立川談春 独演会





1/11(金)19:00〜20:55@銀座ブロッサム中央会館
子別れ(上・中)
仲入り
子別れ(下)





昨年9月、紀伊國屋落語ライブ三人衆で聴いた談春師匠の『子別れ』。
あの時は、鰻屋の2階で堰を切ったように泣き出した亀ちゃんに涙した。
しかし、今日は熊にもらい泣きしちゃった。
談春師の『子別れ』は、上・中は9月に聴いたのと同じだったが、下は少しだけ違っていた。


3年ぶりに父親と再会した後(再会の場面から、もううるうるは始まる…)、家に戻った亀ちゃん。父親にもらった50銭を母親・おみつに見つかって咎められ、玄翁でぶたれそうになり…というのがあって、その後。
おみつは、明日父親に鰻をご馳走になる息子のために「夜なべで着物を仕立ててやろうね」という。すると亀は「おいらも夜なべだ!」と、もらった50銭で買った青鉛筆で画用紙いっぱいに青い空を描く。その青い空を、亀は「これ、お父っつぁんだ!」と言う…ここがまず、前回聴いた時と違いました。


翌日。
亀はその絵を家に置き忘れて父親に会いに行く。息子が忘れたその絵を届けてやらなければ…というのが口実になって、おみつは鰻屋に行く。
そして鰻屋の再会の場面。おみつの声に慌てる父親を尻目にもくもくと鰻を食べ終えた亀ちゃんは、3年ぶりの再会に言葉もない夫婦を残して「おいら、下でお茶飲んでくるよ」と部屋を出て行ってしまう(!)
(※ここでわたしは「ええ〜、亀ちゃんいなくなってしまうのー」と密かにため息をついてしまった。この後父親に非難の声をあげてわんわんと泣きだす亀がいとしくて好きだったので、今日はその展開がないかも…と思ったら、ちょっと残念だったのだ)。


おみつは熊に亀の描いた絵を見せる。真っ青に塗られた画用紙。なんで青い空がオレ?といぶかる熊に、「道々、考えたんだけど…」とおみつは「お前さんに肩車されて見たのも、棟上の時お前さんに屋根にあげられて見たのも、いつもいつも青空だったんじゃないかねぇ。」だから、あの子にとって青空はお前さんなのだ…と。
それを聞いた熊はグッと詰まる。その胸にどんな想いがこみあげたのか(そう思ったら、すでにうるうるしていたのが、いっそう泣けてきてしまったのだった)。
熊は、おみつに「お前たち二人に、もう心細いおもいはさせない」と言う。しかし、素直に「すまなかった、もう一度やりなおしてくれ」とは言わない、どころか、「他に頼れる男がいるならオレの出る幕じゃないが…」などと言う。おみつも「そんなヒトはいないけれど…」ともじもじ。
すると、いきなり亀が襖をサッと開けた。そして一言「お父っつぁん、男だろ!」。その声は半泣きだった。
亀ちゃん、襖の向こうでずっと聴いてたのか…と思ったら、またうるっとした。


…というように、前回聞いたときとはちょっとだけ変わった『子別れ』。熊が、画用紙いっぱいに描かれた青い空に胸をうたれる場面がよかったな。談春師の瞳も潤んでいたのにも、じんときた。


『たちきり』なんかもそうだが、談春さんはやるたびに少しずつ変えるなぁ。次も変わるのかな。どう変えるんだろう、次も観たい…という具合にますます見逃せなくなってしまう談春師だ。