12月後半の落語



ホントはまだ明日落語の予定があるのですが、とりあえず本日(30日)現在でいったんシメることにしました(大晦日の夜はブログとか書いてないで、粛々と年越ししたいんです)。ともかく。今月後半はこーゆーところに行ってました。


12/18(金)
白酒ひとり
19:00〜21:07@内幸町ホール
時そば
アンケートにお答えします
禁酒番屋
仲入り
『富久』
開演前BGMはマービン・ゲイ。白酒師の中では、モータウンミュージックは年末のイメージなんだそーだ(『モータウンクリスマス』とかあの手のクリスマスコンサートアルバムの印象が強いらしい)。ネタのほうも年末らしい三席。
この日の白酒師は“身もだえ”とか“表情”とか“ろれつの回らないセリフ”がやたら可笑しかった。


時そば 二番目のダメそば屋(屋号は“トラ屋”。思いっきりトラれちゃうw)は登場時点で既に可笑しい。男の「そば屋!そば屋!…そば屋、そば屋、そば屋ーー!!」って連呼を完全にスルー、「そば〜うぅぅ〜」って死にそうな声で男の目の前を通り過ぎていく。 このそば屋、全然はやってなくて「さっぱりダメなんですよ、3日前から何も食べてなくて、腹空かした子供が『父ちゃん、ひもじいよ』って…相談のってもらえませんか?」と男に身の上相談。男はそば屋を励まして「…陰気になっちゃったな」。
ようやく出てきたそばは、どこからか汁が漏れてる“はてなの丼”に入ってる。つゆを一口すすって、「冷たいっ!コレッ!」と冷たさと気持ち悪さに身もだえる男・・・
高座で身をくねらせる白酒師の姿に、すごく笑っちゃった。


禁酒番屋 お酒を飲んだ役人の「水カステラ〜〜」とニンマリつぶやくカオがたまらない。この役人がどんどん酔っていって、最後は言ってることがまったくわかんなくなる、モーレツにロレツまわってなくて、それが凄く可笑しかった。
白酒師のこの噺には好きなところがいっぱいある。「どっこいしょ!」を聞きとがめられた酒屋が「いえ、“ドイツの将校”って言ったんです」(笑)。「ますます怪しい!」と止められるが、なおも「ドイツから輸入されたゲロルシュタイナーって水カステラ!」 と頑張る酒屋。
それから、門番。門番自身は何も言わないのだけど、役人の「そのほうは後じゃ!」「気がきくな」「門番、湯飲みは早いわ!」ってセリフで、ご相伴に預かろうといそいそと動く門番が見えるよう。


『富久』は“志ん朝『富久』アッサリ版”って感じ。犬に吠えつかれたり箪笥かついだりっていうくすぐりがなくて、短め。
久蔵が旦那宅に駆けつけて、佐吉さんと一緒に見舞い客の受付をしながら酔っていくところは面白くて、あそこは白酒師のオリジナルだろうか。
久蔵は「これは佐吉さんの分」って必ず二杯ずつ酒を注ぎ、「え?飲まないの?」「じゃ飲んじゃうよ」と一人で二杯とも飲んで酔っ払っていく。佐吉さんのセリフはなくて、この場面は『禁酒番屋』の役人と門番みたい、憮然としている佐吉さんが見える。
久蔵が酔うにつれ、見舞い客への対応がぞんざいになって、最初は「有難うございます」と丁寧だったのが、「あ、だぁ〜」って何言ってるのかわかんなくなっていく。大神宮様のお宮が無事だとわかると、興奮して「大神宮さまのお宮が、やうやうやう〜」って、これまた言ってるコトがわかんない。こういうところが面白かった。


12/20(日)
柳家さん喬一門会 師走なら手をたたこう
13:00〜16:02@よみうりホール
さん喬一門、仮装姿で登場&ご挨拶
くじ引きで二つ目のネタを決める
喬之助『宮戸川
※以下、二つ目の高座は一席5分以内
さん弥『子別れ』
喬之進『井戸の茶碗
小太郎『隣の空き地』(舎人のアキんちにかっこいーカーで来たんだって、ペ!)
喬四郎『たちきり』
さん若『寝床』
喬の字『幾代餅』
喬太郎『母恋くらげ』
仲入り
左龍『棒鱈』
喬太郎「こうすれば5分でできる『芝浜』」
さん喬『福禄寿』
大喜利
ブルーライト横浜』のメロディで『芝浜』を唄う喬太郎師の女装姿(叶姉妹みたいな背中ぱっくり&お尻までスリットの入った青いドレスをお召しになっていた)が強烈に焼きついておりますがw、そーゆーんではなく、落語として面白かったのは“与えられたネタを一席5分でやる”という二つ目の弟子達の高座(小太郎さんだけは小噺を5分に伸ばして演るとゆー課題を与えられたが)。
良かったのはさん弥さん、喬之進さん。
さん弥さんはもともと口調は良いので、粗筋みたいな『子別れ』でも聴ける(いつもこういう風にやったらどうでしょう?と思いました、正直)。喬之進さんは「これこれこういうワケで〜」というコトバで込み入った事情説明を省略し、また、これを何度も繰り返したのが笑いを誘っていた。本人がホントに焦っていたのも面白くって、高木が仏像を盥で洗うところを「樽…じゃない、え〜と、とにかく水に浸したんでございます!」でしのいだのには笑った。
二人とも、サゲまであともう少し!というところでタイムアウトになってしまったが、面白かった。 編集センスが問われる企画だなぁと思った。


第129回志らく一門会
18:30〜20:40@上野広小路亭
らく兵『幇間腹
らく里『野晒し』
こしら『看板の一』
仲入り
志ら乃『強情灸』
志らく『芝浜』
江戸の風は吹かないが、Edyの風は吹いているこしらさん、期待通り面白かったわ。例によって「江戸っ子は皐月の鯉の吹流し」で落語に入ろうとして「あ!ひょっとしてこれが江戸の風かもしれませんよ!」ちげーよw


とりたてて大きく変えているわけでなく、普通の『看板のピン』なんだが、親分のマネをする男の可笑しさが、思いも寄らないところから飛んでくる。
親分が「年をとったんで目が遠くなる、耳が遠くなる」と嘆いてみせる、すると男は「“目が遠くなる、耳が遠くなる”だって、かっこいい〜!」「お前の憧れどころがわからねーよ!」
「たった今、親分に博打を止められたじゃねぇか」「オレは博打をやろうっていうんじゃないよ!サギをやろうっていうんだよ!」
「ナニ?胴をとってくれだって?」「ナニ?胴を?」と何度も繰り返し、「わかったよ!バクチやりたいんだろ!」としぶしぶ言われると…「おまえたちはオレにバクチをやらせようっていうのか?!」「ツンデレかっ!」
こしらさんの『看板のピン』では、わざと壷の外にサイコロを置いているのを「オイ!ちゃんとやれよ!外に出てるよ」と皆が何度もハッキリ指摘する。
それなのに、男はその指摘を無視してピンにはらせて「勝負は壷皿の中だって言っただろう?」「言ってねぇよ!」
更に「外に出てるのに、誰も出てると言わない了見がよくねぇ」「みんな言ったさ!」・・・


「お前の憧れどころがわからねーよ!」「ツンデレかっ!」「言ってねぇよ!」「みんな言ったさ!」という突っ込みの畳み掛け方・間が絶妙で、それに笑わされちゃう。志ら乃さんも頑張ってるが、こしらさんだって相当頑張ってると思うなぁ。こしらさんも早く真打になれるといいね。


志らく師の『芝浜』は、しばらく聞かない間に、また変わっていた。前から既に変わっていた箇所もあるかもしれないけど、わたしが前回聞いた時にはなかったところ、変わったなと感じた箇所はこんなところかな?

○芝の浜の波うち際にあった革の財布を、勝は“うみうし”と間違える。家に戻って女房に説明する時「うみうしかと思ったんだよ」「え?海に牛がいるの?」「違うよ!うみうしだよ、うみうしっていうのは…うみうしなんかどーでもいいんだよ!」〜「え?サイフにうみうしが入ってたの?」「違うよ!うみうしっていうのは…そんなことはどーでもいいんだよ!」
○勝五郎の、拾った財布を届けない理屈。
「じゃぁ、お前は道端にかんざし落としたらどうする?」「一生懸命探す」「海に落としたら?」「諦める」「そうだろ?!海に落としたら皆諦めるんだよ。オレ達がつかわなかったら、天下の通用金がムダになっちまう」
○女房は、下げ渡された財布を大晦日の晩までもてあまし続ける。大晦日に畳替えをしたのは、縁の下に埋めてしまおうとしたから。でも、畳の下にいれるタイミングをつかめなかった。で、海へ捨ててしまおうと考え、銭湯から帰って来た勝五郎に「こんど河岸へつれてってよ」と頼む
○「お前、オレを騙していたな!」と横面をはられた女房は反論する。「女房が亭主を騙すのがよくないことなら、魚屋が魚屋やめるんだってよくないもん!」(このセリフ、可愛い)
○勝五郎が酒を我慢していると感じた女房は、夫に酒を飲んで欲しい一心で、財布の一件を打ち明けることにした。「あたしが騙したって分かったら、おまえさん、怒ってヤケ酒飲むだろうと思って」
○勝五郎に「カオを出せ!」と言われた女房は、殴られるのを覚悟で顔を上げる。すると、勝五郎、女房の頭をそっと撫で…「よく夢にしてくれたなぁ」

最後の場面、勝五郎がそっと女房の頭を撫でるところがとても良かった。


12/23(水)
天どんくんと一之輔くん
18:30〜21:00@なかの芸能小劇場
ふたりであいさつ
開口一番 春風亭朝呂久『一目あがり』
三遊亭天どん『レンタルビデオの女』(仮)
春風亭一之輔『クリスマスの夜に』(天どん作『サンタ泥』)
仲入り
春風亭一之輔『ふぐ鍋』
三遊亭天どん『僕とサンタクロース』


仲入り前に一之輔さんがやったのは天どんさんの新作。一之輔さんが新作をやるのを観るのは初めて。 新作をやってもイケるのね。
主人公は貧乏な二つ目の落語家・たん丈w、忍び込んだ家のカギはダイヤル式で番号は「5302(こさんじ)」、着流しの敏腕人情刑事ヤマさん(その名は「山田喜三郎」だ)…といった一之輔さんオリジナルのくすぐりが面白かった。ケーキを食べる仕草で苦戦していた。羊羹食べてるようにしか見えなかったねw


天どんさんは新作二席。最後の新作は10月の勉強会でも聞いた。もっともーっと短くしたほうがいい、と思う。


12/24(木)
鈴本演芸場年末特別興行 お笑い師走会 昼の部
13:00〜16:00
開口一番 三遊亭歌る美『たらちね』
ホームラン 漫才
柳亭燕路幇間腹
桃月庵白酒『宗論』
林家二楽 紙切り
春風亭百栄『マザコン調べ』
仲入り
ペペ桜井 ギター漫談
柳家喜多八『だくだく』
三増紋之助 曲独楽
柳家喬太郎『ハワイの雪』


燕路師匠、白酒師匠、百栄師匠、喜多八師匠、喬太郎師匠、みーんな面白かった!一番爆笑したのは白酒師の『宗論』。ある意味クリスマスイブに相応しいw強烈な一席であった。


父親「どこへ行ってきたんだ!」
幸太郎「鈴本の向い、サン・ピエトロ大聖堂上野支部です」
父親「あそこはアブアブだ!」
「唄いましょう!クリスマスソング『ママがブッダにキスをした』」「イスラム東本願寺派」・・・
白酒師の『宗論』はいつ聞いてもホンっとに可笑しいよ。


12/26(土)
第130回志らく一門会特別篇 志らく独演会
18:30〜21:20@六本木不動院
らく次 『桑名舟』
志らく 『雨ン中のらくだ』トークバージョン
仲入り
志らく 『ぞろぞろ』
志らく シネマ落語『素晴らしき哉、人生』(人情医者)


今年最後の志らく師匠の独演会。
らく次さんが高座を降りて、上手のほうから舞台にあがってくる人の姿を目の隅で確認した。誰?とよく見たら、私服の志らく師匠だった。まぁ珍しい!志らく師の私服姿をまじまじと見たのは初めてでした。ご自分で仰るようにオーラが大分減ってます(笑)、でも着物のときより若く見える。メガネをかけていらした。落語じゃないから客席がよく見えても気にならないんだね。


『雨ン中のらくだ』トークバージョン  一時間余り、立ったままで25年の落語家人生を話し続けた。“金馬師匠に人生で二度ガックリ”って話が、志らく師匠らしくて可笑しかった。


『ぞろぞろ』〜シネマ落語『素晴らしき哉、人生』(人情医者) 主人公は人情に篤い貧しい医者。主人公に関わる人々に、『ぞろぞろ』の神様・荒物屋・床屋、そして死神が登場する。


『ぞろぞろ』の神様の社を、医者・善太郎の女房が訪れる。善太郎は、悪徳医者・藪井竹庵の妬みをかって借金を負わされてしまった。そんな夫を助けたい一心で、女房はお百度を踏みにきたのだ。神様は女房の頼みをききいれ、携帯で呼びつけた死神に“神様にしてやる”という交換条件で善太郎を救うことを命じる。死神は善太郎を励ますが、善太郎はすっかり生きる自信を失って「生まれてこなければよかった」と嘆く。そんな善太郎を、死神は“善太郎が生まれてこなかった人生”に連れて行く・・・


映画『素晴らしき哉、人生』では、主人公に“彼が生まれてこなかった人生”を見せてまわるのは“天使”ですが、それを“死神”にしたのがオツだねw
最後に心善き人が救われる、心温まる落語。
7年ぶりにやったそうなので、いろいろ変わってるのかもしれません。


自分のギャグの多いイリュージョン落語には「江戸の風」が吹かないが、いずれイリュージョン落語にも風を吹かせたい…ということをおっしゃっていた。
最近、志らく師がよく口にする「江戸の風」。よく分からなくて、最近ひとしきりそれを考えていたのですが、山口瞳のこんなコトバが目に留まりました。「粋について私はこう考えている。どんな事態になってもそれを面白がってしまうこと。そういう心の持ち方」。
そういう心でやる落語に“江戸の風”は吹くのかしら?と思いました。




※この後、今年の落語のソーカツを書こうと思います。
明日中にはアップしたいです(涙)