東京かわら版400号記念落語会

10/20(土)13:00〜15:40@よみうりホール
白鳥師と三三師の進行で、客席から『東京かわら版』にまつわるお題を集める。
三遊亭きつつき 『黄金の大黒』
神田ひまわり 『東京かわら版物語』
柳家三三 『不孝者』
仲入り
三遊亭白鳥 『「東京かわら版」にまつわる三題噺」』
柳家小三治 『出来心』





開幕。着物に羽織の三三師と、私服にメガネの白鳥師が並んで手をついていて、この二人が並んでるっていう絵だけで、既に可笑しい。三三師に「潮干狩りですか!」とつっこまれた白鳥師は、ハーフパンツにクロックスのサンダルという格好。間違えてイイノホールに行ってしまい、ついさっき会場に到着したばかりとのことでした(ちなみに今日のイイノホールのイベントは『詩のボクシング』だったそうで、白鳥師と『詩のボクシング』って取り合わせも妙に似合ってて可笑しい)。
柳亭市朗クンがアシスタントに加わって、客席から、仲入り明けに白鳥師が披露する『東京かわら版』にまつわる三題噺のお題を集めた。三三師と市朗クンが会場に下りてお題を集め、あがったお題を白鳥師がホワイトボードに書いていく。あがったのは「築地」「郵便振込み」「赤字」「玉子かけご飯」「締め切り」「美人編集長」「学習院」「リア・ディゾン」…(あと二つなんだっけ?思い出せませんー)等々10題。白鳥師はリア・ディゾンを知らなかった。
白鳥師「ディア・リゾン?…って何?」
三三師「それじゃジャイケル・マクソンだって!」
10題の中から、客席からの拍手に三三・白鳥両師の意向をちょっぴり加味して「築地」「赤字」「リア・ディゾン」に決定。


私は円楽一門をほとんど知らなくて、きつつきさんは今日が初めてだった。アウェイな会場・番組にホントにとまどっていたのか、それともああいうフラなのか、おどおど・あたふたした感じに独特のおかしみがありました。『黄金の大黒』 「承りますれば…」がちゃんと言えない男が、きつつきさんと重なって見えて可笑しかった。大家の息子を金槌で叩いたというところで下げ。


神田ひまわりさんも初めて。かわら版の誕生から今日までの歩みをまとめた東京かわら版物語』は演芸作家の稲田和浩氏作。本どおりにやってるのかなぁ…という印象だった。


三三師の『不孝者』は初めて聴く噺だったが、先日の独演会でかけた『猫定』同様、これも六代目圓生の持ちネタらしい。この噺のことを調べたくて検索していたら圓窓師匠の掲示板にあたった。'04年当時の圓窓師の日々の備忘録的な書き込みがあり、そこに「三三へ『不孝者』の稽古」という記述があった。三三さんはこの噺を圓窓師に教わったみたい。
遊蕩がやまない息子を驚かせてとっちめようと、下男・清蔵の姿になって息子が遊んでいるお座敷に迎えに行った大旦那。納戸のような部屋に押し込められ、燗冷ましの酒をあてがわれて息子を待っていると、そこにかつて贔屓にしていた芸者が入ってくる。語り合ううちによりを戻す二人。いい雰囲気になったところに「若旦那、お帰りでございます!」と声がかかる、大旦那、いまいましそうに「あの不孝者め…」とつぶやいて下げ。色っぽくてしゃれた噺。三三さんはこういう噺もうまいなぁ。また、女が上手なんだね、この噺でも芸者がそっと涙をぬぐう形がきれいだった。この噺の時、三三さんは、何色っていうんだろう、明るい臙脂色というのか、赤系の羽織を着ていた。きっとこの噺のために選んだ羽織なんだろうなと思いました。


リア・ディゾンがどんなふうに出てくるのか?”という一点に注目が集まった白鳥師の三題噺は毎度お馴染み“吉田タカシ君”が登場する物語でした。今回、タカシ君は柳家三三の弟子・柳家十六(四×四で十六なの)という芸名で古典一筋に精進する落語家。喰えないので“築地”の魚河岸でアルバイトしている。社長に落語家をやめてうちの社員になれ、二代目にしてやると言われて迷うタカシ君。アルバイトを終えてアパートに戻ると、彼女のミドリちゃんが待っていた。女優志願のミドリちゃんは、スカウトされてグラビアアイドルとしてデビューするという(笑い声が起こる客席を、白鳥師「まだ早いです!」と制しました)。グラビアアイドルから女優へステップアップする夢を語るミドリちゃんにひきかえ、タカシ君は弱気。本当は「いつか柳家小三治を継ぎたい」という大きな夢がありながら、「売れなくてもいい」などと言う。そんなタカシ君を、ミドリちゃんは「売れない落語家が名人なんか継げるワケないでしょ!あんたなんか柳家“赤字”がいいとこよ!」と叱るのだった。売れなくていい、何事も人の後ろに廻っていたい性格のタカシ君は、バスに乗る時も後部座席がいい、車もリアシートに座っていたほうが落ち着く。「お医者さんが言うには、こういう病気があるらしいんだ、“リア依存症”」…。グチるタカシ君と叱咤するミドリちゃんの会話に、いっぱいギャグがつまってる。面白いなぁ、白鳥さん。それにしても、リア依存症って!このコトバ、どっかで使いたいー


小三治師匠「あがってくる時、そこで(白鳥師と)すれ違いまして、『楽しんだかい?』と声をかけましたら、ハァハァ肩で息をついておりました。…相撲取りみたい」。白鳥師にちらっとふれて、その後ビッグカメラの話へ(会場のよみうりホールの階下にはビックカメラがあります)。ソニーのビデオカメラを池袋東口ビックカメラで購入した小三治師、その後、ヨドバシカメラで購入価格よりも2万円も安く売っていることを知ってガッカリ。それでも懲りずに、今日は会場下のビックカメラで付属品のマイク(9,998円)を購入した。会場に車で来たので、駐車料金のサービスを受けようとカウンターに行ったが、2万円以上買い物をしないと駐車料金は無料にならないといわれ、やむなく、合計2万円になるようにDVテープを買った(さぞたくさん買えただろうなぁ)。「ビックカメラはダメです!」…マクラはこんな話。
『出来心』 今まで、前半中心パターン(盗みに入ったうちでようかん食べてくつろいでたら二階から住人が下りてきて…というあたりで下げる)と、後半中心パターン(「裏は花色木綿」を繰り返す長屋の男と大家さんの会話が主)しか聴いたことがなくて、今日みたいに最初から最後まで丁寧にやったのを聴くのは初めてだった(トリでこういう噺をやるヒトは他に居なさそうだもんなぁ)。せっかくだから、もっと別の噺を聴きたかった気もするけど、小三治師匠の泥棒の噺は好きだから、まぁいいや。小三治師の泥棒は、とぼけ具合がなんともいえず可笑しくて、なんだか愛らしささえ感じてしまうのであった。
今日は知人4名と観たんだが、終わった後、ご飯を食べに銀座の街を移動中、信号待ちしてたら、一人が「…(小三治師の泥棒は)ようかんがおいしそうだったなー」って言った。その視線の先に「東京羊羹」の本店店舗ビルがあって可笑しかった。そうでした、小三治師の泥棒はようかんをとてもおいしそうに食べてました、でも私はお腹が空いてたので、ようかんよりも雑炊シーンに一層そそられました。

【追記】残りの二題は「オートバイ」「鬼瓦」でございました。