4/28 ビクター落語会 第二回夜席

「つる」 柳家小ぞう
「百川」 柳家さん喬
厩火事」 橘屋圓太郎
仲入り
「お若伊之助」

今回の収穫は、もちろんさん喬師匠の「お若伊之助」です。
この噺は、ついこの間三三さんで初めて聞いたばかりです。圓朝作とかそうじゃないとか諸説あるようですが、エロあり(いわゆる獣姦?)サスペンスありのワクワク・ドキドキストーリーです。ストーリーの面白さに加えてさん喬師描く人物に深みがあって、2回目の今回はいっそう面白く感じました。

登場人物の一人一人により目が向いたというか、娘の、男の、年増の、それぞれの描き方が興味深かったです。
例えば自分が好きなシーンは、深夜、娘のお若が伊之助のいる部屋に忍んで行ったのに気づいたお内儀が、煙草の灰を落とすのに事寄せて、キセル煙草盆のふちに“トーン”と音高くたたきつけるところ。このお内儀は後家さん、母親として嫁入り前の娘に虫がつくのを阻止したい気持ちとか、女としての嫉妬とか、いろんな気持ちがない交ぜになった“トーン”なんだよなー。
それから伊之助。好きな娘がいて、娘も自分を憎からず想っていて、その娘―しかも絶世の美女だよ―と連日座敷で差し向かいでいて、ついに手を出さない。それって芸に専心する意志の強い男、義理堅い男とも読めるが、とても計算高い怜悧な男のようにも思える・・・などなどいろんなことを思いました。

この噺にはいろんな下げ方があるみたいで、お若が狸の子供を産んで…という続編もあるそうですが、それはあんまり好みじゃないなぁ。さん喬師は、狸の亡骸はねんごろに弔われ、お若は獣と通じた身を恥じて髪を落として仏門にはいった…というところで下げました。“げにあさましきはおんな”とゆーあたりに落ち着くのが穏当と思う、落語的には。



※その他もろもろ
●今回は自由席で整理券で入場でした。自分は仕事で開演に間に合わず、開口一番の途中に会場に着いたので、後ろの空いた席に座って聴いていました。が、途中で前から3列目に知り合いがいて隣が空いているのに気づき、仲入りのときに移動しました。ラッキー!しかし、この会、始まったばかりですが評判がいいみたいなので、じきにそんなゆるい状況ではなくなってしまうのではないかしら?
●伊之助に化けた狸を火縄で狙うスリリングな場面で、携帯をならしたヤツがいた。ばかもーん!当人も生きた心地がしなかったろうが、こっちだって相当がっかりだよ。
●あ、そうそう、行きにエレベーターの中でさん喬師匠と一緒になったんです。会場は8階で、7階でさん喬師匠と関係者2名が載ってきたのでした。さん喬師匠が「このエレベーターは狭いですな」って言って、だって師匠が大きいんですよぉと心の中で思った。降りる時、師匠に「どうぞ」と譲っていただいて、恐縮しながら降りました。