特別興行 鈴本新緑寄席 夜の部 「がんばる団塊の世代 権太楼十夜

昨夜は団十郎のパリ公演を観ながら、去年の8月に八犬伝を観て以来、歌舞伎から遠ざかっていることを思い出した。今月、歌舞伎座の昼の部では菊之助海老蔵でお富・与三郎をやってるはずで、どんだけキレイだろう、ふと「明日は当日券に並んでみようかなぁ」と思ったりはしたのだ。が、朝、起きてみたら「今夜は鈴本と浅草のどっちにいこうか?」と考えていた。我ながら、よく飽きないと思うよ、本当に。


翁家和楽社中 太神楽曲芸 
柳家甚語楼 「無精床」
橘家圓蔵 「道具屋」のようなもの
柳家さん喬 「天狗裁き
昭和のいる・こいる 漫才
三遊亭歌之介 漫談
柳家小三治 「厩火事
仲入り
柳家紫文 三味線漫談
柳家三三 「巌柳島」
林家正楽 紙切り
柳家権太楼 「火焔太鼓」


並んだかいあって、真ん中のブロック2列目の席をゲットしました。寄席だし、特別興行だし…と思ってビールを呑みながら聴いた。さん喬師匠、小三治師匠、三三さん…こういうメンバーを、呑みながら弛緩状態で聴くって、ある意味すごい贅沢。でも、こういう寄席では、舞台の上の人も客席も、お互いゆるーい感じのほうがいいな。そんなにワクワクせず、爆笑するでなく、涙をだぁだぁ流すでなく、始終にまにま笑っている…そんなふうに居たい場所です。今日のラインナップは、そういう風に聴くのに相応しかったと思います。そういえば、以前、市馬師匠が「柳家は軽い滑稽噺が身上」というようなことをおっしゃっていたけど、今日のお三方の演目などは、まさにそういう類の噺と言ってよいのかな?

そして、柳家メンバーと共に、もう一つのお目当てだった権太楼師匠。権太楼師匠の「火焔太鼓」は初めて聴いたのだけど、テンションの高さに驚いた。結構スピードもあるのだけど、少しも上滑りな感じがなく、あのテンションとスピードにお客をあっという間に乗せてしまう。ただし、面白いか?と問われると、自分には、正直そんなに面白くはなかった。ほとんどのくすぐりは今まで他の噺家で聴いた「火焔太鼓」と同じ、サゲは“およしよ、おジャンになる”、よく知っている噺を知っている通りにやっているのに、なんでそんなに大笑いするの?と周りの人―『かわら版』持ってたから、落語好きな人々だ―に違和感を覚える。もっとも、つい先日聴いた志らくさんの「火焔太鼓」の影響があるのかもしれない。とはいえ、あのテンションが初めから終わりまでずーっと続くのは凄い。終わった時にはさすがに一瞬座布団の上でぐったりして、しかしにっこりと笑い、幕が下がるまでの間、最前列に座っていた子供に「面白かったかい?面白かったかい?」と尋ねていた。いろんな人が「権太楼師はお客を笑わせることに命をかけている」と言うのだけど、なるほど、あれは“気迫”と見える。このやり方で笑わせまっせ!わが道に迷いナシ!って感じ。演じているのかもしれないけど、あの姿は凄いよなぁと思いました。