みなと毎月落語会 立川志らく独演会



5/19(火)19:00〜21:02@麻布区民センター
開口一番 らく兵 『洒落小町』

志らく 『黄金餅落語約39分
仲入り
志らく 『井戸の茶碗
落語約38分


先月銀座ブロッサム志の輔師匠の井戸茶を聴き、今月3日に立川流特選会で談笑師の『黄金餅』を聴きました。志らく師匠の今日のネタの選択は、志の輔&談笑両師を意識してのものだったのかな?と思いました。


志らく師の『黄金餅は初めて聴いた。談笑師の『黄金餅』も3日に聴いたのが初めてだった。


談笑師の『黄金餅』は、人間の欲や業への透徹な視線が感じられ「うーむ、そこまで突き詰めますか、変えますか…」と感服した。
片や志らく師匠の『黄金餅』は、最近師匠がこだわっている“落語らしさ”に充ちた『黄金餅』であった。
黄金餅』の“残酷”の余韻が真逆といったらいいのでしょうか?談笑師匠の場合は“可笑しいけど怖い”、志らく師匠の場合は“怖いけど可笑しい”…って感じ(って、よくわからないですよね、すいません)。


ただ、志らく師匠の『黄金餅』は、家元の『黄金餅』と大きくは変わらないので、初めて聴いた時の衝撃度は談笑師のほうが大きかったです。


今日の『黄金餅』については、後に詳細を書きたいと思いますが(書く時間があればね…)、とりあえず面白かったところをメモしますと…


・「わぁわぁ言いながら下谷の山崎町を出まして…」の道中付け、志らくさんは物凄い早口で無事いい終えて(笑)、「早すぎるぞ!」「早口言葉じゃねぇんだから!」と自分でツッコミを入れてたのが可笑しかったです。そういえば、談笑さんはあんまり滑らかじゃなくて(笑)、「あたしの活舌が悪いんじゃない、皆つまづきながら行った…」って言ってたな(笑)。
木蓮寺の和尚が、読経する時、真ん中に穴の開いた風呂敷をかぶって“丹波ほおずきの化物みたい”で、それがちょこちょこ歩いてきた…っていうところ、わたしは、なんとなく永井豪の『チャカポコ』を思い出してしまって、笑っちゃいました(…知ってる人、少ないかなぁ)。
・金兵衛が隠坊に西念の焼き加減をオーダーする(笑)ところ。“腹だけナマ焼けにして”という妙な注文に、隠坊は怪訝な顔で何度も聞き返す。業を煮やした金兵衛「腹だけナマ焼けに頼むって、板サンに言ってんだよ!」、隠坊「俺は隠坊だよ!」。このやりとりが妙に可笑しかったです。しかし“俺は隠坊だよ!”なんて、実に落語的ですね(落語じゃないと聞けません、こんなセリフ)。
・焼けた西念の腹から餅にくるんだ金を取り出すところ。餅が焼けてるので「あれ?なんか、こんがり焼けていい匂いがする!」っていうのに笑いました。腹を裂いて金を取り出す怖いところなのに、お腹から焼けたお餅のおいしそうな匂いがするっていうのが、なんだか笑っちゃっうじゃありませんか。


終わり方は、金兵衛はその金で『金餅(金持ち)』という餅屋を開いたが、「そのうちに誰言うことなく…誰も見ていない、知らないはずのに…『黄金餅』と呼ぶようになりました」。“誰かが何気なく言い出したことが真実を言い当てている”という寓意的な結びで印象に残りました。


志らく師匠の『井戸の茶碗も、今回初めて聴きました。
これも志の輔師匠の井戸茶と比べて興味深かった。


志の輔師匠の井戸茶は、二人の武士に泣かされる小市民の屑屋が気の毒で、共感を覚える。と同時に、タテマエに生きる人達(武士)の滑稽を嗤ってカタルシスを得る…という流れで、現代的な人情噺なのですね。
対して志らく師匠の井戸茶は、千代田朴斎の融通のきかなさも高木作左衛門の直情も、ただただ滑稽。屑屋も“正直者”というよりは、バカ正直な江戸っ子…という印象で、ストレートに滑稽で笑える井戸茶だった。


そう!志らくさんの清兵衛は、“正直者”じゃなくて“江戸っ子”だな。
仏像から出てきた50両を「痩せても枯れても武士だ!」と受け取らない千代田朴斎に、清兵衛は…
「そりゃあなたはカッコいいですよ。見事です。でもね、あなた一人ならそれでよろしいかもしれませんが、お嬢さんを御覧なさい!」
「この部屋は汚いです、屑屋のあたしが言うんだから間違いありません!」
「あなたの正直と私の正直はちょっと違いますね。あなたのはバカ正直だ!」
武士に恐れ気もなくそんなことを言っちゃう清兵衛こそバカ正直じゃん!(笑)って思いました。言いたいことをズバズバ言うけどハラワタがない。まさに落語の“江戸っ子”ではないですかね?
高木のところに戻って、千代田朴斎が50両を受け取らなかったいきさつを報告するところでも「説明するのもめんどくせぇ!」って言ってて、そういうところも“実直”というのとは違うなぁと思った。


それから、志らく師の井戸茶は、朴斎の娘・糸も、武士の娘らしく頓珍漢なところが可笑しくてよかった。
屑屋の言い草に怒った父親が「刀を持ってまいれー!」と命じると、「アイヤ!父上〜!」って、すかさず刀をささげて出てくるのだった(笑)。


二席とも面白かった、そしてどちらも更に変わるのだろうと思うけど、それを楽しみにしております。




※この間のピンで、志らべさんから「ブログアップはお早めに!」というお願いがあったそうなので、今日はちょっと時間もあったので、早めにメモしてみましたw