぁー」が実に可愛かったよ。


ところで、フォロアーの方から「昇太ファンは不思議なほどライブのネタバレをしないが、そういう空気は昇太ファン独特のものじゃないか?」と指摘された。そうなんですかね?
いわれて見れば、たしかにわたしも、昇太さんのライブの演目は事前に知りたくないと思ってるし、演目は最終日まではつぶやかないようにしてるけど。


談春師や喬太郎師だったら“何をやったか?”ってことより“(その落語を)どうやったか?”ってところに関心がありますね、だからファンはネタバレに寛容なのかな?
でも、昇太さんの独演会(特にムードデラックス、オレスタイル)の場合は“今回は何をやってくれるか?”っていうのが、ファンにとってのお楽しみなのですよね。昇太さんもオープニングトークで「今日は春っぽい落語を三席やりますよ」なんて言うし、それを聞いて客席で「春っぽい落語って何かな?」「次はなんだろ?」って予想するのが楽しい。
昇太さんのライブって落語だけじゃなくて、オープニングトークも含めた全部の流れが楽しいですよね。だからお客さんは、まだ見てない人に黙っててあげようって心理が強く働くんじゃないですかね?


4/10(土)
黒門亭2部
15:00〜16:40@落語協会2F
開口一番 柳家花いち『鮑熨斗』
三升家小勝『蔵前駕篭』
三遊亭金八『汲みたて』&踊り 夜桜
桃月庵白酒『宿屋の仇討ち』
この日はいいお天気で、不忍池でしばし今年最後の桜を楽しんだ後、白酒師を聴きに出かけました。
『宿屋の仇討ち』。今回は名前で空耳ギャグが展開された。伊八は、イタチ→お鉢→田町→イサキと間違えられ続け、最後は佐々木になりましたw


深夜寄席
21:30〜23:00@末廣亭
柳家さん若『猫の皿』
桂三木男『紙入れ』
柳家初花長屋の花見
鈴々舎わか馬『盃の殿様』
たまには普段あんまり聴かない二つ目の人も聴いておかないとね…と久しぶりに深夜寄席に行きました。


久々に初花さんを聴いた。実は初花さんはちょっと苦手だった。初花さんてちょっとふてぶてしい感じがして、それが面白さに繋がってない気がした。彼の高座や言動はなんだかひねくれてて、観ててあんまり気持ちよくなかった。でも、この日はいやな感じがしなくて、思わず笑ってしまったところもあった。落語もゆったり聞いていられた。
人は変わるものだなぁと思いました(わたしが変わったのか、初花さんが変わったのかはわかりませんがw)。こういうことがあるので、苦手な人も時々は聴いてみたほうがいいですね。


わか馬さんはさすがに良かった。他の三人とは比べ物にならないくらい上手いし楽しい。上手くて可笑しさに品があって爽やかで、しみじみ「あぁ、落語を聴いてるなぁ」という幸せな気持ちになりました。


4/12(月)
鈴本演芸場 四月中席夜の部
17:20〜20:45
開口一番 春風亭一力『たらちね』
林家きく麿金明竹 博多弁ver.』
林家たい平粗忽長屋
翁家和楽社中 太神楽曲芸
柳家権太楼 『家見舞い』
すず風にゃん子・金魚 漫才
橘家圓十郎『紙入れ』
橘家文左衛門『天災』
仲入り
林家正楽 紙切り御柱・母乳育ち・バイオリンを弾く少女)
入船亭扇辰『権兵衛狸』
ロケット団 漫才
春風亭百栄お血脈
昨年、三月下席で鈴本初主任をとった百栄師匠。今年も主任をとれてよかったね。というわけで応援に行きました。
この日は雨の月曜日、しかもとっても寒かったせいかお客さんが少なかった。
まばらなお客を相手に頑張ってくれた出演者の皆さん、どうもありがとう。でも、我々も頑張ったぜ。笑ってるのに、周りから大きな笑い声が聞こえないって寂しいっス。


百栄師匠の『お血脈』は久しぶり。駅のホームの階段、くだりの矢印登った人、本屋の平積み、上から二冊目とった人、なんも悪いことしてない人々が次々に地獄に送られてしまいますw


4/13(火)
道玄寄席
19:00〜20:42@渋谷カルチャーキューブ
桃月庵白酒『馬の田楽』
五街道弥助『夢金』
仲入り
桃月庵白酒『火焔太鼓』
この日は紀伊國屋ホールで談志家元復活の立川流落語会があった。抽選に外れたわたしがとぼとぼと向かったのがこの会。
開場時間ちょっと過ぎに到着したら、ほぼ満席でした。開演後に遅れてやってきた人はしばらく立ち見で、主催者からのお膝送りの要請で、お客さんはズルズルとイスを動かし空間を詰め、そこに楽屋のイスやら折りたたみイスを並べてなんとか全員座れました。70席用意していたそうですが、最終的には来場者は80人を越えたらしい。
秘密クラブみたいだったお得で楽しいこの落語会も、ついにこんな状況になってしまいましたよ。白酒人気はいよいよ盛んであります。
こんなになっても予約制にする予定は今のところないそうなので、次回からは開場の前に来て並ばないといけないかなぁ。どこに並ぶんだろ?


白酒師の二席は、自分は初めて聴いたのですが、とっても面白かったです。
『火焔太鼓』の甚兵衛さんとおかみさんは、白酒『替り目』の夫婦みたいな感じっていったらいいかな?甚兵衛さんはおかみさんの言うことに逆らおうとするんだけど、体は素直に言われる通りに動いちゃうっていうのが可笑しい。
空耳ギャグもちゃんとありますよ。
甚兵衛さん、殿様の家来に「(太鼓を)いくらなら手放す?」と尋ねられ、「え?いくらなめろ手羽先?」w
300両を渡されて「しかと確かめろ」と命じられると、「鹿とたわむれろ?」ww 
この強引さが好きだ!


300両をおかみさんに見せるところでは、おかみさんはちゃんと柱につかまりますよ。古今亭だからねw