立川談志一門会





1/28(月)19:00〜21:10@練馬文化センター大ホール
立川志の吉 『看板のピン』
立川談笑 『イラサリマケー』
立川談春 『替り目』
仲入り
立川談志 『源平盛衰記





去年のこの会では家元は『やかん』をやった。今年は『源平盛衰記』。二年続いてアタリ!だったな。




志の吉さん 今年の元旦にイトーヨーカドー千本くじで一等を引き当てたそうだ。一本5,000円のくじの一等賞品は「ガソリン500リットル」。しかし志の吉さんは自動車に乗らない。時間が経つとともに一等くじを引いた興奮が醒めると、なんだか一年の幸運を全部使い果たしてしまったような気持ちになった…というマクラから『看板のピン』へ。この流れはとても楽しかったし、落語も面白かった。看板のピン手法を真似して失敗する男、この男は親分の口調も真似するのだが、その口調が可笑しい。「それだから、おめぇたちゃ三下だぁ〜・ぁ〜・ぁ〜」って、エコーをかけるみたいに語尾を伸ばす(こういうの、志の輔師匠もやるなぁ)。この口調で畳み掛けて「中もピンだぁ〜」ってサゲたのが楽しくて良かった。


談笑師『イラサリマケー』 自分は談笑師の会にはあまり行ったことがなくて、この新作をライブで聴いたのは初めてだったのだが、凄く面白かった!
“せっかくのマグロの刺身にバルサミコをかけてアサツキをそのまま一本載せたような創作料理”を出す『東方見聞録』とか『月の雫』とかじゃなく、昔ながらの居酒屋で呑みたい…と男が選んで入ったのは、居酒屋『勝政』。しかし期待は裏切られ、そこはアジアの某国出身の浅黒い顔の店員達が立ち働く居酒屋。客が生ビール(小)を注文すると…
店員A「コノ・オ客サン・コナマイキ〜」
店員B「オ客サン・コナマイキ〜」(他の店員が次々に復唱)
客「潜水艦か」「言いたいことは山ほどあるけど、ま、とにかく持ってきて」
店員たちの片言の日本語で、“なめこおろし”も“煮込み”もすごーく怪しいメニューに聞こえるんだけど、それがとっても可笑しい。でもって「なんとなく分かるのが悲しいよ」って言いながら、いったいどんな料理だ?と尋ねる客がもっと可笑しい。こういう会話の面白さが談笑師の落語の魅力の一つなのだろう。30日の独演会、ますます楽しみ。
ところで、この後登場した談春師によると「いまそこで談笑の落語を聴きながら、会の主催者が悲しそうに“今日の打ち上げ、『月の雫』なんです”って言ってました」。


ファンの話を聞いて前から聴きたいと思っていた談春『替り目』。これも面白かった。
談春師の『替り目』の夫婦は「ちっ。あてられっぱなしだよ!」と舌打ちのひとつもしてやりたいくらい仲良しなのだった。酔っ払って女房にわがままをいう男が可愛いし、その相手をしてやる女房が、言葉つきはぞんざいでケンケンしてるんだけど、“心の中で笑ってる”っていうのがよく分かって、すごくいいのだった。でもって、酔った男が女房に言うことが可笑しくていい。「実の亭主に行く道先をアゴで示して、赤の他人の車屋をこうやって(…袂の開きを抑えつつ手を振る)見送るとはなにごとだ〜」とか「形から入んなさい、腹は見えないんだから」とか。理屈っぽいんだが笑わずにいられない。談春師らしい。


家元、昨夜は舞台に登場した時の笑顔がとてもよかったので、体調もご機嫌も良さそうだなと思ったのだが、源平盛衰記を聴けるとは思わなかった。
わたしは家元の『源平〜』はCDでしか聴いたことがない。そういうわたしみたいな客への“サービス”という意図もあったかもしれない、昨夜『源平〜』をやったことには。だからライブで聴けたことは素直に嬉しい。
昨夜は、家元が“今の立川談志の『源平盛衰記』”を試行錯誤している、その過程を観ていると思った。会の最後に「“落語の傘の下にいる”ことを良しとしない、こだわるもの・超えたいものは“談志”である」というようなことを仰ったことを考えると(※追記:正確には「〜立川談志に帰属している」と仰ったのでした。失礼)、そう思うのだが。スピードやキレはCDで聴いたそれとは比ぶべくもないが、そういうところも含めて自分を客に見せてしまう方ではあるので、今は『源平〜』をやろう!と思うくらい気力に溢れてるってことなんではないかな。
なんとなく、今年はまたどこかで『源平〜』をやるんではないか?という気がするんだが、どうでしょう?