鈴本演芸場1月下席 1/21夜の部







開口一番 古今亭志ん坊 『子ほめ』
古今亭朝太 『道具屋』
翁家和楽社中 太神楽曲芸 
橘家文左衛門 『手紙無筆』
古今亭志ん橋 『出来心』
すず風にゃん子・金魚 漫才
春風亭正朝 『普段の袴』
柳家小袁治 『堪忍袋』
仲入り
柳家小菊 粋曲
柳家はん治 『背なで老いてる唐獅子牡丹』
林家正楽 紙切り
古今亭志ん輔 『お見立て』





昨日は主任の志ん輔師匠と文左衛門師匠目当てで鈴本へ。


文左衛門師の『手紙無筆』
八五郎「ひょっとして兄ぃも無筆なんじゃねぇの?なーなーなー?」
兄貴「ぶっとばすぞ、この野郎!」
八五郎「兄ぃ、それ(手紙)裏っ返しなんじゃないのかな?」
兄貴「なんですと!」
寄席で何度か聴いてるけど、いつも楽しくて好きだ。


志ん輔師の『お見立て』は初めて聴いたのだが、廓噺らしい醒めた明るさがあって面白くて粋な『お見立て』だと思った。
志ん輔師の『お見立て』では、喜助は、喜瀬川花魁に命じられて“花魁は風邪をこじらせて入院”とウソをつく。見舞いに行くから案内しろという杢兵衛に、“吉原では客が花魁を見舞うのはご法度”と更にウソをつくが、国から兄が見舞いに来たと偽って見舞えばいい、御内所の旦那に“この人(杢兵衛)は喜瀬川の兄だ”と一筆書いてもらって来いと迫られる。ちょっとお待ちを…と喜助は花魁のところに戻る。
花魁は“喜瀬川は杢兵衛大尽がなかなか来てくれないので、こがれ死にした”と言えと命じるが、喜助は今更そんなこと信じちゃくれませんよと訴える。それをうまく言いくるめるのが廓の若い衆の腕だろう?泣きまねでもなんでもおし!と花魁に追い立てられ、杢兵衛のもとへ向かう喜助。
二人の間を行ったりきたりで「情けなくってホントに涙が出てきた」喜助は、泣き顔で杢兵衛の前に出る。
杢兵衛「喜助?にゃーておるのか?こけーこー」(泣いてるのか?ここへ来い)
喜助「にゃーております、にゃーております、今を盛りとにゃーております!」
(…っていうやりとりが可笑しかった)。


花魁が自分に会いたがって死んだと聞いて、杢兵衛は、手紙を書いて知らせなかった喜助が悪いと怒る。
「お大尽の所・番地を知らなかったんでございます」
「所・番地を書いた書きつけを喜瀬川に渡したぞ。その書きつけはどうした?」
「ええ…、そうそう、書つけがございました。その書きつけをあたしに渡そうとした時、花魁の前にゲジゲジがつーっと出てきまして、花魁はきゃーっと叫んでその書きつけでゲジゲジをつまんで火の中にポーンと…」
その場しのぎのウソを次々と重ねる喜助。


こうして喜助は、あるはずのない花魁の墓に杢兵衛を案内するハメになるわけだが、志ん輔師匠の喜助は、その頃には、もう「なーんにも考えてませーん!」て感じで、行き当たりバッタリを楽しんでる風なのだった。そんな刹那的で軽薄な喜助が、遊郭で生きてる人間らしくて、いいなぁと思った。
杢兵衛に「こんな時にこんなことを云うのはなんなんですがねぇ、お大尽。これからも贔屓にしてくださいましね、ウチにはいい妓がいるんですから」なんて言う。なにを言う、女房を失くしてそんな気になれるか!と泣きながら憤慨する杢兵衛に、喜助は「人間なんて、重い荷物をしょっていつまでも歩いちゃいけないもんですよ。またウチに来てくださいよ、『あの妓がいいかな?』『この妓がいいかな?』ってね、いい妓をお見立ていたしますよ!」。
ホーント、目先のことしか考えてない感じ。いいなぁ。




昨日は客席はガラガラで拍手も少なかったが(…なんだか出演者に申し訳ないくらい)、志ん輔師匠の『お見立て』で最後に客席全体が明るい空気になって、あー面白かった!と帰途につくことができた。