いまさら10月の落語



先月からしばらく忙しい日が続いていて、キャンセルしたライブがいくつもありました。市馬&喬太郎、白酒&一之輔の三田落語会、真一文字の会も泣く泣く見送ったのだったわ(泣)。そんなわけで、先月は落語にあんまり行かなかったなぁ…という気がしていたのですが、ちゃんと数えてみたら、それでも10回は行ってた。
いまさらの観はありますが、いちおう書いておこうと思いまして、先月の落語活動報告。


10/3(土) 春風亭昇太独演会
19:00〜21:10@三鷹市芸術文化センター星のホール
林家彦いち『わくわく葬儀屋』
春風亭昇太ちりとてちん
ナマ着替え
春風亭昇太『力士の春』
仲入り
春風亭昇太『寝床』


10/5(月) うらいちもんじの会
20:00〜21:40くらい@らくごカフェ
茶飲み話〜『宗論』
仲入り
質問に答えます!コーナー


10/6(火) 鈴本演芸場十月上席夜の部
17:20〜21:00
林家まめ平『子誉め』
柳家太夫権助芝居』
翁家和楽社中 太神楽曲芸
桃月庵白酒『替り目』
柳家はん治『ろくろ首』
大瀬ゆめじ・うたじ 漫才
宝井琴柳『笹野権三郎 海賊退治』
林家正雀『紙屑屋』
仲入り
太田家元九郎 津軽三味線
柳家〆治『そば清』
花島世津子 マジック
柳家小三治厩火事


10/7(水) 志らくのピン
19:00〜21:20@内幸町ホール
志らべ 『青菜』
志らく 『松竹梅』
志らく 『湯屋番』
仲入り
志らく 『お藤松五郎』


10/8(木) 立川談笑月例独演会 其の95回
19:00〜21:20@東京芸術劇場中ホール
時そば
『紙入れ』
仲入り
『紺屋高尾』


10/12(月) 三遊亭天どん独演会 第8回僕のらくご道
18:00〜20:50@なかの芸能小劇場
三遊亭玉々丈 『金明竹 名古屋弁Ver.』
古今亭駒次 新作 『怪談バッハの肖像画
三遊亭天どん 『二番煎じ』
仲入り
春風亭百栄 『状況説明窃盗団』
三遊亭天どん 『僕とサンタクロース』


10/18(日) 立川志らく独演会 夜の部
18:00〜20:04@三鷹市芸術文化センター星のホール
志らべ『牛ほめ』
志らく『洒落小町』
仲入り
志らく『お藤松五郎』


10/19(月) 柳亭市馬立川談春二人会
19:00〜21:22@練馬文化センター小ホール
開口一番 柳亭市楽『桑名舟』
立川談春牡丹灯篭 お札はがし』
仲入り
笑福亭鶴瓶『Alwaysお母ちゃんの笑顔』
柳亭市馬『らくだ(通し)』


10/21(水) 志の輔らくご21世紀は21日
19:00〜21:00@明治安田生命ホール
志の彦 『金明竹
志の輔 宮崎落語祭に行ってきました〜宮崎名物・ひや汁、肉巻きが美味しかった〜数年前から始まった東京の落語ブームが今地方に波及している、地方でも気の揃った観客を前に落語ができるようになった〜長野県・諏訪湖近くの人口70名の村で2年に一度行っている落語会〜松茸食べ放題、でも「松茸はひとくちに限る」〜携帯もつながらない村の夜は真っ暗、昔の暗闇はこうだったのかも、昔の旅人は大変だった・・・
『猫の皿』
松元ヒロ 今日のニュース
志の輔 『紺屋高尾』
アフタートーク 加藤和彦氏の話


10/28(水) こんにゃく閻魔一朝会
18:30〜21:00@小石川源覚寺本堂
朝呂久『一目あがり』
一之輔『あくび指南』
柳朝『夢の酒』
仲入り&抽選会
林家正楽 紙切り
一朝『唐茄子屋政談(序)』


先月聴いた落語のなかで、一番良かったのは市馬師匠の『らくだ』です。市馬師匠の『らくだ』は以前にも聞いたことがあったけど、その頃は市馬師匠は通しをやってなかった。しばらく前から通しをやるようになったそうで、この日初めて師匠の通しを聴きましたが、実に良かった。わたしは今まで『らくだ』ってあんまり好きじゃなかったけど、今日の市馬師匠の『らくだ』を聴いて、あーわたしが聴きたかったのは、こういう『らくだ』なんだよーー!と思った。
屑屋の久さんがめそめそ泣いたりせず(わたしは、この噺に湿っぽいエピソードを延々と入れて、酔った屑屋に泣きながらぐずぐず言わせるやり方が嫌いです)、陰惨なところがない。また「困った人を放っておけない」とか「貧乏人をバカにするな」とかいう屑屋のセリフも妙にマジメに言ったりせず、正蔵(あ、当代ね)の人情噺みたいに淀五郎ちっくなところが微塵もないのが良かった。市馬師匠の人柄そのままの、とても気持ちのいい・楽しい『らくだ』でした。あぁ市馬師匠という人は大らかだなぁとしみじみ思いました。この『らくだ』のおかげで、実にいい気持ちで帰路につくことができました。


ところで、市馬師匠の『らくだ』を聴いた会で久々に談春師を聞いた。
談春師の『お札はがし』は、怪談というより、“伴蔵&おみね夫婦漫才”って感じだった。おみねは強気でケンケンしたもの言いで、でもちょっと愛嬌のある女。伴蔵はそんなおみねに理屈ではかなわない…という感じで、ふたりの会話はまるで夫婦漫才みたいなのだった。談春師が夫婦を描くとなんでもこうなる傾向がありますね。談春師は夫婦のこういう在り方が好きなのね、きっと。佐々木夫妻はこういう関係なんでしょう(笑)。
それと、談春師は“逢魔が刻”って言葉がよっぽどお気に入りのようで、この日も使ってたけど、あの使い方は間違ってると思う。談春師は、伴蔵がお札をはがしてお露とお米が新三郎の家に入っていって、その夜が明ける頃、夜明け前の時間を指して使っていたんだけど、“逢魔が刻”って夕暮れの頃の時間を指す言葉のはずです。
談春師の、華麗なコトバをふんだんに使った饒舌というのは、それが上手くいってるときは聞いてて大変うっとりするんだが、使ってる言葉が間違ってると一瞬ですべて台無しです。
そんなこんなで、久々の談春師にはあんまり感心しませんでした。


それから面白かったのは『うらいちもんじ』の会です。寄席や他の落語家と出演する会では見せない“黒い一之輔”全開で楽しかった(笑)。
この会は基本的に“マクラを喋る”という会で、最初に長いマクラタイム、次に一席だけ落語をやって仲入り。仲入りの時、客席から一之輔さんへの質問を集め、仲入り後はその質問に答えるコーナー…という構成でした。
マクラもさることながら、“質問コーナー”が面白かった。一之輔さんは、客席から寄せられた質問に、かなりいい加減に、しかし所々率直にホンネで答えていて、それが面白かった。
一之輔さんはホントに最近人気で、いい気になってる(笑)、しかし、その“いい気になってる”具合が今とってもいい感じだ。上手に調子に乗れるのも才能で、そういう人が売れっ子になるんだと思います。