前進座劇場プロデュース 寄席その三十 柳家小三治

12/8(土)17:00〜19:45
柳家ごん坊 『動物園』
桂才紫 『悋気の独楽
古今亭志ん輔 『二番煎じ』
仲入り
柳家三三 『五目講釈』
柳家小三治 『出来心』





この会は小三治・三三師弟が目当てで行って、もちろん楽しませてもらった(いつものように)。でも、今日いちばんよかったのは志ん輔師匠の『二番煎じ』を聴けたことです。


今までライブで聴いた『二番煎じ』の中で一番好きだ。途中、あぁ志ん朝師匠にそっくり!と感じたところがあった。辰つぁんが、助六よろしく金棒の鉄輪を鳴らすところ。「チャランコーン、シャンシャンコーン…」って、あそこのところの言い方。調子といい声といい、何度もCDで聴いた志ん朝師匠の『二番煎じ』そのままで、あぁいいなーと思った。そんな風に志ん朝師匠を彷彿とさせる部分がありながら、全体的には誰のものでもない、志ん輔師匠の『二番煎じ』なのだった。
しし鍋の熱々の肉をほおばる宗助の仕草とか顔が最高だったな、寒い夜に食べるしし肉はさぞおいしいだろうなぁ…と観ていてうらやましくなった。感極まって何事か口走るのだが、何を言ってるかさっぱりわからず、月番に「どこの国のヒトだよ?!」って言われてしまう。上総屋、宗助、月番、辰、役人…登場人物が皆いきいきしてて、新内、浄瑠璃助六を真似た場面も見事で、実に楽しかった。こういう『二番煎じ』を聴けてホントに幸せだ。


三三師の『五目講釈』 若旦那が赤穂義士伝を語るところ、ちょっと間違ったかな?ど忘れしたのかな?と思った箇所はあったものの、小沢一郎、岡田監督等々、時事ネタを織り交ぜた歯切れの良い講釈で会場を沸かせた。いつものように飄々と去っていく姿を見送りながら、隣の席の年配の婦人二人連れが語り合っていた。「おもしろかったわねぇ、“ひふみ”(一二三)さんて言うのかしら?」。落語人気といっても、世の中の認知はこんなものなのだなぁ…などと思いました。


小三治師匠 先月の扇橋師匠との二人会では仲良しぶりを見せつけたと聞いた。今日のマクラでも扇橋師匠のエピソードが中心で、お二人の関係―ひとこと“友情”というだけでは表しきれない、深く温かいものが流れている―が伺えるような、面白くて(大いに笑わされた)、それでいていい話だった。句会で出かけた中国・光州旅行でのこと。扇橋師匠、ホテルについて部屋に入ったものの部屋の電気のつけ方が分からない(カードを差し込む式だったが、それが分からなかったのだそうです)。持ってきたトランクの蓋も開けられず、一晩暗い部屋でトランクに腰掛けてぽつねんといたという。他にも色々可笑しいエピソードを伺ったが、実に天然&マイペースな方だ。そんな扇橋師を小三治師は「うらやましい」「いつかあんなふうになりたい」と仰る。お二人は一緒に前座修行をした仲で、そして共に修行時代を送った仲間は今では二人だけになってしまったという。なんとなく、落語の『長短』を思い出した。お二人のような年齢の人にとって、昔からの長い付き合いの友達ってどれほどかけがえのないものだろう。
さて『出来心』 今回は東京かわら版落語会の時の『出来心』よりも短め。羊羹を食べるあたりは省略され、後半の長屋の場面がたっぷりだった。どうして何度聴いてもあんなに面白いかなぁ。「裏は花色木綿」「丈夫であったか」「寝冷えをしない」これを繰り返す男がホントに可笑しい。そして、なんともいえない愛嬌がある。うれしそうに「寝冷えをしない!」ってあの言い方。あれがたまらないなぁ。