らさある亭 落語やります会

10/2(火)15:05〜17:20くらい?@本多劇場
ラサール石井 『ないもん買い』
小宮孝泰 『粗忽の釘
柳家花縁 『目黒のさんま』
仲入り
三流亭ハッサン(清水宏) 『子別れ』
春風亭昇太 『伊与吉幽霊』
パンタロン同盟 ボケボケ大喜利





お笑いモードで終わりそうだったが、昇太師が新作人情噺で流れを変えてキュッとしめ、最後はバカバカしい大喜利で明るくお開き。


ラサール石井さんの『ないもん買い』上方落語、仁鶴師匠のもちネタらしい。いろんな店に行って、あるはずがないものばかりを注文して店主を困らせる(…例えば、金物屋で“引き出しのついた金盥”を、古着屋で“裾模様のはいったパッチ”を見せてくれなんて言ったりする…)というイタズラを描いた噺。昨年、大阪・彦八まつりの「タイガー&ドラゴン落語会」(鶴瓶師と西田敏行の落語会)でお茶子をやったラサールさん、鶴瓶師にたきつけられ、前からやってみたかった落語に挑戦することになり、この噺を覚えたそう。お稽古をつけたのは昇太さんらしい。今日は、風邪をひいているとかで、声がこち亀両さんみたいだったが、ちゃんとした落語で面白かった。


明大在学中、落研にいた小宮さん、自分のドジエピソードをマクラにふって粗忽の釘へ。小宮さんというヒトは、地がそもそもとってもマイペースなヒトなのだろうか、噺のペースも、自分一人で呑みこんでわき目もふらずにどんどん進んでいくような感じがした。しかし、それがこの噺の主人公・粗忽者の大工に合っていて、独特の面白さがあった。


花緑『目黒のさんま』 一席目のラサール石井さんの前に、昇太さんとお芝居の出演者3名が登場し、寸劇仕立てでらさある亭と出演者を紹介したのだが、そこで花緑師は“人間国宝の孫”“昇太さんとは血筋が違う”と紹介された。花緑師、マクラで「血筋のいい花緑です」「祖父の小さんを彷彿とさせる『目黒のさんま』…はやりません!」。予め断った通り、師の『目黒のさんま』の殿様は、志村けんのバカ殿のようでした。私は、花緑師の高座をあんまり観てないので、普段からこういう感じなのかどうか分からないが、こういう会にはぴったりの、笑いの多い楽しい『目黒のさんま』だった。柳家的にはどうなのかわかりませんが(笑)。ま、小さん師匠の芸は市馬師が継いでくれるもんね。


三流亭ハッサン『子別れ』 落語界の約束事をまったく知らなかったハッサン、今まで、その場その場で勝手に亭号・屋号を変えて「三遊亭ハッサン」「林家ハッサン」などと名乗っていたが、このたび初めてそれがご法度と知って「三流亭」にしたそうです。ハッサンの『子別れ』は、イラン人のダメ亭主と母子の再会の物語。三人は、鰻屋ではなく、母親がパートで働いているデニーズで再会する。イラン人のダメ亭主の「やり直したい」という気持ちの表現は、「も一度、オマエをクダサイ」「“おかわり自由”がいいんだなー」というおかしな日本語で、それは頓珍漢ながらも不思議と心温まるものだった…はずなのに、そのシーンで、ハッサンのマジックテープで留めた帯がべりべりっと音をたててはがれてずり落ち、場内爆笑。笑ってて、どんなサゲだったのかよく覚えていない。


最後の昇太師、マクラで、俳優の落語と噺家の落語の違いについて話す。「俳優さんの落語は“お父さんの料理”、我々の落語は“お母さんの料理”なんです」。俳優は、きっちり練習した落語を高座にかける。それは、お父さんが「今日は○○を作るぞ!」と宣言して、いい材料を揃えて手間ヒマかけて料理を作るのに似ている。一方、寄席の噺家は予め今日はコレをやると決めて高座にあがることはない。楽屋に行ってネタ帳を見て、全体の流れを考え、更に高座にあがってお客さんを見て、そこで初めてネタを決める。それは、お母さんが、帰宅した夫や子供に今日の昼は何を食べたか?を尋ね、冷蔵庫には何が入っているか?を見てから夕飯を作り出すのに似ている…と。いい喩えですね。その後、ハッサン・清水宏のお母さん、静岡にお住まいのご自身の母上のエピソードから『伊与吉幽霊』に。笑いばかりのメニューが続き、直前のハッサンは、昇太師いわく「食べ物ですらない、ただの刺激物」だったので、ちょっと落ち着いたものを…とこの噺にしたみたいだ。私が昇太さんのこの噺を聞いたのは昨年末の「オレスタイル」以来。昇太さんはあまり人情噺っぽいものはやらないが、この噺のような母子とか、家族を描いて切なくほろっとさせる噺(新作「吉田さんのソファ」など)をごくたまにやる。そういう昇太落語も、自分は好きです。


ボケボケ大喜利は、浴衣姿のじいさんに扮したパンタロン同盟の四人(ラサール石井小宮孝泰春風亭昇太清水宏)が“いれば”“きって”であいうえお作文でした。