朝日名人会第69回〜熱海五郎一座 狼少女伝説「TOH!!」

デパ地下でちょっと奮発した“なだ万”三段重幕の内弁当の後に、お好み焼きチェーン“千房”でモダン焼きを食べました…今日のハシゴってそういう感じでした(わからないか、ヒトは)。


まず三段重幕の内弁当、朝日名人会
14:00〜17:15@有楽町朝日ホール
前座さん 「子ほめ」 
古今亭志ん太 「孝行糖」
立川談春 「お花半七」
柳亭市馬 「猫忠」
仲入り
林家彦いち 「天狗裁き
立川志の輔 「新・八五郎出世」

談春、市馬、志の輔って、間違いなくおいしいとこが詰まってて豪華、何が出るかな?というワクワク感はないけれど安心して見れるしお得感があるよな、こういう会は…と思って行ったのですが、今日は豪華幕の内弁当としてまったく文句のない素晴らしい会でした。それに今日は最前列だったので、師匠方の表情がよーく見えて大満足であります。
特に良かったなぁと思ったのは市馬師の「猫忠」と志の輔師の「新・八五郎出世」。

市馬師の「猫忠」。子猫が三味線になった親を慕って化けて出るという噺で、歌舞伎の狐忠信のパロディだそう。ハメモノが入って、歌舞伎のまねごとなんかもあって、滑稽で、落語らしい楽しい噺と思いました。ああいう類の噺を市馬師で聞くのが好きです、春風駘蕩の落語ワールドという感じです。手ぬぐいを使っておかみさんがちまちまと浴衣を縫う仕草なんかも、大柄な市馬師匠がやると、それだけでなんともいえず可笑しい。同様に、化け猫の仕草も(失礼な言い方だけど)かわゆかった。歌舞伎だと、本性を現した狐のセリフは“狐言葉”という独特の言い回しで語られる一つの見せ場だから、落語もあそこのところは見せ場だったのかな?あの言い方は“猫言葉”とでもいうのかしら。

志の輔版「八五郎出世(八五郎出世せず)」は初めて聞いたのですが、いろんな方から「いいよ」と伺っていて、下げも知っていた。でも、知っていて聴いても、いい噺だなーと思いました。志の輔師の噺というのは、大人が照れを忘れて素直に爽やかな気持ちになれる、せめてお話の世界はそうあって欲しいよなっていう気持ちを裏切らない、そういう噺が多い気がする。そこがいいです。

それから談春師の「お花半七」。お花をおじさんちに連れて行けないことを、くそマジメに説明する半七、可愛いなぁとにまにまと観ていたら、談春さんがお花のセリフで「男の人ってそうやって論理的にお話しするのが可愛いわね」(…というセリフだったか?ちょと記憶が怪しいが…)と言うので、気持ちを見透かされたようでちょっとびっくりした。談春さんは思い付きで言ってみたらしく、照れたように半七のセリフで「思いつきでそーゆーことを言うのはよしてください」などと言っていたが。そんなことが印象的。下げの「川ァ渡れ!ババァ」は、何回聴いても可笑しい。談春師の婆さんというのは、この間観た家元の「よかちょろ」の婆さんと同じだなぁ、あの婆さんも立川流なのかな。

彦いちさんの「天狗裁き」も良かった。彦いちさんの落語は、時々、カオの表情と体の動きでムリヤリ押しまくるような感じがすることがあるのだけど、今日はあんまりムリな感じがしなかった。それに市馬師と志の輔師に挟まれても、ちゃんと彦いちさんらしい面白い高座でした。それから志ん太さんの「孝行糖」、上手だと思ったけど、今となっては前座さんと共にすっかり記憶から消えています、スイマセン。だって、この後すぐ談春師、市馬師とお楽しみが続いちゃったんだもの。

しかし、こういう会に「落語を一回見てみたい」という友だちや知り合いなんかを連れていけるといいのですけど、チケットがねー、とれないのだよねぇ。


そして千房のお好み焼きの熱海五郎一座
18:00〜20:30@天王洲銀河劇場

伊東四郎一座が熱海五郎一座となって2回目の公演。毎回観に行っているのは、ただただ“昇太さんが出ている”という、それだけの理由。自分のフィールドでない場所に居る昇太さんは、高座のカッコよさがウソのようにダメダメなのだ。三宅裕司ラサール石井にいじられっぱなしです。好きな人のダメっぷりを観るのは悲しい、しかしそれ以上に面白くてちょっと新鮮なのだった、昇太さんのいぢめられっぷりは。今回はカツゼツの悪さを散々いじられる“昇太、早口言葉に挑戦”の場面までもうけられています。昇太さんはよく自分はアドリブに弱いというようなことを言ってるが、それは本当らしく、三宅裕司がその場で思いついたことをポンと振ると、本当に目が泳ぐので可笑しい。今回、昇太さんは言語学者の役をやって、テレビ局のディレクター役の三宅裕司と二人で番組の進行役をする…という場面があるのだけど、「春風さん(昇太さんの役の名前)のお祖父様は落語家だったそうですね?なんて落語家さんですか?」とふられて、しばらく沈黙した後「…春風亭柳昇です」とほとんど素で答え、三宅裕司に「…落語のことを突然振ったらダメだとよくわかりました、もうやりません」と言われていた。わはは。
昇太さんは、常々お芝居に出るのは落語のためだとおっしゃっているが、このいじめられ体験は落語にどう生かされるのだ?


さて、明日は「白談春」。通家しか相手にしない気難しい寿司屋が突然ランチを始めたので、興味津々で行ってみる…という感じ?ちらし寿司のよーな噺が出されたりするのでしょうか?楽しみです。