浜松町かもめ亭 喜多八・白酒 二人会



2/18(水)19:00〜21:05@浜松町メディアプラスホール
開口一番 立川こはる 『狸の札』
桃月庵白酒 『明烏
柳家喜多八 『鋳掛屋』
仲入り
桃月庵白酒 『つる』
柳家喜多八 『首提灯』



今日の会はとっても良かったです。全員が良かった、こはるちゃんも白酒師匠も喜多八師匠も。特にトリの喜多八師匠の『首提灯』は見事だった。「上手いなぁ〜」と唸ってしまいました。


こはるちゃんの『狸の札』 この噺は少年のようなこはるちゃんに似合う。というか、こはるちゃんらしさが噺に出ているのでしょう。先月末の談春一門会で聴いた時もそう思ったのですが、やっぱりこはるちゃん上手くなったなと思った。小柄でファニーフェイスのこはるちゃんがやる子狸は可愛い、男も愛嬌があって良い。全体に微笑ましい、ちょっと童話みたいな趣もある『狸の札』。


白酒師のマクラの面白さはつとに知られておりますが、今日も期待を裏切らない面白さだった。G7の中川財務相記者会見の真相について“あの記者会見の前に中川氏と欧米各国財務大臣の間でこんなやりとりがあったのでは?”という大胆な推理(妄想)を展開w
各国の大臣からバカにされ名前もまともに呼んでもらえない中川氏に、イタリア・フランス両国の財務相が「ナ・サ・ザ・ワ〜、飲めよー」ってワインを無理強いする…っていう妄想シーンなんか、実にバカバカしくて笑えた。


白酒師の明烏はわりと最近聴いたな?と思って記録をみたら、昨年暮れの「白酒ひとり」で聴いていた。ギャグを含めその時とほとんど同じだったが(あ、“二宮金次郎”ギャグはちょっと違ってたな。ま、そこはどうでもよろしい)、前に聞いた時よりも面白くなってた。
わたしは、若旦那・時次郎が、町内のお祭から帰ろうとして目の前を横切ったトンボを追って「見知らぬ街に迷い込んでしまいました」「山田さんの坊ちゃんに連れて帰っていただきました」って目をキラキラさせて言うところ、それを聞いた父親が「そうかい…」となんともいえない顔で言い、傍らの母親を振り返って「山田さんの坊ちゃんは八つだろ?」って確認するところがおかしくって好きです。今日もそこが可笑しかった。
あと、白酒師の『明烏』では「お巫女頭のおばさん(お茶屋の女将)」が好きですね。お座敷で泣いている若旦那を花魁の部屋に連れて行こうとすると、「寄らないで下さいッ!」と激しく拒否されるんだが、おばさんは「こわい、こわ〜い(笑)」って子供をあやすようなバカにした調子で言う。更に若旦那に「あっち行ってください、フーーッ」って汚いホコリのように扱われると、「そんなことしてもおばさんは飛びませんよ」って不敵な笑顔で言う。ここがとても可笑しいです。このおばさんは“腕力(かいなぢから)”が凄いので(笑)、若旦那はやすやすと花魁の部屋に連れて行かれちゃうのだ。
それから、今日は、若旦那のノロケを聞いて甘納豆を食べながら憤慨する多助がバカに面白かった。源兵衛に「喰うのか怒るのか、どっちかにしろよ!」と言われ無言で甘納豆を食べ続ける多助。それに「喰うのかよ!」って源兵衛が突っ込むタイミングが絶妙でした。


喜多八師匠の『鋳掛屋』 マクラで自分が幼い頃の“子供”っていうのはこんなだった…という話を聴かされ、それが噺に登場する子供達とつながる。頭の中にませてて憎々しくて騒々しい悪ガキどもが浮かんできて、とても楽しい。
最初、子供達が鋳掛屋をからかうところでは生意気な子供達の様子が描写される。鋳掛屋に「キミキミ、細君はあるのかね?」なんて警吏みたいな口をきく男の子なんか、喜多八師匠をそのまま小さくしたみたいで実にヤな子供だ(笑)。その後の鰻屋のところでは、子供達に取り囲まれた鰻屋の半狂乱が演じられる。その様子から子供達のやんちゃぶりが見えてきて可笑しい。


白酒師『つる』 八っつぁんが“みんなが隠居を嫌ってる”っていうのをペラペラ隠居本人に言っちゃうところ、白酒師の八っつぁんの「包み隠さなさ」は突出してて凄い(笑)。つるの由来を隠居に尋ねに行こうという話になったが「“行きたくねぇなぁ”“オレも行きたくねぇなぁ”って誰も行きたがらないんですよ」「くじ引きで決めようって話になりやしてね、あっしが当たっちゃったんですよ」って、本人にそこまで言うか?って言い方なんだけど、八っつぁんに一滴も悪びれるところがないからか、陰湿な感じが全然なくてただただ可笑しい。ここがこんなに面白い『つる』は白酒師をおいて他にない気がする。
“つるの由来”のオヤジギャグ的くだらなさに、語ったご隠居自身が照れてごまかし笑いする、その笑い方が可笑しかった。あと、八っつぁんが「背中ナタで斬られてレモン絞られてもしゃべりません!」って誓ったその一瞬後に「どこで喋ろうかな」って言う、あそこ。一拍どころじゃない、コンマ1秒くらいの早さがすごく面白い。


喜多八師『首提灯』 以前聴いたのは2年以上前。久々に聴いたが、いや〜、素晴らしいっ!
前半、田舎侍と酔った江戸っ子のやりとりにドキドキした。
「麻布へめぇりテぇと思うが道が分からぬ。教えろ、町人」喜多八師匠の侍の声は低くて怖い。怖いんだけど、“めぇりテェ”なんて田舎くさい言葉遣いを、江戸っ子は素通りできない。で、男はついからかっちゃう。酔っ払ってるから抑制がきかなくて、どんどん図に乗っていく。「丸太ンぼう!」「ボコズリ野郎!」「かんちょうれい!」悪態を浴びせる。後にひけなくなってくのが分かる。侍は冗談が通じない・・・調子に乗りすぎだ、よせよせと思いながら観ていた。この後斬られちゃうんだと分かっててもハラハラした。


男が首を斬られたことに気がつく場面が良かった。首のまわりのぬるぬる(血)を触り、その手を恐る恐る見る男。途端に首がガクっと前にずれて、ハッと息をのんでしまいました。喜多八師匠、うますぎるー。


スリリングでブラックで滑稽。That's落語って感じ。
しかし、上手いなぁ喜多八師匠。カッコいー!と思いました。




※1ヵ月近く更新していないことに気づき、慌ててアップいたしました。
 いちおう続ける気はあります。