8/12 鈴本夏まつり さん喬・権太楼特選集

17:20〜21:18
柳家我太楼 「動物園」
太神楽曲芸 鏡味仙三郎社中
古今亭菊之丞 「転失気」
漫才 昭和のいる・こいる
柳亭左龍 「初天神
柳家喬太郎 「夜の慣用句」
曲独楽 三増紋之助
林家正蔵 「西行
仲入り
ものまね 江戸家小猫
柳家権太楼 「青菜」
寄席の踊り 権太楼・さん喬
紙切り 林家正楽
柳家さん喬 「死神」





お目当てのさん喬師「死神」。これは、自分が観た今年の「死神」の中で、印象に残るベストワンになるかもしれない。
大筋はいたってオーソドックスなのだけど、すごく新鮮な「死神」だった。小手先を変えたんじゃなく、考え抜かれた「死神」という感じ。どういう「死神」をやるか、さん喬師はかなり研究したのではないかなぁと感じた。


さん喬師の死神は、とにかく怖かった。あんなに怖い死神は初めて。貧相でヤな感じで「ヒーッヒーッヒーッ」と甲高くひきつり笑いをする、そして悪意に満ちている。
そして、さすがにさん喬師だけあって、随所にドラマチックな演出が光った。初めて死神と遭遇するところ、「どうやったら死ねるかな」と考える男の耳に「教えてやろうか」という小さな声が何度も聞こえる。気のせいかな?とあちこち見回す。…ふと恐る恐る視線を上げると、目の前の松の大木の枝に、貧相な死神が浮かんでいる。気味悪げにあたりを見回す男の目線の動き、ニヤニヤと笑う死神、両者が交互にクローズアップされる。そういう画が浮かんでくるようだった。


最後もドラマチック。
男は新しいろうそくに火をうつせなかった。「あ、消えた!」というセリフで舞台は暗転。真っ暗な中で死神(さん喬師)の「ヒーッヒーッヒーッ」という笑い声だけが響くの。そして幕。
会場が真っ暗になって幕が下り始めたので、客席から大きな拍手が起こった(私も拍手してしまった)が、あそこはもうちょっと拍手を我慢したほうがよかった、真っ暗な中で死神の甲高い笑いが大きく響いたら、もっと怖い印象的なラストになったろう、そのほうが良かった。
(…ということなので、もしさん喬師の「死神」を観る機会があったら、是非、最後はちょっと待ってから拍手してください。あ、でも、トリでないとこの演出は難しいから、見る機会は少ないかもしれないですね)。




さん喬師以外では、今日は左龍師「初天神」と権太楼師「青菜」が印象に残りました。
特に左龍師は、私はそんなにたくさん左龍師を聴いていないけど、今まで観た中では一番面白かった。金坊が飴と団子をねだりにねだって絶叫するところ(「あーめー!」「だーんごー!」)、あの絶叫前にちょっとタメますね、あそこの表情と間が凄く可笑しかった。あと、お団子のミツを執拗になめるところとか。今日は最前列のほぼ真ん中で観たのだけど、表情がよく見えたから、そのせいもあるかもしれない。でも、それを差し引いても、相当面白かったと思う。


権太楼師の「青菜」、植木屋とそのおかみさんのセリフの応酬、「〜じゃないかさっ!」って権太楼師独特の言葉尻のセリフがポンポン飛び出す。植木屋が旦那を真似て「よしつねにしとけ」って大仰にやるところ、「いーい形だねぇー」と感心するところの体の倒し方、おかみさんの「できるよッ」「知ってるよッ」っていう時のアゴのあげ方、権太楼師の落語の中で何べんも観てる仕草。そういうのを「あぁ、コレコレ」と思いながら聴くのが楽しい。権太楼師の楽しみ方はこういうものなのかなぁと思った。そだ、我太楼師を聴いてる時、ところどころ権太楼師にそっくりな言い方をして、あぁお弟子さんだなーと思いました。