志の輔らくご 10/21

14:05〜15:55@新宿明治安田生命ホール
※ロビーゲスト確認し忘れました
『そば清』
松元ヒロ(ニュースネタパントマイム)
『宿屋の仇討』





二ヶ月ぶりの21日志の輔らくご。今回はあっさり軽い番組だったが、たまにはこんなのもいいなと思いました。


一席目のマクラは、巷間話題の赤福をとりあげて、食品の期限表示・原産地表示システムと公正な表示の難しさ、一連の食品メーカー不祥事の背景にある“もったいない”という意識に関する考察など。
大抵の食品は、表示された賞味期限を過ぎても衛生上は問題なく食べられる。また、羊羹やチョコレートのように、砂糖を多く使った加工食品の消費期限は、表示されたものよりもかなり長いらしい。菓子メーカー各社の期限表示改ざんとか材料の再利用等々の不祥事の背景には、ひょっとしたら、まだ食べられるにも関わらず捨てなければならない食べ物を前にした人の、「もったいないなぁ…」という、いたって素朴な善意の気持ちがあったのかもしれない。してみると“消費者の食の安全”のためにもうけられた「期限表示」という制度は、“もったいない”という善の意識が活かされにくいシステムなのかもしれず、そんなシステムが存在する世の中はなんだかヘンなのかもしれない。
でも、“もったいない”という意識が一概に美徳とも言い切れない。“もったいない”にとらわれてムリにつじつまを合わせようとして、おかしなコトになってしまうケースもある(志の輔師は“消えたお湯の白濁を取り戻すために、こっそり草津温泉のモトを入れていた白骨温泉”の話をしたが、これはムリをしちゃったケースの例示かな?と思った。志の輔師の話を聴いていて、“もったいない”という気持ちには、ちょっぴり“欲”が入ってることもあるなと思いました)
…というような内容のマクラから『そば清』へ。マクラから考えてみると、この噺、“欲にくらんで、ムリして(文字通り)モトもコもなくした江戸のフードファイター”の噺?
志の輔師のそば清は、あっさり蕎麦賭けに勝つところで、もり蕎麦の最後の1枚を食べる前に「あと何枚でしょうかー?」「え、あと一枚?食べられるかなぁー?」と、微笑を浮かべてゆーっくり語尾をのばして言う。それがとってもわざとらしくて憎々しく、可笑しい。戸隠の山中で大蛇が赤い実を舐めてお腹の中の猟師を溶かすところを目撃したそば清が赤い実を持ち帰るところで、志の輔師は「…ここんとこ大事なトコです」と注意喚起を促す。「ヘビが・赤い実を舐めると・お腹の中の猟師が・溶けた」と一語一語区切るように繰り返す。でも、やっぱり下げが分からないヒトはいるだろうなぁ。


ところで、志の輔師、現在制作中のお正月のパルコ公演のチラシに頭を悩ませる日々だそうです。
来年のお正月のパルコ公演では、映画『歓喜の歌』封切り(来年1月20日頃)に合わせて、23日間毎日『歓喜の歌』をかけることを検討中らしい。現在『歓喜の歌』をやる(かもしれない)ということ以外はまったく何も決まっていないのだが、それでもチラシには公演の内容を何か書かなければならない。チラシに書いたことと、実際の公演内容が違ったということは避けたいが、さて、どう書くか悩ましい。例えば「『歓喜の歌』他」「『歓喜の歌』を中心に…」「『歓喜の歌』を含む○席』…等々のコピー案のどれが適切?なんて打ち合わせをされているそう(瑣末な表現にマジメに迷っている打ち合わせ風景を想像するとちょっとおかしい)。
公演中、毎日『歓喜の歌』をやるということについては、志の輔師は、まだ迷ってるみたいなことをおっしゃっていたが、きっとやるだろうなぁ。


二席目のマクラは“旅”の話で、最近、落語会に行った諏訪湖近くの村の話など。住民が100人しかいない村で、松茸づくしの饗応に惹かれて、5年前から毎年訪れているそうだ。ご飯粒よりも松茸のほうが多い“松茸のおにぎり”なんていうのをふるまわれるそうで、羨ましい限り。旅のお好きな志の輔師のコトバ「(旅には)自分の体を、自分で動かした人しか見られないものがある」。遠くても、面倒でも、実際にその場に行った人にしか味わえないものがあるのが旅の価値。ということでしょうか。
『宿屋の仇討』は、三代目三木助師→家元→志の輔師という流れで教わったそうです。
二つ目になって初めてトリネタとして覚えた噺で、銀座のバーで家元に「稽古してやろうか?」と突然言われて、スツールの上に正座してやったのをみてもらったそう。
『宿屋の仇討』のうんちくを語る家元のモノマネをなさった。モノマネではあったが、このうんちく、ちょっとした一言(一文)に対する家元のこだわりが伺えて面白かったのだが、残念ながらメモしないうちに忘れてしまった(惜しい)。




なお、今日のマクラの食品表示の話や諏訪湖近くの村のことは、志の輔師が毎日新聞に連載しているコラムにもちらっと書かれているようです。