大銀座落語祭 立川談春と上方落語 その2



7/18(金)18:30〜20:55@博品館劇場
開口一番 立川こはる 『小町』
笑福亭三喬 『饅頭こわい』
立川談春 『三軒長屋(上)』
仲入り
笑福亭松喬 『首提灯(上燗屋)』
立川談春 『三軒長屋(下)』



三三さんの会に行ったから観られなかったけど、昨日は『慶安太平記』(善達の旅立ち〜吉田の焼き討ち)、今日は『三軒長屋』上・下。談春師、ここで歌舞伎座の溜飲を下げたというところか。


こはるちゃんを観るのは久しぶり。相変わらずきっちりきっちりした喋りで、聴いてるとちょっと肩が凝ってくるような感じではあるのだけど、前より上手くなったなぁと思った。「ヤな洒落だね」なんていうセリフの言い方が談春師に似ていた。


上方落語のこと。
上方落語は普段ほとんど聴かないので、新鮮だった。『饅頭こわい』も『首提灯』も、いつも聴いてる東京のとは違って、それが面白かった。それと、松喬・三喬師弟はクドすぎず・面白く、好みだなと思った。


三喬師『饅頭こわい』 しぶちんの光っつぁんは大嫌いな饅頭の話をしているうちに震えが来て、家に帰ってしまう。仲間たちは、アイツの家は裏長屋で裏口がないから逃げることができない、表から饅頭を投げ込んでやったら、さぞ面白かろうと、皆で饅頭を買って光っつぁんの家まで押しかけていく…といところが、東京の『饅頭こわい』と違ってた。東京では隣の部屋で布団をかぶって震えてるっていうのしか聴いたことがない。
皆が買ってくるお饅頭は、どれも大坂で有名なお店のものだったのかな、わたしが知ってるのは“551の豚まん”だけだった。“551の豚まん”はウケてて、三喬師「通じないと思ったが、通じるな」。


松喬師『首提灯』 最初は屋台で意地汚く飲み食いする酔っ払いの噺で、『上燗屋』という噺だと思っていた。呑み代25銭に酔っ払いは5円札を出すが、屋台のおやじはつり銭がないという。そこで酔っ払いは両替をしに近くの露店の道具屋へ。売り物の毛抜きで散々あごヒゲを抜いた挙句、毛抜きは買わずに(『道具屋』みたい)、仕込み杖を買う。家に戻った男は、買った仕込み杖で何かを斬りたくてたまらない。表の戸をわざと開けておき、泥棒をおびきよせると、襖の陰に潜んで、ひょいと出た泥棒の首にズバッ!と刀を振り下ろす。泥棒の首は皮一枚でつながるのみ。(このあたりで、え〜!ひょっとして『首提灯』になるわけー?!とびっくりした)泥棒は驚いて逃げ出すが、首がどんどんヨコにズレていく。そのうち、近所で火事が起こり、「火事や、火事や〜」と皆が提灯を前につきだして走ってきて、泥棒、首を溝に落としてしまった。その首を拾って前に突き出し、皆と一緒に「火事や、火事や〜」…というサゲ。東京の『首提灯』と全然違うなー。
松喬師の酔っ払いの意地汚なさ・セコさが見事で、いかにも大坂の酔っ払いって感じ。「んーーーこれ〜〜なんぼ?」ってセリフの繰り返しが可笑しかった。


談春師は、高座にあがると「“お前の天狗の鼻なんかへし折れてしまえ!その2”へようこそ」と挨拶。そういう企画だったのかもしれませんが、上方の人たちこそアウェイだったんじゃないだろうかね。
それはともかく、『三軒長屋』はとっても面白かった(特に上ね)。時間はかってなかったけど、上だけで40分くらいやったのかな?たっぷりだった。鳶の若い衆、姐御、妾、下女、やかん頭の伊勢屋の隠居・伊勢勘、剣術使い・楠運平と門弟衆…登場人物がみなイキイキしてワイワイ賑やかで、聴いててとっても楽しい。


談春師らしい表現だなぁと思ったところは、お燗番の若い衆が表を通り過ぎていった隣の妾に見とれるところ。姐御もいい女だけれど、いかんせん薹が立っている、若い衆いわく「輝いてねぇもんなぁー」。思わず心からこぼれでたホンネって感じのセリフで好い。一方、目の前を通り過ぎた妾は「ピカーッと光って」見えた。いい女は文字通り“輝いて見える”のだ…というわけですね。若い衆はなんとか妾と口をきくきっかけがないものかと考えるが、「あんまりないもんな、活発に近所づきあいする妾って」。“活発に近所づきあいする”って表現にも笑った。


見事だったのは、二階の若い衆のケンカ。「あと一杯だけ飲ませろ」としつこい酔っ払いにキレた男が、酔っ払いの過去の行状をわーーーっと言い立てるのだが、そのテンション、饒舌、スピード・・・“押しまくる”といった印象がないではないけれど、見事。客席から拍手が起こる。カッコよくて華麗。これを歌舞伎座でやったら、客席はさぞや沸いただろうなぁ。